第二十三章 プタハの祝福最大MAX
アルバ邸に戻ると、すでに避難指示が出されていた。
ジェシカ
「せっかく手に入れた愛の巣が……」
システィナ
「三人で育んだ愛の巣が……」
アルバ
「……君たち、まだ僕に手を出されてもいないよね?」
ナーサ
「“愛の巣”って言い方が面白いだけじゃない?」
くすくす笑っている。
システィナ
「この家に合うように、愛を込めて揃えた調度品って意味よ」
「それが“愛の巣”なの」
アルバ
「なるほど……」
「じゃあ、その愛の巣――守らないとな」
そう言って、システィナの頭を軽く撫でる。
シグレット
「名案がおありなのですか?」
アルバ
「うまくいけば、ね」
アルバは屋敷から約4km離れた、問題の蟻塚前に立っていた。
コイン
「で、どうすんだよ」
アルバ
「――始めるよ」
一呼吸。
「プタハの祝福最大MAX」
ズズンズズズズン、ズズンズズズズン。
振動7。
地震と同時に、アルバの立つ地点の地面が10メートル沈下した。
鉄のインゴットが、ガラガラと音を立てて積み上がっていく。
前方には、縦横およそ30メートルの巨大な縦穴。
深さ500メートルの底で、アリたちがワシャワシャと蠢き始めた。
コイン
「おい、このままじゃ登ってくるぞ!」
アルバ
「注入」
黒水――石油が、どろどろと穴へ流し込まれていく。
底では、アリたちが必死にもがき、次々と溺れていった。
コイン
「さっき取りに行ってたの、それかよ……」
その時。
羽付きアリが十匹、空へ舞い上がる。
アルバはコインに耳打ちした。
コイン
「……了解。オレのターンだな」
次の瞬間。
コインの体から、数億枚のコインが溢れ出す。
回転。
加速。
渦。
金属のトルネードが発生した。
コイン
「――イケーッ!!」
羽アリたちは羽を引きちぎられ、粉々になり、
キラキラと墜落していく。
コイン
「……カイカン」
アルバ
「帰るか」
コイン
「だな」
屋敷に戻ると、家の外に人影が集まっていた。
アルバ
「……みんな、待っててくれたのか」
システィナ
「愛の巣が……壊れちゃった……」
泣いている。
アルバ
「家が、少し傾いただけか」
ジェシカ
「調度品が……全部壊れたの……」
コイン
「愛の巣を守るために、愛の巣を壊したか」
「やっちまったな」
アルバ
「……」
コイン
「ま、新しいの買ってやらないとな」
翌朝。
コイン
「プタハの祝福って便利だな」
「寝て起きたら、傾いた家が元通りだ」
アルバ
「……調度品まで直ると思ったんだけどな」
肩を落とす。
カルディ皇帝
「昨日まで、あれほど苦労していた蟻塚が……消えただと?」
兵
「巨大な穴が開いておりまして」
「底ではアリが黒水で溺死しておりました」
「掘りすぎて地下の支柱が耐えられなかったのでしょう」
カルディ
「帝国は今後も苦労するだろうが……」
「運のいい我らは、いち早く苦境を脱したというわけか」




