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幸せのエンドロール

作者: 愛間仁光

日常が非日常に・・・そしてそれがまた日常になるまで


只々伝えたい。思ったことを記したい。白紙を目の前に無限に書くことのできるペンを持って、まだ拙く、可能性に満ち溢れた文章で綴った物語。

《日常》


 日常は時に非日常になりまた日常に戻る。そんな繰り返しでできている。そんなことを考えながら日々を過ごしている人は殆どいないだろう。

 生きづらい。今の自分を変えたい。変わりたい。と考えている人はたくさんいると思う。でも、どうすれば変わることが出来るのか。考えれば考えるほど自分も世の中も嫌いになる。モヤモヤする。世の中に不満を抱くと、成功者と呼ばれる奴らに、自分が引いてきたレールの上を走れと訂正される。不満を表に吐き出す環境を潰された挙句、陰湿なやり方で感情をぶつけることになる。自分の人生を誰かのために生きている人が多い。自分は主人公ではないと自然に考えてしまう。いや、自分以外の誰かを主人公にしてしまっているのかもしれない。

 立ち止まり、休んでも進み続けるのが人生。人は生まれた時に生と死の両方を授かる。悲しいことにゴールには必ず死が待っている。途中で疲れて早足でゴールに向かってしまう者も増えつつある。それを逃げだという者もいる。本当に「逃げ」という二文字で表していいものなのだろうか。目を逸らさず向き合うことで結末が変わるかもしれない。正論を綺麗事と言って一蹴してしまう人は、普段から汚い事を中心にして生きているのだろうか。


 僕は何者でもない大学生。いつからか自分を変えたいと思い始め、世の中の構図に落胆し、将来に、希望も夢も持たずに只々一日を消化し続けていた。

 そんな日常が彼女との出会いによって非日常となり…それがまた日常へと移り変わっていった。


 大学生二回目の冬、僕はこの日彼女の存在を知った。

 友達のいない僕は、いつも教室からすぐ出られる扉の近くに座っていた。そして、彼女はいつも僕の前か後ろの席に座る。いや、座らざるを得なくなる。授業開始ギリギリに来る彼女は、入ってすぐの席に座るほか選択肢がないのだ。もちろん、友達のいない僕の周りには、人がいるはずもなく点々と空席になっていた。まるで僕が彼女のために席を確保しているかのようだ。と勝手な妄想を膨らまし、心の中でドヤ顔を決めた。

 僕からすると、彼女は友達が多く、明るくいつも輪の中心にいるような、樸とは似ても似つかない人気者だと思う。そう考えると、いくら心の中だとは言えドヤ顔を決めた自分が恥ずかしくなった。

 今日に限って彼女は、教授の「ここまでの話で何か質問はないか?」という、普通誰も反応しない社交辞令のような質問に、大勢の前でビシッと手を真上に挙げて質問し、笑いさえとっていた。僕とは正反対の性格で少し苦手なタイプかもしれない。

 彼女のおかげで目立ちたくない僕まで皆の注目を浴びることになった。いや、浴びている気になっただけだ。ギリギリに来てよくそんなに堂々と質問できるなと思った。彼女と僕は生きてる世界が違う。この時そう思った。


 チャイムの合図とともに逃げるように教室を出た。この時の僕は自信に満ち溢れた彼女が眩しく疎ましかったのかもしれない。日常が崩れていくのはあっけなく何の前触れもない。途轍もなく自然だった。

 僕は教室を出てすぐ、重圧から解き放たれたかのように空を見上げて大きく深呼吸をした。口から出る白い息でようやく外の寒さに気づいた。空は今の僕に似てどんよりと曇っていた。

「ねぇ、ねぇってば!」

 後ろで女性が誰かを呼ぶ声がした。そんなこと僕には関係ない。この大学で僕に話しかけてくる女性……人間なんていないのだから。無心で空と見つめあう。

「ねぇ!君だよ!何もない空ばっか見上げてる君!」

 声がした瞬間、樸の肩を誰かが優しく叩いた。

 理解が追い付かない状況に驚きつつ振りむくと、そこには彼女がいた。

 彼女は見覚えのある手帳を持っている。

「え?」

 聞こえるか聞こえないかの声量で僕は言った。

「教室から出る時に落としたから」

 彼女はそう言って手帳を僕に渡した。寒いのか彼女の手は小刻みに震えていた。

「あ、ありがとう」

 咳払い交じりのかすれた声で僕は彼女にお礼を言った。人間の体はよくできている。普段コンビニの定員かスーパーのレジでしか人と話さない僕の喉は、咄嗟に仕事をしてくれなかった。

「全然いいよ、映画好きなの?手帳の中見えちゃって」

 手帳には今日観る映画のチケットを一枚挟んでいた。今時チケットで映画を観ていることに何故か恥ずかしくなった。

「映画は・・・映画は好きだよ。」

 自然に話を振ってくる彼女に、流石のコミュ力だな。と感心しながら不愛想に答えた。

「映画<は>って何?」

 彼女は僕の無意識に出た言葉の違和感にすかさず突っ込んできた。

「まぁ・・・特に意味はないよ」

「とにかくありがとう」

 僕は彼女と話している違和感に耐えられなくなり、早々に話を切り上げその場を後にした。最近はまともに会話してなかったんだからこんなもんだろ。そう開き直って映画館に向かった。


