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第一章 クラウディア・アルバ

クラウディア・モートン家三男坊アルバ

クラウディア・モートン。

東帝国皇帝の“ひとつ上の兄弟”にあたる男であり、国家戦略級の《運び手》でもあった。

――これは、その三男坊アルバの話である。

「おじちゃん、それどうやって消えるの?」

アルバは目を輝かせて大道芸師に食いついた。

彼の最大の楽しみは、道端の大道芸を見ること。特に“消失マジック”が大好物だ。

「それを教えちまったら、おまんまが食えなくなるよ」

「そこをなんとか! 僕にだけ!」

そんなやり取りをしながら、アルバは公邸へ向かう道すがら、今日も大道芸を満喫していた。

「ギル兄ちゃん、アルカディア。おはよう!」

公邸に着くと、そこにはいとこのアルカディアと、親戚筋にあたるギルがいた。

アルバにとっては、いつもの遊び相手だ。

「お前ら、今日も俺についてこい」

「今日は何して遊ぶの?」

「闘技場でチャンバラだ。者共、ついてまいれ」

完全に殿様ノリである。

闘技場に着くなり、ギルは真面目な顔で言った。

「剣を振り下ろすときは、左足を引け。

 引いてないと、自分の足を切っちまう」

「今日は切らないように素振りだ」

「はい!」

そこへ兵士たちが笑いながら声をかけてきた。

「来たな、チャンバラトリオ! 今日ももんでやるぜ」

「返り討ちにしてやるぜ」

妙にノリがいい。

「……トイレ行ってくる」



アルバはそう言って、その場を離れた。

その途中――

いかにも“魔法使い”としか言いようのない女性が、早口で話しかけてくる。

「そこのおぼっちゃん!」

「え?」

「顔がそっくりでピンときちゃったのよ!」

「ぼ、僕は――」

「魔法、付与しちゃおうね!」

圧が強い。

「そうそう、あなたのお父さんも私が付与して、皇帝になれたのよ」

アルバは思考停止した。

(僕とアルカディアを間違えている)

「収納魔法のために、でっかい入墨したでしょ?

 あれ、痛いし見た目もアレよね」

女性は一枚のシートを取り出した。

「そこで私、考えたの」

「人工皮膚に入墨して、貼っちゃえばいいじゃないって」

「名付けて――シール入墨!」

「しかも上から皮膚を重ねるから、入墨が入ってることすら分からない優れものよ!」

アルバは完全に固まっていた。

「はい、貼れた」

早い。

「じゃ、クリティカル確率、クリティカルダメージ、剣速補強、瞬歩――」

「お父さんと同じ構成にしとくわね」

(え、フルコース……?)

「収納だけはちょっと違うの。

 空間の圧縮率を変えられるし、同時に複数出し入れできる高機能版よ」

「じゃーね! 女王さまに請求行ってくるから!」


気がつくと、いつの間にかギルが立っていた。

「こいつ、この家の子じゃないぞ」

店長(?)の顔が、一瞬で青くなる。

ギルは小さくつぶやいた。

「……コイン、払ってやれ」

「わかったよ」

チャリン、と音を立てて革袋が二つ、ギルの手に落ちた。

女性はそれを奪い取るように掴み、

一陣の風のように去っていった。

「毎度あり!」

そう言い残して、今度こそ完全に消えた。

「……ありがとう」

アルバが小さく礼を言うと、ギルは鼻で笑った。

「親分が子分のために、このくらいするのは当たり前だ」

アルバは、その背中を見ながら思った。

(やっぱりギル兄ちゃん、すごい……いろんな意味で)

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