三年生終了
「あっ! 結界が解けたで!」
「な、何があったのでしょう?」
結界が解けると外で待っていた鬼丸とロナが近づいてきた。
「おっ! フィリシアちゃん! どうやった? レルガは!」
「落ち着きなさい鬼丸。 今はレルガを一人にしてあげて? 彼今疲れてるから」
「うん。 そうだよ! レルガは疲れて寝てるから!」
「……それよりフィリシアさん。 ラファンさん何がいい事でもありました?」
どこか明るい様子にロナが反応して首をキョトンと傾げた。
「「秘密」」
ロナの質問にフィリシアとラファンは唇に人差し指をつけてウィンクした。
「さぁ。 申請よりも早いけれど学院に帰りましょう? ちょっと私寝たいから」
「私もー」
フィリシアの提案にラファンが頷く。
「まぁしゃあないな! 僕も疲れたからかえろうか!」
鬼丸も同意して学院へと帰る事を決めた。
「はい! 分かりました!」
ロナも元気よく返事を返し、四人はレルガよりも一足先に学院へと帰っていった。
「……あーやばかった」
レルガは倦怠感に襲われながらも立ち上がった。
「……はぁ。 二人の方がやばいじゃねーか」
レルガはそんな感想をポツリと呟いた。
たとえ体力があったとしても、相手が人を殺す竜と誑かす妖精相手ならばただの獣であるレルガなど五秒も経たずに瞬殺されるのだと思い知った。
「……ダルウィンもこんな気持ちだったのか?」
唯一結婚していた兄貴分を思い出し、レルガは嘆息した。
「……ジーグやリズリードは娼婦とか抱いてたのかな?」
ジーグは神経質で、リズリードは厳格であったのでそう言う色事に関しての話をしていない。
ほとんどこの学院で暮らしていたダルウィンとサウィナから色事の話を聞きいてその話にシャリンは赤面し、リノはちゃんと誠実である事そしてもしも関係を持ったならば最後まで幸せにする義務があなたにはあるとめちゃくちゃ口を酸っぱく言われていた。
「……俺はどうしたいんだろな」
レルガは魔獣から進化した獣人である。
獣人である限り、ああ言う野蛮な事はたくさんするだろう。
行為を楽しむ事はレルガは心で理性で出来るか正直分からない。
「……みんななら、なんて言うかな?」
何度も獣化をするたびに脳裏に自身が魔獣になった頃を思い出す。
同じ家族の血の味と匂いが鼻と舌と脳を揺さぶる。
「……人間じゃないのな。 俺は」
もちろん人殺しに快楽を見出してもいないし、復讐に全てを費やすほど復讐鬼でもない。
どこまでも中途半端でどうしようもない人間なのだとつくづく自身に呆れた。
「……はぁ。 帰るか」
レルガは服を着て。
そのままクヤルの街へと出た。
「……誰に相談する?」
自身のこのモヤモヤを解決するべく外を歩いていると一組のカップルに出会った。
「……おや? レルガ君?」
すると右目に眼帯をした二年上の先輩センディアがいた。
そしてその隣にいたのは死んだはずのミフィユだった。
「み、ミフィユ先輩! い、生きてたんですか!?」
「あっいやそのぉ。 ほ、報告はしたかったんだけどそのぉ」
レルガが気がついて近づくと気づいたミフィユは気まずそうな顔をした。
「……こらこら僕の妻にあまりベタベタしないでくれる?」
するとセンディアがレルガを睨みつけた。
「あ、すみません!」
レルガは死の危険を感じて頭を下げた。
「ご、ごめんねレルガ君! 連絡忘れててさ! 実は私生きてたの!」
するとミフィユが笑いながらレルガの頭を撫でてきた。
「よ、よかった! 先輩! 先輩!」
レルガはみっともなく、その場にへられ込み、子供のように泣きじゃくった。
「……あーこれは仕方ないね」
センディアも純粋にレルガがミフィユの生存を喜んでいたからこそ、距離感が近かったのだと悟り苦笑いをした。
「僕の妻の為に泣いてくれてありがとう」
「ずび。 あれ? ミフィユ先輩とセンディア先輩は恋人同士じゃ」
「ふっ。 僕達結婚したんだ」
「そ、そうなのよ!」
「それはよかったですね! おめでとうございます! なんか二人見てたら元気になりました! ありがとうございます。 じゃあ俺はこれで!」
レルガは帝国騎士団の二人に騙されている事に気づかずに、そのまま祝福の言葉をかけ、全てが吹っ切れたレルガは寮に走って行った。
「俺もセンディア先輩みたいないい男になるぞ!」
二人の幸せな所を見てレルガは前向きな気持ちとなり、前を向いた。
レルガはその後、三年生の終わりにフィリシアとラファンと指輪を交換し、二人と結婚した。