第三十五章 必中のハンマー
「コレ、久しぶりだな」
アルバは、かつて叔父に譲った伝説破りの槍を手に、軽く振り回して感触を確かめていた。
「でもさ、コレ不完全なんだよね」
ラナ姫が首をかしげる。
「何が不完全なの?」
「これは鋳造なんだ。
これを鍛造で鍛え直すと、僕のエクスカリバーの鞘みたいな性質になるんだよ」
コインが呆れた声で笑う。
「はいはい、武器オタクの講義が始まりました」
ラナ姫はため息混じりに微笑む。
「ギルの性格を考えると、あなたとの対戦は避けられないでしょうね」
「今晩あたり来る気がするんですよね」
「今晩どころか、もうすぐ来るぞ」
コインの言葉とほぼ同時に、扉が開いた。
メイド
「邸内で不審者を確保しました!」
続いてソフィアが引きずるように現れたのは――
気絶したギルと、縄をかけられたアルカディア。
ソフィア
「敵将と思しき二名が邸内を徘徊していたので捕縛しました」
アルカディアはラナ姫を見て、目を丸くする。
「母さん、生きてたんだね」
ラナ姫は眉間を押さえた。
「命がけで逃がしたあなたが、
なぜ警護も付けずに捕まっているの!!」
声が大きすぎて、アルバは思わず耳を塞いだ。
ギルの身柄と引き換えに、
帝国から譲渡された土地が正式に王国の領有であるという確約を取り付けた。
アルバはソフィアを見る。
「よくギルを捕まえられたね」
ソフィアは淡々と答える。
「死角から、**必中のハンマー(トールハンマー)**を投擲しました」
(ラナ姫の件といい……)
(この子、敵に回さなくて本当に良かった)
アルバは心の底からそう思った。
「……君が味方でよかったよ」
アルバが伝説殺しの槍を鍛え直していると、
魔法店の店長がふらりと現れた。
店長
「面白い所に来たわね」
アルバ
「この槍は、ヒヒイロカネ、ミスリル、オリハルコン――
伝説級金属の合金です。
同じ合金の塊で鍛造し直しています」
店長は目を細めて笑う。
「ほんと、面白いことになってるわね。
これに――プタハの祝福、かけてみなさい」
「プタハは地中金属のプロだもの」
「プタハの祝福」
アルバが呟くと、槍の輝きが一段と深みを増した。
「……自分だけで合金できそうですね」
店長
「さっきより良くなったわね。
それに、これも」
スクロールを取り出し、付与を施す。
アルバ
「何を?」
「自動追尾と雷属性。
ここまで教えたんだから――」
すっと手を差し出す。
「神聖なるヘルメス教への寄付をお願い」
「最近は“人の時代”とか言って弾圧されるのよ。
ピラミッドの造り方を教えたトート神――
別名ヘルメスに倣って、石工職人の秘密結社にしたの」
コインの入った袋が、ぽとり、ぽとりと二つ落ちる。
店長
「毎度あり」
そう言い残し、何事もなかったかのように帰っていった。