 映画は何者でもない無色の僕を何者かに染めてくれる気がした。約二時間はその世界観の何者かになれる。映画の登場人物に無駄なキャラはいない。通行人でさえ「通行人」という役が与えられている。自分の役割や居場所は自分で見つけ出さないといけない現実と違って、そんな世界が羨ましかった。

 映画の主人公は、自分の考えを自由に伝え、否定されても最後には理解され、堂々と生きていた。でも、僕はどんな映画を観ても主人公と自分を重ね合わせられなかった。リアルな人生に主人公補正というものは存在しない。間違った道に進んだとしても、一人では気づくことなく進み続けることになる。映画にはもちろん原作があり台本がある。結末も決まっている。そう考えれば映画が始まった瞬間から主人公の人生は結末に向かう一本道だ。結末がハッピーエンドなら羨ましいかもしれない。でも、そうでなければと思うといたたまれない気持ちになる。


 目の前でエンドロールが流れている。今日は全く映画に集中できなかった。約二時間の間に何度も大学での出来事が頭をよぎった。あの時の自然な笑顔に一瞬で彼女の世界観に飲み込まれそうになった。いや、待てよ。ただ落とした手帳を拾って渡してくれただけのことを何度も考えて馬鹿みたいだ。映画だったら道端でばったり会って恋にでも発展するんだろう、と妄想に突っ込みを入れながらまた妄想を膨らませそうになった。

 とりあえず帰るか。


 今考えてみると、この日から僕の日常が日常でなくなりつつあったのかもしれない。



《崩壊》


 大学はいつも騒がしい。一人で向かう教室までの道は妙に長く感じる。自然と足元を見ながら歩くようになる。

 あれ、僕の左手を誰かが握っている。初めての感覚に戸惑いながら左を向いた。昨日の彼女がこっちを見ながら微笑んでいる。雑音に感じていた他人の会話も薄れ、無音になった。

 ・・・夢か・・・ピピッピピッ・・・・アラームが鳴り響いている。頭が痛い。

「最悪・・・」

 最悪ではないけど自分のプライドが許さなかったのか、でかい独り言にまた恥ずかしくなった。


 遅刻寸前だった僕は、走って教室に向かった。相変わらず教室には学生がたくさんいる。いつもの席は空いている。決まった座席もないのに、わざわざ前列に座る真面目な大学生なんてほとんどいない。僕の性格は真面目とは程遠いはずだ。でも、捻くれた性格を理由にいつもの前列に座る。誰とも目を合わすことなく席に着いた。いつも通りのチャイムと同時にいつも通りの退屈な授業が始まった。

「今日は何の映画観るの?」

 後ろの席から彼女の声がした。授業にさほど集中できていなかった僕の耳は聞き逃さなかった。意外に僕の脳は冷静で、漫画みたいに大声で授業を中断することもなく聞こえない振りをした。なんでそんなことをしたのか、無意識に自分の日常を守ったのかもしれない。

 特に誰かに期待も希望も抱かないことにしている僕は、些細な出来事も異常に感じてしまう。僕の何もない日常は何もないからこそ外的ストレスが少なかった。そんな自分が嫌になることも正直たまにあった。


 チャイムが鳴り、いつも通り一番に教室を出た。今日は特に予定はなく家に帰るだけだ。非日常になりつつある中、簡単に帰らせてくれるわけがなかった。

「なんで無視したの-」

 後ろから聞き覚えのある声がした。

「なんだよ」

 不愛想に振りむいた。

「今日も映画行くの?」

「行かないよ。今日は帰るだけ」

「名前なんて言うの?私はヒナタ」

 どんどん彼女のペースに飲み込まれていく。

「ソラ・・・」

 小声で名乗ってしまった。名前すら憶えられていないことに少しだけショックを受けた。

「やっぱいい名前だね。ソラはどんな映画が好きなの?」

 ずっと圧倒され、いきなり名前で呼んでくる彼女に少しイラ立った。彼女のコミュニケーション能力に対する嫉妬だったのかもしれない。

 「僕は映画は好きだけど嫌いだ」

 なぜこんなことを言ったのかは分からない。彼女にそう言うと不思議そうな顔をしながら僕の目を見ていた。

「ソラはやっぱ変わってるね」

 彼女はそう一言だけ言い残し、満足げに僕の前を歩いて行った。僕は、君の方がよっぽど変わってるじゃないか。と言いかけたが心に留めた。彼女の後ろをついて歩く形で帰路についた。


 真っ暗な部屋でパソコンと適当な動画を垂れ流しているだけのスマホだけがぼんやりと光っている。

 大学のレポートをしながら、彼女との会話が頭の中でまたリピートされていた。嫌な記憶を消すには時間がかかるし完全には消えない。それに比べて、パソコンの文字はバックスペースキーで跡形もなく消えていく。それは切なささえ覚えるほど一瞬だ。

「この度は皆様を不快にさせてしまい申し訳ありませんでした」動画配信者がスーツを着て、謝罪動画を出していた。気持ち悪い時代だな。自分たちが出した動画が賞賛より批判が上回ると、会ったこともない、顔も知らない画面の前の人に対して謝罪する。しかも、自分たちの謝罪を編集してアップしているのがほとんどだ。どうせ、録画ボタンを切った瞬間ネクタイを緩め、神妙な面持ちから笑顔にシフトしているのだろう。いつもこのような動画が流れてくるとスキップしている。

