第十二章 お爺さま
アルバは帝国にあるクラウディア家本邸へ呼び出されていた。
相手はもちろん――
**クラウディア家頭首(=お爺さま)**である。
しかも。
お爺さまの左右には、なぜか
アリサとリサがメイド服姿で直立不動。
アルバ
(……あれ? この二人、さっきまで村にいなかった?)
お爺さまは咳払い一つして、話を切り出した。
「お前が救った村があっただろう」
アルバ
「はい」
お爺さま
「あそこは帝国と東帝国の国境付近でな」
コイン(小声)
「いや、どっちでもないだろ」
アルバ
(黙れ、今は黙れコイン)
お爺さま
「――帝国側じゃ」
アルバ
(強引だな!?)
お爺さまは満足げに頷く。
「そこでだ。あの村、ワシにくれんか?」
アルバ
「え?」
間。
「そうかそうか、くれるか。いい孫を持った」
アルバ
(僕、何も言ってない)
話は既に成立していた。
お爺さま
「彼女たちも、うちのメイドになることで村長とは話がついておる」
アルバ
「……あの村長、お爺さまを利用して復権しましたね」
お爺さま
「世の常じゃ」
冷たく言い放ち、
「要件は以上だ。分かれば帰ってよい」
温度、氷点下。
その後、父モートンに報告すると、即答が返ってきた。
モートン
「お前、入墨を断っただろ?」
アルバ
「はい?」
モートン
「孫の中で一番“かわいくない”そうだ」
アルバ
「理由それ!?」
アルバは必死に抗議した。
「入墨入れたら公共浴場いけないじゃん!」
「僕は公共浴場でお姉さんと牛乳を飲みたい人生なんだ!」
モートン
「……分かった。行ってこい」
こうして、
アルバのモテ期(予定)は一日で潰えた。
次に呼び出されたのは、唯一の理解者――
東帝国のカルディだった。
カルディ
「アルバ君に、折り入って話がある」
嫌な予感。
「バーミヤンでラピスラズリ鉱山を開発してほしい」
アルバ
「……父に頼まなかったんですか?」
カルディ
「頼んだ。全く進まなかった」
即答。
「危険はないように象兵を一人つける」
アルバ
「象兵?」
「象の後ろに乗っていれば、誰も襲えないだろ?」
アルバ
(それ安全なの象だけじゃない?)
カルディ
「鉱山開発は言語が違う場所で大量の鉱夫を使う必要がある」
「だが君は、その必要がない」
アルバ
(あ、収納と転移か)
「ラピスラズリが手に入ったら、
インドの絹織物、香辛料、ミンクの皮も頼む」
そして満面の笑みで、
「先日は大量のコインありがとう。
私財国庫がパンパンだよ」
アルバ
(国家元首が言う台詞じゃない)
執務室を出ると、廊下に立っていた人物が声をかけてきた。
「また会ったわね」
魔法店長だった。
アルバ
「それだけのスクロール作れるなら、自分に使おうと思いません?」
店長
「私が強くなったら魔女裁判一直線でしょ」
「犯罪ギリギリの道具は、他人に使ってもらわないと」
コイン
「犯罪ギリギリって自覚はあるんだな」
完全無視。
店長
「運動神経ないし、痛いの嫌いだし、魔力も少ない」
「でも生きなきゃいけないのよ」
アルバ
「……じゃあ、また」
店長
「待ちなさい。君を待ってたの」
スクロールを差し出す。
「ラナ姫様の依頼よ。
――インドラの呪い」
アルバ
「嫌な名前だなぁ」
「魔力量が少なくても使える設計だけど、
使った後、その日24時まで女好きになる魔法」
アルバ
「神様の性癖まで組み込まなくても!」
店長
「大事よ。神様が味方したくなるじゃない」
そこへラナ姫登場。
「この前はごめんね。ギルとアルカディアが素材独占して」
「謝罪のつもりよ」
「君、雷が弱点なの。早めに特性つけないと」
アルバ
「いや、女好きは納得してないんですが……」
ラナ姫
「かけちゃって」
店長が背後に回る。
「はい、かけた」
アルバ
「……」
翌日。
コイン
「お前の魔力不足を補う案がある」
「契約だ」
スクロールを出す。
アルバ
「うーん……」
次の瞬間、
豪邸サイズの宝箱が出現。
アルバ
「腰抜けるわ!!」
コイン
「紹介しよう。俺のママだ」
「全てのコインはこのママと繋がってる」
宝箱のママ
「今、私に食われるか」
「契約するか。どっち?」
アルバは即座にサインした。
宝箱は満足げに消える。
アルバ
「……これ、間違ってないよね?」
コイン
「多分な」
アルバ
(多分!?)




