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第1章 1-2 王の鍵と役目

鉱山に着いてすぐに案内人には引き返してもらい、事前に聞いていた鉱山の道と、この辺りにいるだろうという情報を元に鉱山の中を進んでいた。


中は舗装され、比較的道も広く綺麗で魔物がいるような雰囲気もなく、どこか安心してしまう場所で、それもまた原因で村の人達も、ここは大丈夫だろうという気持ちがあったのではないかと思った。


元々原因先と絞り込んでいた場所だったので、一気に片付けてしまえるなと思っていたが、妙に静かなのが気になった。

魔物の気配も無ければ、人の気配も無い。

何か異様な雰囲気は感じていた。

鉱山に入ってすぐの時は、只ならぬ気配があった気がしてはいたのだけれど。

それさえも気のせいだったのか?と混乱するほどに。


そう考えていた矢先、気付くと目の前に白い獣がこちらを見て道を塞いでいた。


すぐに間をとり後ろへと下がった。

というのも、全く気配に気付かなかった。

今まで、人、魔物と戦ってきたが、気配に気付かないなど初めての経験だった。

それだけ自分には力があることは多少なりとも自負していたのもある。

剣の柄に手を伸ばしたが―


「?」


強い獣、だろう事は分かるが、特に攻撃の気配も無い。

それにこいつは黒い魔物ではないことは明確。

むしろよく見ると綺麗な装飾も着けていることから、人に飼われているのだろうか。危険な感じは見受けられなかった。


「何だ…?」


白い獣は特に何もせず、何も言わず、その場を後にして消えていった。

何かを、確認していたのだろうか…。


――


『リリアーナ。』


リリアーナは、スノウが部屋を出ていったあと、すぐに後を追って鉱山へと入っていた。

リリアーナも元々この鉱山に目的があったのと、人が戻らないと聞いては黙って待ってはいられなかったから。

恐らくスノウが強い人物なのは分かっているけれど、もしこの鉱山に目的のものがあったのであれば、スノウでは対処が出来ないうえに、思ったよりも黒い魔物が進化し最悪命を落としかねない事態になる。


「クローネ。状況はどうですか?」

『問題ないよ。順調さ。ただね、少し気になることはある。』


クローネはというと、いつも街中とかで一緒に歩いていると流石に目立ってしまうので、普段は猫の姿でリリアーナと共にいる。

しかし、先程のように他人との部屋で猫は、嫌がられる可能性があったので外で待機していた。

クローネはリリアーナの傍を基本離れないようにしていたが、ここには先にスノウが来ていて彼の事も気にしないといけないことから、先程スノウの前に現れていたのだが理由は少々複雑であった。

 

正確にいうと、鉱山全体に結界の魔法をかけていた。

いつもはリリアーナがかけているのだが、それだとスノウに気付かれる可能性があったため、少しずつクローネが移動をして全体へと魔法を張った。

そしてそれは順調に進んでいたのだが、どうしてもスノウの気配が気になり、スノウの前に降りたっていたのだ。


「何を気になっているの?」

『あいつの力だよ。前に話しただろ?鍵と対になる錠の話を。』


王の鍵――

その鍵を持つものには、錠を持つ騎士が傍に仕えていた。

これもまた、王の鍵が現れた時に同じくして現れるもの。

王の鍵は、錠があって初めてその本来の力が発動する。

鍵が白であれば、錠が色をつける絵の具。


そう手に持つ鍵は白い。


「この鍵に、色を宿す――そういう意味合いでしたよね。」


手に持つ白い鍵を少し高く上げ、目線をそこに合わせる。

この白い鍵こそ、『王の鍵』で、リリアーナこそが鍵に選ばれし王である。

そしてクローネは王の鍵の聖獣で、代々王の鍵を持つものを見守ってきていた。


『そ。そして鍵は色を取り戻す。そのために錠とはこちらが望まなくても、この鍵が引き寄せるんだ。』

「…クローネは、スノウさんがそう、と?」


クローネはこく、と頷いた。

錠かどうかは、鍵にしか分からない。

例え聖獣であっても、明確には分からず、今までの経験上でなんとなく感じてるくらいだった。

"不便だな"といつだかの者に言われたことがあったな、とふと過ぎってクローネは少し顔を濁らせた。


「クローネ?」

『リリアーナが鍵を示せば分かる。それで、場所は特定できた?』


リリアーナは、クローネに王の鍵を持った右手を差し出し、魔法を唱えた。


「聖なる光よ、世界の影を暴き出せ――ルクス・サーチ

 。」


王の鍵が光を帯び、複雑な模様の魔法陣が浮かび上がり、ある1点の場所が赤く光り輝いていた。


『そこか。』


この鉱山に来た目的は、黒い魔物が出現する先。

世界の裂け目がある、からである。

この裂け目こそが、魔物をこの世界に引きず出している原因。

王の鍵を持つものは代々この裂け目を封印という役割を担ってきた。

そしてこの裂け目は放置すればするほど、広がっていき、魔物が増え、更には魔物を進化させる力をもつ。

それ程厄介な原因は更に言えば封印は王の鍵でしか出来ないほど、裂け目は強大であった。

なぜ、その裂け目が現れ、魔物が出現するかは、いまだよく分かってない1つではある。

この王の鍵がいつか示してくれる、そうクローネはリリアーナに告げていた。


『恐らく、戻らぬ者達は、裂け目に糧にされてる可能性が高い。進化される前に、封印を急ぐぞ。』

「勿論です。」


糧。

人は闇の力になる。


人は誰しも、魔法が使えなくとも魔力を持つ。

そして、誰もが闇の心を持つ。

それが、魔物にとっては好物だ。


ただでさえここは、宝石が採れ、尚且つ人がいる。

裂け目が、その『力』を取り込み進化を遂げることは容易な条件が揃っている。

リリアーナが鍵を持つもの、だとしても、まだ錠も揃っていない色を持たない鍵であり、力としてはまだ未熟である。そんなリリアーナには、進化した魔物が相手では、苦戦を強いる可能性も十分にあった。

それをクローネは懸念している。

リリアーナは元々小さい頃から魔法の力を行使できており、魔法を知らないわけではないものの、『攻撃』といった面ではまだ経験が浅い。

それをクローネは知っているから。


「クローネ。気付いてますか?」

『当たり前だろ。私が張った結界だからな。やはり、奴は。』


クローネが張っていた結界は、この鉱山より内外で魔物の行き来が出来ないようにしたことと、あることを加えていた。

そう先程懸念していたスノウのことだ。

スノウが、裂け目に近づけないように、外へ出るようにスノウの周囲に別の結界を張り誘導をかけていた。


『あいつ、私の結界を無視して、進んでいる。しかも恐らく奴の方が近い。』

「急がないとっ。」


そう気付いた時には、遅かったのか鉱山が突然揺れ、大きな爆発音が響いた。

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