 悪いことをすれば謝罪をするのは当たり前のことだと思う。でも、最近モヤモヤすることが多い。今の自分に満足していないとか、余裕がないからと言われればそれまでだ。有名人が熱愛や結婚を報道されると、祝福よりも先に「誰々と結婚してほしかった」、「この時期に付き合うのは違うと思う」などマイナスな意見が注目される。

 テレビでバラエティー番組を見ていても、過剰なコンプラに嫌気がさす。芸人同士の容姿いじりや罰ゲームがどんどん消えていっている。これではお笑いが出来ないと思っている芸人も少なくないと思う。楽しい動画を投稿する。面白い番組を作る。よりも炎上しない動画を、番組を、と自然に移り変わっていっている気がする。などを考えているとレポートをする手が止まっていた。適当に終わらせて寝よう。


 僕は不満に思うと、とことん気になる性格だ。でも動画のコメント欄に書いたりSNSに投稿したりするのは性に合わない。ずっと頭の中で考え込んでしまう。それはそれでストレスになる。こんな自分も好きじゃなかった。

 この頃の僕は、全て世の中のせいにして、若者が不満を吐き出す環境がネットにしかないから、陰湿になり、負のスパイラルが生まれると思っていた。

 僕はベッドに寝ころびながら、ふと大学生活を振り返った。特に思いだす出来事もなく、ため息がでた。

 明日は休みだ。映画を観に行こう。今日話した彼女は理想の大学生活を送っているのかな。断片的にいろいろ考えている間に眠りについていた。



《異常》


僕の休日は大体昼頃から始まる。朝早く起きても一日が長く感じるだけだからだ。

 家で動画配信サイトを使って映画を観るか、小説を読んで過ごす。傍から見るとスマートな休日だが、毎回の休日がそれで、日常になると只の現実逃避に過ぎない。テストが近い時は、近所のカフェで勉強するのが僕の日常だった。


 今日はどうしても気分転換がしたかった。いつもはしない朝起きをした。いつもとは違う隣町のショッピングモールの映画館に向かった。

 ショッピングモールには家族連れやカップルなどで賑わっていた。僕は一人行動が得意なわけではないから、どうしても映画以外の時間を持て余してしまう。

 一人でいるだけで孤独と言われる世界、集団の価値観で自分の世界観が一気に否定される。だから、ただショッピングモールを歩いているだけで回りの視線が気になってしまう。 周りの目線を気にしながら生きるようになったのはいつからなのだろうか。

 早く映画を観たかったが、昼以降の枠しか空いていなかった。僕は小説を買ってカフェで時間を潰そうと、本屋に向かった。


「ソラ!?」

 嘘だろ・・・小説を選んでいると後ろから彼女の声がした。

「なんでいんだよ」

「ショッピングだよ」

 彼女は即答した。大学で見た彼女とは違う印象を受けた。なにが違うかはすぐには分からなかった。

「一人で?」

 僕は自分がされたら結構嫌な質問をした。でも、言葉を選びながら話せるほど余裕はなかった。

「私は2.3人の友達とわいわいショッピングしてそうなのに、一人なんだって思った?ソラも一人じゃん」

 微笑みながら話す彼女には僕の考えが見透かされているようだった。

「ごめん・・・」

 僕は咄嗟に出てしまった質問に対して謝った。

「いいよー。今日も映画観に来たの?」 

 樸=映画の印象が、もう付いてしまっている。

「そう・・・」

「私、一人映画はまだしたことないなー。何の映画観るの?」

 彼女は相変わらずどんどん質問してくる。

「最近話題の学生がタイムスリップして・・・みたいなやつ」

 他人に自分が見る映画のジャンルを知られるのはなんか恥ずかしい。

「最近話題のやつだよね!私もそれ観たいとおもってたの!何時の映画?」

「13時過ぎのやつだけど」

 まさかと思いながら答えてしまった。

「席余ってるかなー。急がないと!行くよ!早く!」

 彼女の勢いに負け、僕はトボトボと映画館に向かった。言葉を選びながら断る方がめんどくさいとも思った。

「ソラの両隣空いてるねー」

 彼女は微笑みながら含みのある言い方をした。

「大学と一緒だな、でも絶対隣はやめろよ」

「自虐ネタ?冗談も言うんだね。大学は後ろの席も空いてるけどねー。もう隣の席取ったよ」 

 彼女は笑ってくれた。

「は!?」

 変に冗談を言った恥ずかしさと、これから彼女と映画を観る状況に軽くパニックを起こした。僕の休日はもうめちゃくちゃで、映画や小説のような展開の速さだ。彼女を避ければ避けるほど彼女と関わる羽目になるなら、今日一日だけは彼女の行動に乗っかってやろうと開き直ることにした。

