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赤狼学院物語  作者: 宅間晋作
学院初等部篇 一年生から三年生編
3/22

幕間 フィルノ学院に潜む者達

「ねぇねぇいいじゃん。 俺とデートしない?」


「い、いやです! だ、誰か! 助けてください!」


「はっ! 誰もこんな空き教室になんかに来るかよ!」


 新入生の女子生徒が二年生の男子生徒に暴行を加えられそうになっていたその時だ。


「……やめといた方がいいよ君」


「あん?」


 二年生の男子生徒が振り向くと右目に眼帯をし、胸に青い星バッチを飾っている生徒がおり、驚いた。


「大丈夫だよ。 ほら離れていて」


「えっ!? あ、ありがとうございます!」 


「い、いつの間に!?」


 いつの間にか男子生徒の手から女子生徒が眼帯をした男子生徒の胸元におり、新入生の女子生徒はそのまま去ってしまった。


「て、テメェ! か、勝手に俺のナンパを!」


「……ナンパじゃないだろう? 二年のレゴウ。 いやマフィアの一員さん?」


「て、テメェ何言って!?」


「いや最近ね。 一年生と二年生が失踪する事件があったんだ。 君の部下も生徒として紛れ込んでいた様だけど帝国騎士団の仲間がそちらはやってくれた」


「……て、てめぇま、まさか帝国騎士団の団長!?」


「……それ以上言うなよ。 下っ端」


「ま、待ってくれ! お、俺は金が欲しいだけなんだ!」


「知るか」


 そう言ってセンディアは異空間から出した軍刀で二年の生徒だった者を斬り殺した。


「……顔怖いわよセンディア?」


「ミフィユか」


 センディアが背後を振り返ると、灰色の髪に赤い目をし灰色のローブにセンディアと同じく青い星バッチをしている女性がいた。


「……今回はマクリオンの目の末端だった」


「はぁ。 全く賢者師団と言いマクリオンの目といいよくこの学院に送ってくるわね。 金で雇った構成員と使徒」


 そう言いながミフィユはため息を吐いた。


「賢者師団の奴らも見つけたか?」


「……ごめんなさい全く分からないわ。 ていうか一万人以上の生徒がいるから誰がどこの組織に属しているなんて分からないわ」


「……それもそうか」


 この学院のには四種類の人間がいる。

 生徒の保護と内部工作を防ぐゼロライド帝国騎士団。

 優秀な魔法使いを拉致監禁する賢者師団の構成員と麻薬を買わせたり、裏の仕事を行わさせようとするマクリオンの目。

 そして純粋にこの場所で鍛えにやってきた入学生。

 

 マクリオンと賢者師団の構成員の種類は二種類だ。

 そのままの見た目で入学し、フィルノ学院の内部で拉致や薬を売ったりして内部破壊を起こす者。

 見た目を変えて、潜入している者の二種類がいるそれを見極めて粛清しているのがゼロライド帝国騎士団の任務である。


「はいこれ。 制帽と軍服ね」


「ありがとうミフィユ。 後、この死体を片付けてくれ」


「分かりました」


 そう言ってミフィユはテキパキと死体を片付けて、一人の学生としての雰囲気を纏い校舎を歩いて行った。


「レルガ。 君は賢者師団でもマクリオンの目でもないよね?」


 制帽と軍服を羽織り、眼帯を外し剣を帯刀した帝国騎士団の団長は月にそんな質問をしながら、ゼロライド帝国を守るべく、西の地方フィルノを守るべく王都を駆け巡る。

 西のフィルノ地区担当の帝国騎士団隊長のセンディアは今日も学院とゼロライド帝国の平和を守る為に剣を振るうのだった。





「導師様。 お耳に入れておきたい事があります」


「おやどうしたのです? 信者よ」


 とある山奥に大きな神殿の教会があった。

 一人の信者を前に僧服を着た年老いた老人が笑み浮かべた。

 彼は賢者師団の先導者であるトーゼ・オイクである。


「学院に潜入している賢者様より情報が。 今年の新入生及び帝国騎士やマクリオンの目はかなりの強さを持っていると」


 報告に来た信者が声を小さくし、動揺しながらトーゼの言葉を待った。


「ふむ。 やれやれ我が弟子である賢者達でもてこずる所ですなフィルノ学院…… だが、神は我ら賢者師団に加護を与えなさっている。 野蛮なマフィアや規律だけを守っている騎士団など敵ではないよ ところで君」


「な、何故でしょうか? 導師様?」


 信者が声を掛けるとトーゼは邪悪な笑みで笑った。


「伝言を頼めるかな? 守護者の姫咲明さんに来年フィルノ学院に新入生として入学しろと」


「はい! はい! 分かりました!」


 トーゼの言葉に感涙の涙を流し、頷いて信者は立ち去った。


「ですが……常に神は我々に試練を与えますからね。 早く同胞及び家族を増やしたいところですが……フィルノ学院通称魔境の学び屋。 良い信徒と戦力が手に入りますが。 やはり一筋縄ではいかない。 早く! 早くこの地全てを我手に出来るのはいつの日だ!」


 トーゼは快晴の空を見ながら己が野心を吐き出し、睨んだ。






「はぁ……バイト死んだのかよ」


 悪魔族にしてマクリオンの目の首領であるザービス・マクリオンは高級なソファで寝そべりながらワインをラッパ飲みしていた。

 目は悪魔族特有の黒と赤のオッドアイで黒髪。

 白シャツとジーパンというラフな格好だった。


「帝国騎士の虫と賢者師団のアリが俺によく歯向かうぜ」


 そう言いながらザービスは自身の端末を操作して一人の人物に電話を掛けた。


「おい。 オザキ・ユウ。 お前に仕事をやる。 今年のフィルノ学院の新入生として入れ、そして学院の学生共を俺らに寄越せ」


『はぁ? 何言ってんだよザービス! 確かに俺はお前に拾われて感謝してるけどさぁ!』


「……駄々こねるな殺すぞ?」


 端末の向こう側にいる異世界から召喚された少年を脅し、ザービスはドスの効いた声を出した。


『分かりました。 分かりましたよ! 行けばいいんでしょ? 行けば!』


「わかりゃいいんだよ」


 そう言ってザービスは電話を切った。


「俺がいずれ世界を手に入れてやる」


 そう言ってザービスは笑った。



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