デートと話し合い
「……どこ巡りたい?」
レルガが街に繰り出して話す言葉がまずそれだった。
「……レルガが望むとこへ」
「……お腹減ったわね」
「……じゃあ朝食でも食べるか」
そう言ってレルガ達は喫茶店に入った。
「……俺は普通にパンを」
「私は木の実」
「じゃあ私は普通にハンバーグのランチセット」
レルガはパンを、フィリシアは木の実をラファンはハンバーグのランチセットを頼んだ。
「……ごめんな。 昨日はあんな事をして」
「もういいよ。 このデートで元取るつもりだし」
「ええ。 私もたくさん食べるつもりだからよろしくね?」
そうフィリシアとラファンが言った時だった。
急に景色が変わり、城の中いた。
「……はっ? 迷いの時間?」
「そのようね」
「レルガ! 構えて!」
さっきまでのデートの雰囲気が霧散し、一気に戦場の空気を肌に感じた。
「……騎士団?」
「いや、あれは下級の天使!」
そうフィリシアが敵の正体を看破すると騎士の鎧が羽を広げて襲いかかってきた。
「……やるしかねぇか」
レルガは剣を抜いて天使の大群と激突した。
「はぁ……はぁはぁゼェゼェ」
レルガ達は三十分掛けて鎧の大群を倒し、喫茶店に戻ってきた。
「……よかったね。 短い時間で」
「ええ、でも汗かいてびちゃびちゃだわ」
「ご飯食べたら寮か部屋に戻るか?」
「「部屋に行きたい」」
するとフィリシアとラファンが同時に声を出して、テーブルから乗り上げた。
「……分かった」
レルガは二人の声に圧倒されながら黙々とパンを食べた。
「……ロナと鬼丸には連絡いいのか?」
「もう私が連絡したから!」
すると端末で三人でデートするという事を書かれていた。
「……俺はもうお金払って学院帰ろうと思っているから。 じゃ!」
「「だーめ!」」
レルガがお金を払いに向かおうとするとラファンとフィリシアが両脇から絡みついてきた。
「……デートしたから、ここでいいだろ?」
レルガは俯きながら声を絞った。
「……そういう事は今日はもうしないわよ。 ていうか軽くトラウマになってるでしょ? レルガ」
「……うん」
辺りからは痴話喧嘩やらハーレム崩壊など言葉が聞こえてくるがレルガの耳には届いていない。
ただフィリシアの指摘のみが耳に響いていた。
「レルガ。 これは仲直りの意味も込めたデートなんだよ? もう少し付き合ってよ」
「……俺がもしも欲に負けたらどうすんだよ」
レルガは力無く、ラファンとフィリシアの方へ顔を向けて質問する。
「そこは今日の私達は否定するわ。 今日はちゃんと仲良くなる為の交流だもの」
そう言ってフィリシアは優しく笑った。
だが、どこか怒りも感じた。
「……怒ってるか?」
「……ふーん。 分からせる必要がありそうね? ラファンいいわね?」
「うん!」
フィリシアが目を細めると、何故かラファンに同意を取った。
「えっ?」
するとフィリシアがレルガの持ってるレシートをぶんどり、スタスタと会計を済ませてレルガの耳を引っ張ってそのまま男女が泊まるような施設にそのまま入りさっくりと受付をとって、三人で部屋に入った。
「ねぇレルガ。 あなたは私達に言う事があるわよね?」
「……それはお前達を襲った事だ」
レルガは素直に自身の感想を話す。
「……違う」
だがそれはフィリシアが欲しい言葉ではなく、冷たく否定された。
「違くないだろ? 俺は獣の本能に負けてお前らに暴力振るったんだよ」
「違うって言ってるでしょ!」
レルガは自身の最低の行いを吐露するとフィリシアに胸ぐらを掴まれた。
「あなたねぇ? 私達が何も覚悟もなくあなたを助けたとおもってる!? ふざけるのも大概にしなさいよ! 今のあなたこそ私達を傷つけてるって分かってる?」
フィリシアの瞳には怒りが宿っていた。
フィリシア達にやった行いよりも今のレルガの態度の方に怒っている事実にレルガは分からなかった。
「なんでそんな所に怒っているんだよ? 俺は……」
「あーもう! うっさいわね! 昨日の行動はあなたガ好きだったからやった行為よ! 私達の覚悟台無しにしてんじゃないわよ! ウジウジめんどくさい!」
両目に涙を溜めてフィリシアが怒りをぶちまける。
「そうだよレルガ。 昨日の事はほっとけばレルガ君は完全な魔獣になってた」
するとラファンもレルガに肩を置いて、涙を浮かべていた。
「……でも俺は」
言葉が出ない。
レルガがやった事は人として最低であり、殺されるべき行いだ。
それなのに何故目の前の二人はレルガを許そうとするのか。
「……許してくれるのか?」
「許すんじゃないわ。 調べましょうって言ってんの。 何故あんな風になったのかを。 私達が獣になったあなたを受け止めるって言ってんの!」
「……どうしてそこまで」
レルガは分からなかった。
何故どうしてと脳内が埋め尽くされ、思考停止に陥っていた。
「……とりあえず三日間検証してみましょうレルガ。 もうあんな自分になりたくないのなら。 魔獣ではなく、人間として生きていくのなら。 今、ここでコントロールする手段を見つけましょう。 とりあえずはい」
するとフィリシアがレルガに向けて女神の金貨を渡してきた。
「……これは?」
「食べなさい。 迷いの時間が終わった今今日はとりあえず迷いの時間はない。 だから検証するのよレルガがああなってしまった原因を。 金貨のせいなのか。 迷いの時間のせいなのか。 それとも……戦闘による生存本能によるものなのか」
「……分かった」
「レルガ。 私達がついているから」
そう言ってラファンがレルガを抱きしめた。
「……ありがとう。 ラファン」
こうしてレルガは自身の魔獣化による研究を開始した。