「映画まで時間あるし、お昼ご飯も兼ねてカフェでお話ししない?」

「うん・・・」

 彼女に誘われるがままカフェに向かった。

「私はカフェオレとサンドイッチ、ソラは?」

「同じので・・・」

 あくまで今は彼女に乗っかっている。注文も同じにした。自分の行動に何か理由をつけないと、この違和感に耐えられる気がしなかった。

 二人掛けの席に座った。いつもは荷物で埋まるはずの席に人が座っている。彼女はカフェオレを両手で持って温かそうに微笑んだ。

「よし、食べよっか」

 嬉しそうにサンドイッチを頬張る彼女を見て、なぜか僕はドキッとした。周りから見たら彼氏彼女なのかな、そんなことも考えながらサンドイッチにかぶりついた。特に会話もなく二人は黙々と食べ、カフェオレだけが机に残った。気まずい空気が流れた。そらそうだろ。これまで会話した覚えもない異性とカフェで二人きり。僕がコミュ力オバケなら彼女の笑顔をもっと引き出せるような話題で時間を埋めるだろう。あいにく僕はそうではない。映画までの時間をこのまま過ごせる忍耐力もない。一秒が一分に感じる。


「私実は・・・事故に巻き込まれて一回死んでるの」

 彼女は少し俯きながら話し始めた。彼女はどうしてこのタイミングで、僕にこの話をしたのか。この頃の僕にはわかるはずもなかった。



《告白》


僕は彼女の発言に驚きを隠せなかった。

「いきなり何の話だよ」

「ふふ、ごめん。事故のショックで一部の記憶が無くなっただけだよ」

 彼女は僕をからかうために大げさなことを言っただけだった。

「なんだよそれ。脅かすなよ」

 映画や小説で普段からフィクションに触れているせいか、いろんな想像を膨らませただけ無駄だった。でも彼女の体からあふれ出る悲しいオーラが消えた感じはしなかった。

「私ね、以前は友達が多くて、自分で言うのもなんだけどそれなりに人気者だったらしい。もしかしたら彼氏とかもいたのかなー」

 彼氏がいたら彼氏から連絡来るからわかるだろ。心の中で呟いた。

「その時の私は、多分自己中で、教室で馬鹿みたいに騒いで、自分が楽しかったらそれでいいと思ってたんだと思う」

 淡々と話す彼女はいつもより覇気がない。

「うん・・・」 

 僕はあいづちを打つのがやっとだった。

「事故以前の友達を名乗る子たちは話しかけに来てくれてたんだけど、うわべだけって感じがして上手く話せなかったの」

「記憶を無くす前の私は無理してたのかな?ソラは私のことどう思ってた?」

 いきなりの質問に僕は固まってしまった。そもそも彼女の話自体あまり理解出来ていない上に、質問の意図が分からなかった。事故により一部記憶がないことだけは分かった。

「気にしたことないかな・・・」

 とりあえず当たり障りのない返答をした。本当は昨日、苦手なタイプかもって思ったとか言えるはずもない。でも、授業で発言したり、目立っている彼女は昨日の一回しか見ていない気がする。余計に彼女が以前とどう変わったかは僕にはわからない。

「そっか・・・」

 顔には出していないけど、彼女の声は一瞬悲しげだった。

「そもそも何で僕にそんな話するんだよ」

 いくら顔見知りでも、まともに会話するのは今日が初めてだ。親友や家族にしかしなさそうな話をする彼女に疑問を抱いた。

「ソラは人に流されてない感じがして、大学生ノリのうざい絡みとかしなさそうで、人にあまり干渉しなさそうだったから」

 人に干渉しなさそうっていうか、干渉するような友達がいなかっただけだ。いつも一人でいる僕を、プラスなイメージで観察されていたことが、なんとも恥ずかしかった。それに、しなさそうって自分のイメージだけで話すにはリスクがありすぎないか。と不思議に思った。

