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第二十四章 頭首の死

帝国クラウディア家頭首は、戦場の最前線に立っていた。

「皆さん。本日で、この戦場を終結させましょう」

軍曹が頷く。

「それでは、開始してください」

クラウディア頭首は短く命じた。

「――注入」

黒水――石油が、蟻塚の穴へと流し込まれていく。

軍曹

「注入開始時刻、正午」

穴の奥から、低く重い地鳴りが響いた。

将軍

「……効いてきたようだな」

その瞬間だった。

地表が弾け、数百の蟻が一気に噴き出した。

ある蟻は石油を掻き出し、ある蟻は卵を抱え、ある蟻は牙を剥いて戦闘に躍り出る。

人間側が引いていた戦線は、瞬く間に一キロ後退した。

穴の至近にいた――

将軍、軍曹、そしてクラウディア家頭首。

三名は、巨大な蟻の群れに踏み潰され、非業の戦死を遂げた。

父は、淡々と語った。

「帝国クラウディア家の“運び手”が、この騒動で全員、非業の死を遂げるとはな」

少し間を置き、続ける。

「あれほど危険な任務を嫌い、前線に出たがらなかった兄が……なぜ、今回は出たのか。

 それは、我々にも分からん」

「帝国には、お前の兄弟を出す」

「お前は王国から婚約者をもらった。……そういう役割分担だ」

父の声は平静だったが、どこか寂しさを孕んでいた。

叔父の葬儀は、将軍・軍曹と合同の国葬として盛大に執り行われた。

――もちろん、遺体は無かった。

墓地を歩いていると、コインが足を止めた。

「……エクスカリバーだ」

剣が、地面に横たわっていた。

本来、遺体が納められているはずの場所から、棺は掘り起こされている。

アルバは、剣が自分に握らせたがっているような、不思議な感覚を覚えた。

コイン

「ミナトという勇者が使っていた剣だ」

剣は泥にまみれ、まるで捨てられたようだった。

アルバが近づくと――

ふわり、と剣が浮き上がり、そのまま手元へ収まった。

コイン

「……不思議なこともあるもんだな」

夜。

窓を叩く音がした。

「その剣は、僕のだ」

立っていたのは、グールだった。

アルバは、昼に泥を落し、綺麗になったエクスカリバーを、静かに差し出した。

グールは剣を握りしめ、叫ぶ。

「僕のエクスカリバーだ!

 ――決闘だ!」

切っ先が、こちらを向く。

アルバもまた、剣を構え、切っ先を向けた。

「――推して参る」

次の瞬間、エクスカリバーから眩い光が溢れた。

グールは一時的に、生前の姿を取り戻し――

やがて、光の粒となって消えていった。

カラン、カラン。

そこに残っていたのは、剣だけだった。


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