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第二章 消失マジック

アルバは得意げに、大道芸のオヤジの前に立った。

両手を大きく広げる。

「ねえ見て! 僕も出来るようになったんだ!」

アルバはコインをひょいっと手のひらから消し、

何もないことを誇らしげに見せつける。

そして――

「はいっ」

再び、手の上にコインが出現した。

オヤジは一瞬固まり、次の瞬間、顔をしかめた。

「……子供に真似されたんじゃ商売あがったりだ」 「今日中に隣街へ移動だな」

荷車を引きずりながら去っていくオヤジの背中は、

どこか人生の哀愁を背負っていた。

その夜。

父モートンは腕を組み、妙に改まった顔でアルバに言った。

「アルバ。明日、お前の兄ちゃんはな」 「おじちゃんの所へ旅立つ」

アルバは首をかしげる。

「なにしに?」

モートンは声を落とし、重々しく告げた。

「家門の秘密だ」 「“収納入墨”を入れにな」

アルバの目が一瞬輝いた。

「え、僕もう持ってるよ?」

「……は?」

モートンは鼻で笑った。

「そんなわけあるか」 「お前みたいなガキが――」

そう言って、アルバの背中の服をまくり上げる。

「ほら、何も無い」

沈黙。

「……お前も一緒に行け」

「いきません」

即答。

「大丈夫だ」 「腫れは一ヶ月で引く」 「ちょっと熱が出るくらいだ」

アルバはゾッとした。

「僕は断固行きません!」 「痛そうだし!」

モートンは腕を組み、低く言う。

「それでいいのか」 「国家戦略級の“運び人”にはなれんぞ」

アルバは地面の石にしがみつく勢いで叫んだ。

「絶対断固として行かない!」 「石になってでも行かない!」

モートンは深いため息をついた。

「……仕方ない」 「じゃあ、お前の弟に行かせるか」

アルバはビクッとした。

「お前だけだ」 「運び人になれないのは」

「冒険者になるなり」 「兵士になるなり」 「自分の道を探すといい」

アルバはうつむき――心の中で叫んだ。

(だってさ……)

(入墨入れたら……)

(お母さんと共同浴場、行けなくなるじゃん……!)

アルバの決意は、

国家の事情よりも、

家族風呂の方が重かった。


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