「そうなんだ・・・」

「あの時、ソラの手帳を拾って、チャンスだ!って思ったの」

「いざ話しかけたら思った通りそっけなくて、目すら合わせてくれなかったねー」

 彼女は微笑みながら言った。いつになったら彼女から悲しいオーラが消えるのだろうか。

「そうだったっけ?」

 あの瞬間彼女の目すら見れてなかったんだ。初めて知る事実に自分の不甲斐なさを感じた。

「普通大学生で異性から話しかけられたら、青春到来か!ってちょーっとは思うでしょ」

 彼女は冗談交じりに言った。他人に期待しない僕がそんなこと思うはずがない。彼女はそれを知る由もない。

「でも、実際に話しても思ってた通りの人だったよ、よかった・・・」

「で、僕はこの話を聴いてどうしたらいいの?」

 僕が彼女にとって話しやすい存在だったことは良いことだが、話の根幹が分からないまま聞くには、観たことないアニメの映画に一時間遅れで入るくらい精神的に疲れる。

「ここからが本題なんだよ」

 その言葉を待ってましたと言わんばかりの顔で彼女は言った。やってしまった。僕はまんまと彼女の作戦にはまってしまったらしい。

「ソラは映画を観るのが好きだよね?」

「まぁ・・・」

「ってことはいろんな主人公や登場人物を見てきたと思うの。それってみんなよりすごい量の人間を観察してるんだって思って」

 たしかに僕は、映画を観る時は登場人物になった気でいた。でも、そんな風に考えたことはなかった。

「私、記憶を無くしてから改めて人に興味を持って、人間観察ってやつ?をしてみたの」

「そしたら、なんか難しいんだけど、すごいモヤモヤしたの」

 彼女は眉にしわを寄せながら話した。必死さは伝わった。

「どんなことがモヤモヤした?」

 僕もこの頃世の中に不満を抱いていた分、彼女の話に惹かれるものがあった。

「世の中変だよ!」

 彼女は僕の質問に食い気味に超絶ストレートに今の僕に刺さる言葉を放った。

「私は一回死んでるから、自分の中では人生二回目って感じがして何でもできる気がするの。だから、今の世の中を変えて私自身が生きやすい世の中をつくりたい」

 凄く傲慢な話だ。でも、その言葉に悪意や自分勝手さは無いように感じた。

「ソラには、上手く言えないんだけど、アドバイスをしてほしいの」

 僕の前にいる彼女はどんな政治家の言葉より僕の心を動かした。

「ごめん・・・今は君の力になる自信がない・・・」

 僕も今の自分を変えたいと悩んでいた分、彼女の本気さを考えると一瞬の感情だけで了承はできなかった。

「でも、少し考えさせてほしい」

 でも、僕はこの時、何かのチャンスだと思ったのか、反射的にこの言葉を付け加えた。

「え!?分かった」

 彼女は少しほっとした顔をした。

「あ、そろそろ映画館に向かった方がいいね」

 彼女は思い出したかのように時計を見て立ち上がった。僕は正直こんな話をした後、映画に集中できる気がしなかった。

 あんな告白をされたが、そもそも僕に出来ることなんてあるのだろうか。後ろから見る彼女の足取りは凄く軽く感じた。僕も誰かに悩みを打ち明けたらあんな風にスッキリするかもしれない。いろいろ考えている内に映画館に着いた。

 

 薄暗く、目の前にはエンドロールが流れている。


 予想通り全く集中できなかった。二日連続で映画に集中できなかったのは初めてだった。

「出よっか。出口混みそうだし」

 普段はエンドロールを最後まで見てから出る。映画に集中できていたわけではないので彼女に賛成した。

「すっごい面白かったね!」

 今すぐにでも映画の感想会を開きたそうな目でこっちを見ている。

「そうだな・・・」

 正直一人でもう一度見直したい。

「この後まだ時間ある?」

 エスカレーターに乗りながら彼女は聞いてきた。

「大学のレポート終わってないし帰ろうかな」

 レポートは昨日終わらしたし、帰っても特にすることはない。でも、今日の出来事を一人で整理したかった。

「そっか、じゃあ大学で映画の話とこれからの話をしようね」

「じゃあ私は買い物してから帰るからここでバイバイだねー」

 彼女は判断が速いのか、せっかちなのか、いつもいきなり現れてはいきなりいなくなる。

「そうだな」

 僕は適当に返事をして彼女を見送った。


 帰り道の記憶はほとんどない。玄関を開けた瞬間、これまでに感じた事のない疲れが身体中を襲い、床に倒れこんだ。今日は気分転換の予定だったはずが観た映画より映画のような一日だった。頭の中を整理するつもりがそのまま眠ってしまった。

 目が覚めるとすっかり外は暗く部屋は静寂に包まれていた。大学に入って以来、遊び疲れて家に帰った記憶がない分、それに似た感じで少しスッキリしている自分がいた。

 彼女が言った「世の中変だよ!」の言葉が頭の中をリピートしていた。内心、自分を変えたい僕と世の中を変えたい彼女の出会いは僕の人生の転機なのかもと、期待していたのかもしれない。

 でもどうすれば、彼女の思う「生きやすい世の中」になるのか。僕と彼女だけで変えることは出来るのか。ご飯を食べながら、お風呂に入りながらずっと考えていた。明日さりげなく彼女に具体的にどうしたいかを聞いてみよう。

 ん?何とも言えない違和感がある。自然に明日彼女と話す予定を頭の中で立てていた。あれだけ彼女の存在は自分の日常では異常な存在だったのに、もう浸透してきている気がした。いくら考えてもこの違和感は解消できそうになかったから、今日は寝て明日の自分に任せることにした。



《変化》


カーテンの隙間からまっすぐに伸びた光が壁の一点を照らしている。

 いつも通りの朝がきた。いつも通り準備をした。いつも通りの時間に家を出た。 いつも通りの席に座った。ここまではごくごく普通だ。もちろんこの普通は跡形もなくぶち壊れていくことになる。


 彼女は教室に入ると辺りを見渡した。僕を見つけると、待ち合わせていたかのように僕の隣に座った。

「ソラおはよう。眠いねー」

 あくび交じりの声で言った。彼女のあくびがうつりそうになった。

「おはよう」

 とりあえず返事はしておく。授業中は特に話しかけられることはなかった。いつもならつまらない時間が只々過ぎるだけだが、彼女が自分の意志で隣に座っていることが気になって時間が長く感じた。

