第十一章 プタハの祝福
アルバは鉱山に来ていた。
鉱山周辺の地質を眺めながら、なぜか胸がざわつく。
「……ガンペイロの血が騒ぐ」
意味の分からない単語が、勝手に口からこぼれた。
「……ココだな。プタハの祝福」
次の瞬間――
ズンッ!!
山が数メートル陥没した。
「うわうわっ!?」
アルバは振動7クラスの地揺れに、その場にへたり込む。
「地震!? 地震だよな!?」
コインが呆れた声で言う。
「お前がやったんだろうが」
目の前には、金・銀・銅・鉄のインゴットが山積みになっていた。
アルバ
「……コインサイズに分解」
インゴットは一斉に砕け、コイン大の塊となって山になる。
「ありがとよ」
コインは金の塊を一つ、
パクリ。
ぷるぷると震えたかと思うと、
ポンッと二枚に増えた。
コイン
「俺だけじゃはかどらねぇな。仲間を呼ぼう」
ジャラジャラと音を立て、数千枚のコインが出現する。
まるで砂糖の山に群がるアリのように、
コインたちはインゴットの山へ殺到した。
アルバは日当たりの良さに負け、
その場で眠りこけてしまった。
――――
「アルバ、起きろ。終わったぞ」
目を覚ますと、
空一面を覆うほどのコインが、蜂の巣を突いた後のように飛び回っていた。
コイン
「はいはい、みんなママのとこ帰っていいぞ」
コインたちは次々と消え、
空は元に戻った。
残った鉄のインゴットを収納に収め、
アルバは山を下る。
鉱山の街に着いた。
「ここで宿を――」
コイン
「それどころじゃねぇみたいだぜ」
振動7の大地震で、集落はほぼ全壊していた。
宿屋の前で立ち尽くす女がいる。
アルバ
「この辺に宿は――」
女
「見りゃ分かんだろ!!」
怒鳴り声と同時に、悲鳴が響いた。
「アリサ! 誰か、アリサを助けて!」
アルバは崩れた建物に手をかざす。
「収納」
瓦礫が消え、
中から少女が立ち上がった。
母親
「アリサ! 大丈夫!?」
アリサ
「うん……棚の隙間に入ってて、潰されなかった」
その後も救助は続き、
夜目の利くアルバの人命救助は夜半まで続いた。
――――
コイン
「なぁ。全部お前のせいだぞ。反省しろよ」
アルバはトボトボと山に戻り、
高枝にハンモックをかけて横になる。
「……村人の住処だけでも、復興できますように」
神に手を合わせる。
「お前が出来るじゃないか」
どこからか声が響いた。
「プタハの祝福」
勝手に口が動いた。
何も起きないまま、
アルバは眠りについた。
――――
「アルバ、起きろ」
目を開けると、
石造りの巨大な建物の床に寝ていた。
コイン
「数えてきたけどよ……全部屋二千だぞ」
そこには、
超巨大ホテルが建っていた。
――――
門前には人だかり。
村長
「勝手に村の土地にこんなものを建てられては困りますな」
アルバ
「すぐ壊しますんで」
村長
「……急ぐ必要はありませんな」
「あなたは昨日、救助してくださった方ですな」
「村民を代表して、感謝を」
「ついでにですが、ここを避難所としてお貸しいただけませんかな」
コイン(小声)
「無償譲渡しろって言ってるようなもんだな」
アルバ
「そのために出来たようなものですし、いいですよ」
村民
「よっ、村長ネゴシエイター!」
村長
「あんな若造、口説き落とすのは簡単じゃ」
コイン
「……ムカつくな」
――――
中庭の噴水で体を洗おうとする住民たち。
コイン
「水風呂なら中にあったぜ」
アルバ
「水風呂なら建物の中にあります」
若い娘たちが一斉に中へ。
男たちは舌打ちし、奥さんに睨まれた。
――――
問題は食料だった。
村民
「腹減ったなぁ」
「こんな時のための備蓄は?」
村長
「……売った」
「孫の新築祝いに使った」
一同
「は?」
女
「呆れた……」
アルバ
「僕少しはあります」
父が用意してくれた食料が、次々と収納から出てくる。
大広間が埋まった。
「……父さん、こんなに」
空気が張りつめる。
村長
「で、君に何を返せばいいんだ?」
村人は顔を見合わせる
アリサ
「私がこの人のメイドになります!」
リサ
「私も助けられたし権利あるわよね?」
コイン
「モテ期だな。どっち行く?」
――――
結果。
村長は袋叩きにされ、追放決定。
アルバ
「それじゃ、僕は帰ります」
村民
「待ってくれ! 村長やってくれ!」
アルバ
「……まあ、出来なくはないです」
満場一致。
アリサが頬にキスをする。
リサは口を狙う。
アルバは、
しまりのない顔でホテルを後にした。
コイン
「自分で破壊して、救って、村長にまでなりやがったな」




