八月の死骸
皆、八月のべたべたと汗がシャツに貼りつきながら、ニュースで永遠と繰り返される「異常気象」を忘れて、夏は綺麗だったとかほざいている気がする。
十月の始め、ソフトクリームを道にぶちまけた時に、ふと湧き出た感情である。だが、突発的に思っていたことではない。常日頃から思っていたことだった。
「派手にやっちゃったね~君はどうしてそんなにドジなのよ」
「私が悪いんじゃないの。物理法則とかよく知らないけど、運命ってやつが私のソフトクリームをぶちまけないと気が済まなかっただけ。」
「一体何言ってるの君は、、、大体よく寒くなり始めているのにソフトクリームなんて食べる気になれるよね。」
彼女は私が道にぶちまけたソフトクリームを持っていたティッシュとビニール袋で片付けながらそんなことを言う。彼女は几帳面というかなんというか、変にまじめすぎるのでこういうことを平気でやってのける。道端に落ちてしまったソフトクリームの片づけなんてしなくていいのにと思う私とは正反対である。
「私を八月にソフトクリームを置いていくような薄情者たちと一緒にしないでほしいな。」
「でもさ、薄情者たちよりももっとひどいことしてるよ?もうぶちまけたというか殺しちゃったよ、ほら」
彼女はコンクリートの破片とソフトクリームの液体が混じって、灰色になったティッシュを見せながら私に言う。その顔はちょっと自慢気で少しむかついた。
「悲しい、、、事故だった.、、、。遺族にはお悔やみを申し上げないといけない。」私は十字架を切りながら南無阿弥陀仏と唱える。そんな私に冷ややかな目線を彼女は向けてくる。
「遺族って、その遺族も乳牛だから今はお肉になってるかも。」
「あり得るね。乳牛って最後はやっぱりお肉になってしまうのか?何と悲しき存在よ、、、じゃあさ、季節が死んだら私たちは誰に祈りを捧げたらいいのかな。」
ふとした疑問だった。特に病んでいるとか、ナイーブな感情に任せて口から出たのではない。ただ純粋な疑問だった。彼女は少し困った顔で、十数秒考えたのちこういった。
「今、八月の死骸がここにあるから、これにお祈りしよう。」
私たちは祈りを捧げた。終わってしまった夏に。夏の死骸に。




