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赤狼学院物語  作者: 宅間晋作
学院初等部篇 一年生から三年生編
4/22

二年目と探索と恋人達や

 二年生。

 それは一人の実力者としての格が上がった証拠でもある。

 今日この日からレルガは二年生となった。

 胸に赤い星バッチをつけて、学園を歩くと既に一年生と思われる学生達がたくさんおり驚いた。


「……多いな。 新入生」


「そうだね」


「うぁ!?」


 いきなり背後から声が聞こえて来て振り向くと、灰色の髪に赤い目、四年生を示す黄色の星バッチを付けた女子生徒がいた。


「……吸血鬼ですか?」


「うん? そだよ。 あ、ごめん名前言ってなかったね? センディアの彼女のミフィユです。 よろしね?」


 そう言ってレルガはミフィユと握手を交わした。


「よろしくお願いします。 あ、俺は二年のレルガって言いますよろしくお願いします。 ミフィユ先輩」


「うん。 よろしくレルガくん」


 そういいながら、ミフィユは笑った。


「しっかし本当に色んな種族の生徒が来るんですね」


「まぁーね。 教師がいないからいちゃいちゃしやすいし、なんと言っても自由だからね。 ゼロライド帝国の西の地方でも王都に近い街の奥地にこの学院はあるから色々と便利だもんね」


 そう言ってニコニコ笑いながらミフィユは空を見上げて笑った。


「……確か成人って十六歳からですよね?」


「うん。 そだね」


「……性教育とかどうなっているんすか?」


 レルガはふと思った疑問をミフィユに質問してみた。


「まぁそれは……ほら」


「えっ?」


 ミフィユが指差した所をみると四年生の証である黄色のバッチをした女子生徒と五年生の証である緑のバッチをした男子生徒がいた。


「もうすぐ生まれるね」


「うん。 嬉しい」


 女子生徒の方は腹を膨らませており、男子生徒は周りの視線を気にせず女子生徒とキスをした。


「あと、ほれ」


「うん?」


「ははっ! もうすぐだな! お前ら! よろしく頼むぞ!」


「「「はい!」」」


 今度は六年生の証である紫のバッチを付けた生徒のハーレム集団がおり、金髪の男がガハガハと笑っていた。


「……な、なんだこれ」


 レルガは目の前に起こるイチャイチャに困惑した。


「まぁ。 このように成人した十六歳である四年生からは妊娠しながらの活動はオッケーだし、ちゃんと端末に子供の名前や妻との関係をしっかり記載しないといけないけどね」


 そう言いながらミフィユはゆるゆると首を振りながらため息を吐く。


「……俺もあんな風になるんですかね」


 レルガは頬を掻きながら笑った。


「性的同意してから、避妊してからイチャイチャする事としか言えないかな? ちゃんと端末で頼んだり、街に行けば避妊の薬やコンドームはあるから安心してね? 後一番危険なのは探索の時間に巻き込まれる事だから」


「探索の時間?」


 レルガは新しい単語に首を傾げた。


「まぁ迷いの時間は一日の時間のどこかのタイミングで最低三十分から最大一時間三十分魔獣と戦い逃げて生き延びる時間の事を言うけれど……探索の時間は違う」


 真顔でミフィユはレルガの顔をみながら探索の時間について説明してきた。


「探索時間は最大二年の月日を掛けて生き延びなくちゃいけない。 食料も魔獣を解体して食べなくちゃいけないし、極限の状態で生徒同士が殺し合って全滅なんてザラにあるから」


「……えっ? も、もしかしてこの学院の卒業生ってそんなに少ないんですか?」


「……まぁ四割から五割はお金を払って自主退学か、この迷いの時間と探索の時間で死ぬね。 大体卒業するのは百人程度」


「……あの、思ったんですが俺ってすごい学院に入っちゃ……て寒うぅぅぅぅ!?」


 レルガが学院の裏事情を聞いていた途中に当たり一面が雪景色になった。


「はっ? ま、まさか!?」


「……そのまさかよ。 気をつけてレルガ君!」


 ミフィユが冷や汗を掻きながら腰についた剣を抜いて構えた。


「……人影?」


 レルガは近づいてくる人影をみると一つと団体が見えた。


「なぁおい! やっぱ俺、入学してこそこそするタイプじゃねぇわ! あ、俺、新入生のオザキ・ユウって言います! マフィア組織マクリオンの目に所属してまーす! シクヨロ!」


