縁
「えい、ファイヤー!」
藁のダミー人形に向かい棒を振るギバーの子供がいる。
稲作労働が終わり、農具を担ぎ3人は、帰路に就いていた。
「おお、魔法の練習ですか?」と僕
「ただの遊びだべ」とエアルさん
「あなただって昔やってたじゃない」とアサナさん
「ムっ誰だって憧れる」
「”セタカサマ”の件も合って魔法が使える世界と思っていたんですが」
「その”セタカサマ”から授かるんですよ、10歳の時に」
「へぇ~いいですね!どんな魔法なんですか?」
「男は、戦闘補助魔法、女は、体力回復魔法」
「わ、わ~そうなんですね…」(マジカル…ディストピア?)
ん?戦闘補助魔法?
「なんか襲撃イベントとかあるんですか」
「えっ長老言ってなかったかしら」
数か月に一度城壁内を囲う雑木林からゴブリンが出現し、この土地のギバーを襲撃する
それは、無慈悲で、女子供関係なく蹂躙の限りを尽くす。
曰く”セタカサマ”の授けた試練だそうだ。
ただの間引きだろ、エルフさんよ
「リョク」
「なんですか?」
「お前、魔物、それどころか動物を殺したことないだろう」
「リアルワールドでは、魔物なんていませんでした。」
「争いのない世界だったのか?」
「はい、少なくとも自分がいた国は」
「そうか、だがこの国は、平和を手に入れるには、争いが必要になる」
「…もしかしたら、この世界は、リアルワールドよりも辛い選択があるのかもしれません」
「アンタに、守るものができたとき、きっとその価値観は、変わるはず」
「さっきら、あんた達おもいわ~」
「大切な話だ」
「あんたは、ちゃんと私を守りなさいな」
「ムッ」
「さ、帰るわよ」
「おじ…お兄さん」
服を子供に引っ張られる
「ん?」
「これやって!ファイヤーって」
ちらりと、エアルさんたちを見る
「ふふ、やってみれば」
「戦闘の練習だな」
まじかぁ
「物は、試しってやつですか」
魔法いわば目に見えない力の行使
この国には、目には見えない力、ババ様の気が溢れている、
この気を介した目に見えない、ババ様との繋がり ”縁” を
この身に受け入れる。
僕は、人差し指と中指を立て”刀”を作り
その気が集まるイメージをする。
ダミー人形の前に立つ
武器を使うときは、基本は、
3つ
構えて、狙い、放つ!
「えい!」
ダミー人形は、
黙然と佇んでいる
そりゃそうだ、
「お兄ちゃん、えい、じゃなくてファイヤーだよ」
「そうだ、そうだ」
「真面目にやってるのに」
「もぉ、2人ともそもそも触媒なしで魔法の行使ができる訳」
ドサ
袈裟斬りにされ胴体が離れたダミー人形が転がった
「えっうそ、触媒なしで…触媒なしで!?」
「リョク?お前、攻撃魔法が使えるのか道具を使わずに?」
「え~ファイヤじゃないじゃん」
僕は、ダミー人形をよく観察する。
切断面は、刀で切られたというよりも
自然に朽ちている感じに見える
「あ…ほら、人形ボロボロだったんじゃないですか?たまたまですよ。」
不穏な眼差しが向けられている
「あぁ リアルワールドでは、こんな、目に見えない力は、
ちゃんと、目に見える形で説明しないと いけないんだ」
「??????」
「何で?」
「ずる、していると思われるから」