プロローグ
「さて、やっと帰れる」
Fラン大学を卒業後、コミュニケーション能力の欠如
一般教養の欠落、履歴書は、誤文字が多く、挙句の果て子供のような筆記体
徹夜で書いた、履歴書を「ハッ」と鼻で笑われたことは、今でも覚えている。
そんな、私でも仕事を選ばなければ、職に就ける。
所謂、ブラック企業だ、業種は、伏せておくのだが、絶対に”誰かがやらないといけない事”
と、だけ伝えておく。
10年近く勤めて、その汚れにも慣れ、瞳が濁り、腰には、鈍痛が常に響く
しかし、ゴミによって蝕まれたその心は、それさえも無視することができた。
か、のように思えた
その一番最初のきっかけは、はっきりと覚えているのだが、決定打となったのは、
6っか月前、会社のトイレで吐き出して、泣く泣く早退、安価で手狭なアパートにたどり着くと
せんべい布団に、倒れ込んだ。
幼少期私は、父方の実家で育まれていた。その時の夢を見てしまった。
その時の私は、縁側から雨で慕った中庭を見つめて泣いていた。
その表情は、多幸感に包まれあぁ、ここで魂ごと、眠りにつきたいと思ってしまった。
蝕まれた心が急に輝きだし、この汚れた世界から抜ける方法を頭と体が全力で導き出す。
「もしかして、私は全員のストレスを集める役割をしてるじゃないのか?」
組織として、そんな役割を持つ者がいると、周りは心の平穏を保つことができる。
よくできた、素晴らしい、システム。
「でも、これ業務内容に含まれていないよな」
そこからは、割とトントン拍子だった。やめる理由なんていくらでも話せる
直球で「業務内容にない汚れ仕事をしているので」とでもいいし
少しひねって「周りの笑い声が、全て私を笑っているように聞こえます。もう我慢できません」でもいいし
誰も、傷つけずに「最近、重要な仕事を任せる事になりました、しかし私は、そこでミスを犯してしまい取り返しのつかないことになりそうです」
とでも言っておこう。
会社のしがらみを解いて、私は、故郷へ向かう新幹線に乗っている。
外は、別れを惜しむかのような、大雨だ。
「さようなら」列車のシートに座り、そうつぶやいた。
だが、結局帰郷するのに、この新幹線は、必要なかった。