 すると黒髪に黒瞳、剣を腰に下げた少年がレルガの目の前にいた。


「おっ! 吸血鬼じゃん! かわいいな! さすが異世界!」


「……見た感じあなた異世界召喚人……及び転移者ね!」


 剣先を震わせながらミフィユはオザキと対面していた。


「なぁなぁ。 別にそんなのどうでもいいじゃん! 早く生徒をさ、ザービスの所に連れて行かなくちゃいけないんだよ! めんどくさいけど」


 そんな子供のような事を言いながらオザキはレルガ達と対面する。


「なぁお前!」


「ん? 何?」


「シャリンとダルファストという冒険者に聞き覚えはあるか!」


 レルガは吠えるように自身の家族について尋ねた。


「はっ? 知らねーよ! 俺バイトだし」


「……バイト?」


「お前知らねーの? マクリオンの目はバイトを雇っ」


『グゥオオオ!!』


「「えっ?」」


 オザキがベラベラと喋ってるいる間にいきなり現れた大きなクマ型の魔獣の爪によって切断され呆気なく死んだ。

 オザキの話に夢中で気が付かなかったが、既にオザキと共に行動していた一年生の面々も灰色の狼型の魔獣によって喰い殺されていた。


「……おい今あいつ喋ってましたよね? そしていつの間にかこんなに囲まれていたんですか? 俺ら」


 レルガは目の前で起きた突然の死を受け入れる事が出来ずに困惑したが、困惑する時間など現実は待ってくれなかった。


「……レルガ君切り替えて! 今は生きる事に集中して!」


「は、はい!」


 ミフィユの発言に頷いて、そのままレルガ剣を構えた。


「私について来て!」


「は、はい!」


 レルガは一呼吸おいてから目の前を疾走するミフィユについて行った。


「はっ! やっ!」


『キャン』


『グゥゥゥォォォ!!』


「がっ!?」


 順調に狼を斬っていたが熊の爪の攻撃に対応出来ずにミフィユが腸をぶちまけながら地面を転がった。


「っミフィユ先輩! このぉ! フレイム! とりゃあ!」


『グゥゥゥォォォ!?』


 レルガは炎の魔法でクマを炎の魔法で焼き、ダメ押しとして右腕を斬り落とした。


「はぁはぁ! ミフィユ先輩!」


「ご、ごめんね。 レルガ君。 私もう無理」


「そ、そんな! ミフィユ先輩!」


「あり……がと」


「ミフィユ先輩! ミフィユ先輩ィィィィィ!!」


 レルガは会話を交わした先輩の突然の死に慟哭した。


「う、うぅぅぅぅ先輩! 先輩!」


 レルガはミフィユの遺体を目の前にしてずっと泣き続けていた。


「……先輩俺、頑張ります! フィルノ学院を生き残って必ずマクリオンの目を滅ぼします!」


 そう言ってレルガは雪の草原を走った。


















「はぁ。 いつつ死んだふり久しぶりにしたなぁ。 ヒールエイドっと」


 レルガが去った五分後にミフィユは腹の傷を治して立ち上がった。


「……勝手に僕の後輩に近づくなよ」


 ため息を吐きながらセンディアがやって来た。


「……見てたの?」


「まぁね。 あわよくばハニートラップしようとしてたでしょレルガに対して」


「……別に」


 センディアの視線にミフィユは耐えられきれずにプイッと目線を逸らして口を尖らせた。


「ていうか迷いの時間で転移した場所一緒だったんだね。 センディア」


「まぁね。 でも今回は探索の時間になりそうかもね」


 そう言ってセンディアがニコリと笑った。


「……笑えない冗談なんだけど? センディア」


 愉快そうに笑うセンディアに対して、ミフィユはジト目で睨んだ。


「……まぁ冗談は置いといて。 ミフィユわざとレルガに接近したね? それはどうして?」


「……少しでもセンディアの負担を取り除きたかったの……もうセンディアが自分の手を汚さずに済む為に」


 実はセンディアは若い見た目でも三十代前半の男でミフィユはそんな彼に惹かれ結婚した妻であり、三児の母である。

 センディアはフィルノ学院に十七年間潜伏している騎士であり、ミフィユハそんな彼に惹かれた当時普通に入学した女子生徒だった。


「……嬉しいけどね。 やめてくれるかな? 僕の妻がそんな勝手な事してくれちゃあ」


「……んなっ! や、やめて! 言わないで! な、なんでそんな事急にいうの!? は、恥ずかしい!」


「はっはは。 赤面した顔も可愛いねミフィユ。 けれど……罰を与えないとね?」


「えっちょ、ま、まさかセンディア!? や、ヤる!? い、今からや、ヤルの!?」


 センディアの纏う雰囲気の変化を敏感にミフィユは感じ取って赤面した。


「……僕だって妻が目の前で年下の学生を誑かしていたら無茶苦茶にしたくなるに決まってる」


「ま、待ってこ、ここ雪の中だよ!? あ、頭おかしくない? んっ!?」


 夫の口説きに頭が爆発しそうになるがなんとか理性を保ち、ミフィユは話そうとするがセンディアに口付けされて黙らされてしまった。


「……ダメだよミフィユ。 僕を焦らさないでくれ」


 目の前にいる男はもう既に帝国騎士団の一員ではなく、妻を愛したくてたまらない一人の男の顔をしていた。


「……しょうがないわね。 洞窟に行きましょう? そ、そこで盛り上がるならいいわ」


「……分かったよ」


 そんなセンディアを前にミフィユはため息を吐いて、恋人繋ぎをしながら薄暗い洞窟を見つけ二人は交わった。


 




 




 






 


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