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作者: miya_s

 母が死んだ。家を出てすぐの通りで通り魔に刺されたらしい。画面に小さなヒビの入った母のスマホには、「ポタージュあります。今日も」という送信前のメッセージが残っていた。きっと、今日も遅くなります、と打とうとしていたんだと思う。母は仕事が忙しく、料理も好きではなかった。母の唯一といっても良い手料理はポタージュスープだった。私が小さい頃から好きな料理で、一度、明日世界が終わるならお母さんのポタージュが飲みたいと言った。母は、「なんで明日死ぬってのに料理なんてしなくちゃいけないのよ」と軽快に笑っていた。幼い頃はよく作ってとせがんでいたが、母が仕事で忙しいことを理解できるようになってからせがむことはなくなった。中学の時、夜遅くにポタージュを作っていた母に「市販の粉のでいいよ」と言ったことがある。母は鍋を混ぜる手を止めて、いつもキリッとつり上がっている眉を下げて「市販の味は好きじゃないでしょう」と、それだけ言った。私は昨夜、母と言い合いをした。今朝も、ろくに口も聞かないまま家を飛び出した。病院の安置所で見た母の顔は穏やかだった。

 病院からの帰り、暗い部屋で冷蔵庫を開く。痛いほど眩しい青白い光が視界を埋めた。冷気がすでに冷え切った頭を冷やす。空っぽの冷蔵庫に大きな鍋が入っていた。母の最後のポタージュスープは少し塩辛かった。

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