第1章1-5 力の限界
聞かなきゃいけないことが山ほどありそうだ。
それに、さっきから気になっていることがあるんだ。
何故か、白い獣が先程から傍にいてこっちをじっと見てくるんだよね。
やっぱりさっき見たのは見間違いではなかった!!
けど、リリアーナは全く触れてないとこみるとは関係者なのか……。
リリアーナは魔法の力で人々を宙に浮かせて、白い獣の上に何人か積んで、他は魔法をかけたまま移動をした。
まず白い獣はリリアーナは知っていて、そして魔法をいくつも使いこなせると。
というのも、魔法はどの人も1種類しか使えない。
俺の場合は、氷で、攻撃しかできない。
リリアーナは、見ていると色んなことが出来そうだ。
癒しの力を持っていた、ということはそれ以外が王の鍵の力なのだろうか。
「あの……リリアーナ。」
「はい?」
「その……あの方は?」
「あの方??」
「ほらその。」
リリアーナはぽかんとした表情をしている。
全く気にされてないようなので、指で白い獣を指さした。
指した先にいる獣は、少しムッとした表情になったように思う。
「あ、そうですよね。紹介が遅れてましたわ。彼は、クローネ。代々王の鍵を見守ってきた聖獣です。」
「王の鍵の聖獣…。」
王の鍵っていう存在が独り歩きしていたせいか、正直初めて知った。聖獣がいたということに。
『先程私が助けてあげたというのに、指を指すなど、無礼にも程があるぞ!』
「!!この声はさっき戦いで!」
頭に直接響いてくるこの声は、聖獣クローネの声だったということ。
でもそれで納得がいった。
黒い魔物の弱点も熟知しているということだろう。
そもそも、歴代の王の鍵を持ったもの達は黒い魔物と戦ってきてた。そして今と同じように、この黒いもやを封印してきたのだろう。
そのために、ある鍵ということだろうか。
疑問点はいくつもあるが、今は人々を村に送り届けること、それに報告もしなくちゃいけないからな。
全員は救えなかった。
ただ、リリアーナの癒しの力で、多く救えたのもまた事実だろう。
――
「ありがとうございます!!」
村の村長がガバッと頭を下げた。
リリアーナとスノウは村に戻り、村長の家に報告にあがった。
亡くなった者もいたものの、とても感謝をされて少々複雑な気持ちにはなった。
『全員を救うことは出来ない』
これは痛いほど、分かっている。この力で人々を癒したいと、両親に申告して言われた言葉。
リリアーナはきゅっと手を握った。
「あの鉱山の魔物は殲滅しましたが、宝石に含む魔力にまた魔物が寄ってくる可能性は高いです。昨今、魔物が増えていますから、鉱夫の方だけで行うのは、同じことが起きるかとは思います。ただ、村の資源にもなっていると思うので…一部を割いてでも、傭兵の方等を雇う方がいいかと思いますわ。」
「そうですな…。そこは村で話し合うようにしよう。」
村長は渋い顔をして、俯いた。
ここは小さい村。傭兵不足の今、この村に傭兵を何度もとなると、それだけで資金が無くなる可能性もある。
1番は宝石は今諦めること。
ただここも、領主への税金もあるだろうし、止めて、ということも出来ない。
これが世界の現状だ。
「リリアーナ。今日はもう休もう。流石の俺も疲れた…。」
「そうですわね。」
2人は宿へと帰路に着いたものの、そういえばとリリアーナは思った。
宿の部屋は1つで、2人で使おうとしてたことに。
宿に着いてすぐにスノウは疲れた〜とぼやいては、シャワーへと入っていった。
シャワーは部屋の中に設置されていて、水音が部屋の中に響き渡る。
正直なところ、そこまで緊張はしてはいない。
リリアーナは羽織っていたローブを脱ぎ、空いているソファの方に腰掛けて、ローブを身体に掛けた。
スノウが疲れたというように、リリアーナも疲労は溜まっていた。
どこか1人でやらなければという気持ちがあったが、スノウと会ったことで、気持ちが和らいだ。
スノウが一緒に来てくれる、とはまだ分からないことではあるものの、誰かいるという気持ちにほっとした。
――
部屋に女の子と2人っきり。
それって、状況的にどう思いますか?
俺はまぁ、良くはないとは思うんですよ。
そんな中、すやすや寝ちゃいますか?
スノウがシャワーから出ると、ソファでリリアーナが横になっていたので覗くと、寝ていた。
ローブを掛けているものの、ローブの下は短いスカートで、ローブから足が出ている。
リリアーナも疲れてはいたんだろう。
それに彼女は王の鍵をもち、恐らくそんな遠くない位置にクローネもいるのだろうし、安心しきっているのもあるのだろうが、俺も男で、その姿自体は目に入るわけで。
別に女には困ってきていない。
行く先で、適度に遊ぶこともあった。
そうでもしないと、挫けてしまいそうな気持ちや、この旅の先に本当に会えるのかとか、不安な気持ちに押しつぶされてしまいそうだったから。
何かにぶつけたい気持ち、安心したい気持ち、甘え。
色んなことへの逃げ。
それで抱いてきた。
スノウはリリアーナに手を伸ばし、とんとんと肩を叩いた。
「おーい!!疲れてるのは分かるけど、シャワーは入った方がいいよ!」
「うーん…。」
リリアーナは眠気まなこで、目を擦りながら声のした先を見上げて、少し考えて、はっ!として赤くなって俯いた。
「何もしてないから、安心してよっ。」
「そっ!……すいません。」
リリアーナは白いローブを手に取ると、立ち上がってシャワーの方へ足早に入っていった。