「お昼一緒に食べようよ」

 チャイムと同時に話しかけてきた。

「急になんだよ」

 彼女の突拍子もない発言にはすでに慣れ始めていた。

「急じゃないよ。映画の話する約束したじゃん」

 約束した覚えはない。映画の感想も特にない。僕はこれからの話に興味があった。

「ほら、行くよ!」

 僕の返事を待たずに彼女は立ち上がった。

「わかったよ。でも学食以外で頼む」

 だるそうに返事をした。学食なんて一日中絶え間なく学生が群がっている場所だ。そんな場所で彼女と二人きりで話すイメージがつかなかった。

「いいよー。大学の近くのうどん屋さんに行こー」

 彼女の臨機応変な対応力には圧巻だ。僕はしぶしぶ立ち上がった。うどん屋に着き、半個室の席に座った。ゆっくりできそうな雰囲気に懐かしささえ感じた。

「私、ここのきつねうどん結構好きなんだよねー」

「ソラはなににする?」

「美味しそう・・・」

 ぼそっと独り言が出てしまった。それを聞き逃さなかった彼女は微笑みながらこっちを見ていた。恥ずかしくなりメニュー表で顔を隠した。

「鍋焼きうどんにしようかな」

 写真付きのメニュー表は初めて来る人からするととてもありがたい。一人暮らしの僕はお店に来ないとなかなか食べられない手の込んだ料理が魅力的に感じた。

「選ぶと思った!鍋焼きうどんもいいねー」

 彼女は机の上の呼び出しボタンを押して、自分のきつねうどんと僕の鍋焼きうどんを頼んだ。

「ソラって一人暮らし?」

「うん」

「自炊とかするの?」

「まぁ割と」

 当たり障りのない会話でもまだぎこちなく感じた。

「そういえば、前の映画面白かったねー」

「うん」

 ほとんど覚えていないなんて言えず小さくうなずいた。

「この前、映画の話とこれからの話って言ってたけど、これからの話ってなに?」

 これ以上映画の話をされても受け答えできる自信がなかった。

「あ!私の力になってくれるの?」

 そういえば彼女には「少し考えさせて」と曖昧な返答をしたことを思い出した。

「内容によるかな」

「えーずるいなー。前も言ったけど、大まかにいうと生きやすい世の中をつくりたいって話だよ」

「その話深く聞かせてくれないかな?」

「え?聴いてくれるの?でも、この後大学の空き教室で話そー」

「今はソラとおいしいごはんを食べながら、普通の話がしたいなー」

「わかった」

 彼女なりに話すタイミングがあるのだろう。この時には、彼女と会話するだけではストレスを感じなくなっていた。

「ソラっていつから映画観るようになったの?」

「小さい頃からちょくちょく観てたけど、本格的に観だしたのは大学に入ってからなのかな」

 改めて考えると映画に興味を持ったのがいつからか思い出せなかった。曖昧に答えた。

「意外だね。もっと前から好きなのかと思ってた」

「あ、好きではないのか!?」

 彼女は前の些細な会話を覚えていたのか、すぐに訂正した。

「まぁそうだな」

「好きになれない理由とかあるの?」

「あるけど、言葉では説明しにくいから今度映画観た時に話す」

「あれ?しれっと私を映画に誘ってくれたの?やるなー」

 彼女は少し前のめりで微笑みながらからかってきた。

「言葉の綾だよ」

 焦った。しっかり考えてから言葉を選ばないと、すぐ上げ足を取られる。

「そういうことにしてあげる。でも、また誘ってね」

「わかった誘うよ」

 二人とも食べ終わり大学に戻ることにした。人と会話しながら昼食を食べたのは何時ぶりだろう。懐かしい感覚だった。


「ここの教室使ってなさそうだね」

「よーし、ソラには私の話を思う存分聴いてもらうことにするかー」

 僕が教室の席に着くなり彼女は話し始めた。今のままでは生きにくいだの権力者はどうだの今の政治がどうだの、身の回りのことから手の届かなそうな大きなことまで、手あたり次第の愚痴を僕にぶつけた。それを只々受け続けるだけの時間は不思議と退屈ではなかった。寧ろ途中から鏡に反射する僕が話していると錯覚しそうなほど共感できた。教室の前を通る学生が彼女の話を聴いても只の愚痴にしか聞こえないだろう。でも、正面に座っている僕からすると彼女の説得力や覇気は尋常ではなかった。一瞬にして自分の世界観に引き込めるのは才能だと思った。

「ソラは話聞くの上手だね」

 一通り話し終えると彼女はそう言った。僕はただ聞き入っていただけだ。

「そんなことない」

「でも、いっぱい一人で話しちゃったね。ソラも何か話してよ」

 彼女は話過ぎたのが恥ずかしくなったのか、顔が少し紅潮していた。そして僕に話せと彼女は椅子に座り頬杖をついた。

「人は変われるかな?」

 なぜこんなことを聴いたのか、意味は、僕にもわからない。でも今聞きたかった。今日の僕はおかしい。何を話すにも脳を経由せずに口が動く。そんな癖はないはずなのに。

「変われるよ。とは言えないかな」

「私は一回死んだから、たまたま変わることができたけど、何も考えずに変われるって即答できる人はただの偽善者だと思う。普通は変われないよ」

 僕の変な角度からの急な質問に、彼女は意外と冷静に、鋭く、僕からすれば的を得た返答をした。それに記憶喪失より一回死んでるの方が彼女には合ってる気がしてあえて触れなかった。

「そっか、ありがとう」

「なんでお礼?私結構ストレートに答えちゃったよ?」

「いいんだ」

「それで結局僕は君に何をすればいい?」

 彼女の意見を聴いて僕は変われる気がした。心が少し軽くなった。僕の日常を壊してくれた彼女には存分に僕の変化に付き合ってもらおうと思った。彼女は生きやすい世の中をつくる。僕は自分を変える。案外相互利益はしっかりしていた。

