獣は女を食べるもの
『はぁはぁ……あぁ』
男が死ぬとその体は粒子のように溶けて消えた。
そしてレルガは消滅を見届けて呼吸を整えて獣化を解く。
「み、んな」
レルガはなんとか獣化した後遺症で痛む体の激痛を無視して、皆を担ぎ上げ、そのまま宿へ向かった。
「お……客様?」
「部屋を五名分頼む」
受付の男がレルガのボロボロの体を見て、絶句するがその反応をレルガは無視した。
「わ、分かりました。 ろ、六名ですね?」
そう言って受付の男が部屋の鍵を渡し、レルガは鍵を受け取ると、そのまま仲間達をベットの上に寝かせて、レルガも自身の部屋に戻った。
「よかった。 おわ……うぐっ!?」
レルガは一息つくと、胸が痛くなり始めた。
「う、な、なんで!? ま、まずい」
レルガはそのまま胸を抑えながら外へ出る事にした。
「お、お客様!? ど、どちらへ?」
「散歩をしてくるだけだ」
「そ、そのようには見えません!」
「か、必ず戻る!」
そう言ってレルガは人の気配がしない場所まで全速力で走った。
森が近くにあるのを見つけたのでそこに身を隠す事にした。
「はぁ……はぁ。 か、体がう、うぐぁぁぁぁぁぁ!!」
レルガの意識関係なく体が人狼化した。
「う、うぅあ、頭が痛い! か、体が痛い! く、苦しい!」
肉体が大きくなろうとしている。
少年から青年の体へと無理やり変化を遂げようとしていた。
『は、ハァ。 ナンデ?』
自問自答をするが分からない。
迷いの時間による現実への成長の帳尻を合わそうとしているのかそれとも女神の金貨の後遺症か。
レルガは獣へと戻る思考では何も考える事ができなかった。
『ウォォォォォォォ!!』
完全にレルガは獣へと変化を遂げた。
「ん?」
ラファンが起きた時には既に、朝であった。
「おはようラファン起きてる?」
するといきなり部屋のドアが空き、フィリシアが出て来た。
「フィリシア! 無事だったの!?」
「ええ」
友人が生きている事に安堵を覚えて、ラファンは一筋の涙を浮かべた。
「他のみんなは?」
「まだ寝ているわ。 それよりもレルガは?」
「……分からないの。 それが探してもどこにもいなくて」
「そんな! レルガ!」
フィリシアが首をゆるゆると振るう姿を見てラファンを悲鳴を上げた。
もしやさっきの戦いで死んでしまったのではないかと不安になった。
「探してみましょう」
「ええ!」
そうしてラファンとフィリシアはレルガを探しに出かけた。
「あの! すみません! 赤毛の髪をした少年を見ませんでしたか?」
「昨日。 出て行かれたお客様ですね? その方なら森の方へ歩いて行きましたよ?」
「「ありがとう!」」
こうしてラファンとフィリシアは受付にお礼を言って、森へと向かった。
「レルガ!」
「レルガ!」
フィリシアとラファンは協力してレルガを探した。
「……どうしよう見つからない!」
「あれ? なんか今見えなかった?」
「嘘!」
フィリシアの発言にラファンが驚くとそのままフィリシアが指を指した方へ走った。
「えっ!? ま、魔獣!?」
すると狼の魔獣が目の前に現れて驚いた。
『ウォォォォォォォ!!』
目の前の狼は獲物を見つけたせいか遠吠えをした。
「くっ! はぁ!」
『ぐわ!』
「きゃ!?」
ラファンが剣を抜刀し、襲いかかるが狼が剣を二本とも折った。
その事実に驚き、尻餅をついた。
『グゥゥゥワァァァァァァァ!!』
「ラファンから離れなさい! ビュム!」
横からフィリシアが風の魔法を発動し、狼の体に傷をつけようとするがあまり効果がなかった。
『……ニゲロ。 フィリシア。 ラ……ファン』
「「っ!?」」
すると狼が魔力の念話で話し、名前を呼んだ事に驚いた。
「えっ? も、もしかしてレルガなの!?」
『ソ……ウダ。 カラダガイウコトヲキナイ。 オマエ達をコロシタイヨクキュウト、オソイタイキモチガアフレテトマラナイ。 ウゥゥゥ』
「……魔獣の本能ね」
「ほ、本能?」
フィリシアの発言にラファンが反応した。
「魔獣の中には人を誘拐して食べる個体もしくは女性を誘拐し、子を産ませる個体がいるのよ。 レッドウルフの人狼体は後者よ。 おそらく肉体的に大人になったから性欲のコントロールが難しくなっているのね……それと迷いの時間のズレを補正する為の急な肉体成長と女神の金貨を食べた事による興奮作用も相まって、このままじゃあレルガは魔獣になってしまう!」
「そんな! ど、どうすればいいの!?」
「……ここで今レルガに抱かれる事」
「っ!?」
フィリシアの発言にラファンが絶句した。
「こ、ここでれ、レルガにだ、抱かれろと!?」
「……ゴムと避妊薬は持ってるわ。 早く決断なさい。 ラファン。 じゃないとレルガが魔獣になるわ!」
「……分かった。 私、レルガを助けたい!」
「……では。 レルガ。 今、本能を鎮めるわ」
『ウゥッゥゥ』
そう言ってフィリシアが服を脱ぎながらレルガとキスを交わした。
「さぁラファンも」
「うん。 レルガ。 今人間に戻すね」
そう言ってラファンもフィリシアに倣い、服を脱いで下着姿でレルガの口にキスをした。
「ラファン飲んでおいて」
そう言ってフィリシアが赤い瓶と白い瓶を渡して来た。
「コレは?」
「薬」
「うん。 わかった」
「先に失礼するわ」
「うん」
「レルガ。 私を食べて」
『ウガァァァァァァァ!!』
そう言ってレルガは獣へと堕ちた。
「私も」
そう言ってラファンも薬を飲み干してそのままレルガに食われにいった。
こうしてレルガは獣へと堕ちた。