第二十六章 凱旋パレード
カルディは肘掛けに頬杖をつき、にやりと笑った。
「――伝説殺しの槍を献上しろと言ったら、どうする?」
やはり早い。
コイン絡みの情報網は伊達ではない。
アルバは一拍も置かず、即座に差し出した。
「どうぞ。僕は、また新しく作り直しますから」
即答に、カルディは目を細める。
「ほう……なら、盾は出来ないのか?」
アルバは無言で鉱物を取り出した。
「コイン、お願い」
(宝箱ママも、よろしく)
頭の奥に、呆れ混じりの声が響く。
『仕方ないね』
次の瞬間――
「……できたよ」
カルディの前に、ふわりと空飛ぶ盾が浮かび上がった。
盾の中心には、はっきりと“コイン”が埋め込まれている。
カルディは興味深そうに手を伸ばし、低く唱えた。
「――シールドバッシュ」
盾が唸りを上げて飛翔し、壁を粉砕。
そして何事もなかったかのように、元の位置へ戻ってくる。
ラナ王女が、即座に眉をひそめた。
「……武器を振るうのは、外でお願いします」
「すまん」
カルディは頭をかき、素直に外へ出た。
自分の手に持つ盾。
そして、空中に浮かぶもう一枚の盾。
手に持つ槍。
空中に静止する、もう一本の槍。
「これなら、アリ兵ごときに手数で負ける気はしないが――」
カルディは振り返り、アルバを見る。
「君はどう思う?」
「……最強だと思います」
即答だった。
カルディは満足そうに笑う。
「ますます、君を手放すのが惜しくなったよ」
―――
その夜。
父が、珍しく改まった顔で告げた。
「帝国で、アリ兵討伐の凱旋パレードがある。東帝国主催だ」
「兄弟たちが“末席を用意したから来い”と連絡をよこしてきた」
その瞬間、アルバの頭の中だけにコインの声が響く。
『戦線に配給してたアルバが末席?
あいつら、何もしてないだろ』
父は続ける。
「婚約者を連れて行くといい」
「……わかりました」
―――
アルバ邸。
「帝国には王国の屋敷がございます。滞在には問題ありません」
シグレットの言葉に、
「それでは荷造りを」
「私もお手伝いします」
システィナ、ジェシカ、ナーサが一斉に動き出す。
アルバは帝国の地図を広げた。
「転移できそうですか?」
「コイン、どうだ?」
『問題ない。中庭に直接いける』
「よし。――みんな、行くよ」
―――
帝国・王国の屋敷。
「……初めてですが、これは凄いですね」
シグレットが息を呑む。
「一瞬ですよ、一瞬。しかも乗り物酔いもしません」
ナーサは平然としていた。
システィナとジェシカは、当然のようにアルバの両脇を陣取る。
「私の部屋行こーよ」
「いえ、私の部屋です」
早速、火花が散った。
そこへ、柔らかな声。
「うまくいっているようね」
ユリアナだった。
システィナははっとして赤面する。
「……お母様の言う通りでした。ごめんなさい」
「わかればよろしいわ」
ユリアナは微笑み、さらりと付け加える。
「第一王妃も、お越しになりますよ」
その言葉を聞いた瞬間、
ジェシカは何事もなかったかのように、そそくさと立ち去った。
――凱旋パレードを前に、
屋敷には、静かで騒がしい予感が満ちていた。
ユリアナが朝お越しにきた
「お嬢様には手出しはしていませんという割には三人一緒に寝てるのね」
システィナ
「お母様独り言うるさい」
アルバ
「ユリアナ様おはようございます」
ユリアナ
「貴方は絶対にエマ姉の近くには行かないで」