「どうしたの?急に手伝ってくれる気になった?」

 流石の彼女も驚いていた。今まで素っ気ない態度だった僕が手伝う気になるとは思っていなかったはずだ。

「いや、何となく」

「なにそれ、でも嬉しい」

「じゃあ、まずは君って呼ぶのをやめてほしいな」

 一つ目のお願いはとても簡単なことだった。

「じゃあ上の名前でいいか?」

「私はソラって呼んでるんだからヒナタでいいよ。もし私が結婚したらソラはまた私のことをなんて呼ぶか悩むでしょ」

「なんだよそれ、じゃあヒナタで」

 彼女の冗談に不覚にも笑ってしまった。おかげで初めて下の名前で呼ぶ時の抵抗感がなかった。

「僕も少しだけ愚痴っていいか?」

「もちろん!」

 僕は今不満に思っていることを話し始めた。彼女ならなぜか理解してくれると思った。最近の報道のこと、配信者のこと、世の中への不満。彼女は一言も発することなく、優しくうなずきながら聴いてくれた。

「やっぱソラはソラだね」

 彼女は僕が話し終わるとそう一言呟いた。どういう意味か分からなかった。思う存分話すと少し恥ずかしい。彼女も同じ気持ちだったのか。

「連絡先交換しようよ。メッセージで今後の作戦も練れるしね!」

「わかった」

 彼女と連絡先を交換した。二人とも喋り疲れたのか、自然と帰る流れになった。

 僕はこの日の何となくな会話が後に大きな変化となり、日々の一言一言が、無数に枝分かれする人生の選択肢だということに気づくことになる。



《前進》


もっと早く行動すればよかったと思うことは人生において多々ある。でも、やるべきことがみえた時こそ最速で、過去を悔やむ必要はない。その日から努力すれば決して遅くはない。その日その時行動を決意した自分をもっと褒めよう。そう考えるようになったのもこの頃だった気がする。彼女と話すようになってから気づかされる事がたくさんあった。


 彼女とはあの日を境に、大学では会話し、休みの日はメッセージを送り合う程の関係になった。教室で、彼女が僕の隣に座るのは当たり前になっていた。

「今日もいっぱい喋っちゃったねー」

「そうだな」

「そうだ、明日休みだし映画行こうよ」

「いいな」

「じゃあ決まりだね。いつものショッピングモールに集合ね」

 こんな会話をするなんて前の僕には想像もつかなかっただろう。でも、今はこれが僕の日常だ。


 次の日、予定通り二人はショッピングモールに集合した。観る映画は彼女が選んだ。ホラー映画が観たかったらしい。もうすでに映画を楽しむことが出来るようになっていた。

 大音量の音楽と共にエンドロールが流れ始めた。映画館を出ていく人もちらほらいた。

「出る?」

 彼女とはあれから何度か一緒に映画を観ている。エンドロールが流れ始めると、彼女は決まって出るか確認してくる。

「今日は最後まで観ても良いか?」

「わかった」

 これまでとは違って最後まで観ることにした。そろそろ僕の悩みというか、考えを話そうと思った。聴いてもらう上で、まずは最後まで観てほしかった。彼女は少し微笑み、再び深く腰掛けた。

 ぼんやりと明かりがついた。二人とも大きく深呼吸をした。

「よし、行くか」

「うん!」

「少しカフェでゆっくり話さない?」

「いいよー」

 二人は前回と同じカフェに入り同じ席に座った。前回と違うのはサンドイッチがあるか無いかだ。しかしそこには外見では分からない大きな変化があった。

「さっきの映画どうだった?」

「凄く怖かったけど、おもしろかった。でも、ホラー作品に出てくる人って、ちょくちょく変な行動するよね」

「変な行動って?」

「絶対黙って隠れた方が良いのに、大声出してすぐ殺されるじゃん。それに、怖がってるのに怪しいところに自分から行くじゃん。なんでーって思ってしまう」

「確かに思ったことあるけど、全員が隠れるの上手かったり、イベントに参加しなかったら話し進まないよ」

「確かに映画だもんね」

 めちゃくちゃ正論を言ったが、僕もホラー作品を見始めた頃は同じことを思っていた。敵に攻撃するとき、大声を出しながらだと気づかれるだろ、とか。でもそれはリアルであってフィクションではない。そこの線引きはすごく重要なことだと思う。映画を楽しむにはフィクションを知らなければ楽しめないことをすでに知っていた。でも、彼女が同じ感性を持っていることに嬉しさを覚えた。


「ヒナタはエンドロールを最後まで観てどう思った?」

「何その面白い質問、映画の感想じゃなくてエンドロールの感想は聞かれたことないねー。只々、この映画にはこんなに多くの人が関わっているんだなー。とか。自分と同じ名前の人いないかなーとかしか思わないよ」

「普通はエンドロールに対して、そこまで深く考えないよな。でも、僕が映画を好きになれない理由がそこにあるんだ」

 僕はエンドロールのせいで映画を好きになれないことを彼女に話した。映画は好きだけどエンドロールは嫌いだ。どれだけ映画の世界に入り込んでも、一瞬にして現実に引き戻される。遊園地の帰り道のように。終わりを突き付けられている感覚になる。別れを切り出す恋人の表情のように。でも、毎回エンドロールは最後まで観てしまう。何か答えが見つかる気がして。

「やっぱりソラはすごいね。私そんな風に考えたことないもん」

「でもね、今の話を聴いて思ったこと言っていい?」


「エンドロールはきっと次の物語へと続く始まりの合図なんだよ」

 初めてされた質問なのに、的確な回答をする彼女に感銘を受けた。僕一人ではこの考えは出なかったと思う。普通映画一本一本を自然と別物として解釈する。でも、観る映画を決めるのは自分の判断だ。次観る映画を決めるのも自分の気持ち次第で変わる。映画と映画の架け橋は自分自身だった。彼女の発言と僕の解釈が一致しているかは分からない。でも、永年解けなかった謎のヒントが見つかった気がした。

「なんか言ってよ」

 真剣な顔で黙り込んでる僕に、少し声を震わせ、何故かメニュー表で顔を隠しながら言った。変なこと言ってしまったと照れていたんだと思う。

「ヒナタに話してよかった」

 この言葉に尽きる。自分の話を正直に話してくれる彼女だからこそ、相談することが出来た。

「嬉しいこと言ってくれるねー」

「そろそろヒナタの望みを叶えるために行動しないとな」

「何かいい案あるの?」

「いい案かどうかは分からないけど、行動するのは早い方が良いと思って」

「ちゃんと考えてくれてるだけで嬉しいよ」

「明日から始めるか。なんか明日からって言ったら先延ばしにしてる感あるな」

「そんなことないよ。今日は決断した日だからもう始まってるよ」

「その考え少し甘くないか?」

「この先人生長いよー。ちょっとしたことでも褒めないとやってけないでしょ」

「それはそうだな」

 彼女のポジティブな性格には人を励ます力があった。

「明日世の中の変えたいところを具体的にまとめてきてほしい」

「おっけい!じゃあ今日は少し早いけど解散しよっか」


 僕と彼女の間には一つ約束したことがある。一方が今の環境に満足しても、両方が生きやすい世の中になるまで、お互い諦めないこと。途中で投げ出さないこと。これを破ってしまうと全部がなあなあになって周りの大人と変わらないと思った。自分たちに何が出来るか未来のことは分からない。仮に失敗したとしてもやり切った事実は残したかった。

 僕は家に帰ると毎回彼女との会話を整理することにしていた。最近は今まで使っていなかった脳が活発に頑張ってくれているせいか、頭痛が増えた気がする。でも、通分は脳を休ませられる気がしなかった。



《挑戦》


学生の頃は、結果は気にせずチャレンジすれば良いと言われる。大人になると結果を出すのに必死でチャレンジしなくなる。出来なくなる。子供は夢を見る。大人は現実を見る。夢を見れなくなると大人なのだろうか。世の中を知ってから夢を見てもいいじゃないか。そのほうが自分に合う仕事ややりたいことが出来るはずだ。

 専門学校に入ったからといって専門職に就かなければ意味が無いのか。人と関わり人格が形成される。関わる人が変わると自然と性格も変わり考え方も変わるだろう。大学生で成年とされる十八歳を迎える。成人になる過程はまだ学生なのだ。職能を開発している途中といえる。中高で将来の夢を持っているのは素晴らしいことだが、決めきるには早過ぎないか。

 僕は彼女に考えを共有し、彼女もまた、思っていることを伝えてくれた。

 世の中すでに権力を持った者にしか決定権はない。権力者からすると大衆の意見なんて聞いたふりで十分なのだから。生まれた瞬間にある程度の地位が決まってしまう時点で人生運ゲ―と化してしまう。

 今この国は大衆の不満を聴こうともしない。国ですら救うべきものを見誤っている。その下に就く者は指摘することもなく、自分の地位を守ろうと必死だ。いくら若者が声を上げても次はメディアにねじ伏せられ思いが伝わることはない。もちろん大衆の声をネットで代弁してくれる者もいる。コメントで賛同する者もいる。しかし、実際に行動しているのは投稿者だけだ。

 正直働いている人が声を上げるのは厳しいものがある。働いているはずが、いろんな手段でお金を搾取される世の中だ。だからこそ若者が何かしらの行動で自分が働く未来を変える必要がある。

 彼女は僕が思っているよりも深く考えていた。彼女の熱弁には懐かしいものを感じた。

「真面目に生きている人ほど損する世の中になってしまってるよね」

「僕もそう思う。不真面目な人を見るたびに損した気持ちになる」

「不真面目で不誠実に生きている人は自分の私利私欲で動くよねー。まじめな人がそれを見ると疎ましい反面、羨ましいって思ってしまうよ」

「でも僕は気づいたことがあって、不真面目で不誠実な人には唯一出来ない事があるんだ」

「え!?教えてほしい」

「そういう人たちって周りを幸せにできないんだ。だから周りも幸せにできる真面目な生き方ってかっこいいって思う」

「めちゃくちゃいいこと言うじゃん!一つ私の悩みが今無くなった!かっこよく生きよっと。メモメモ」

「からかうなよ」

 語ってしまってすごく恥ずかしかった。

「ごめんね。でも良いと思ったのはほんとだよ」

「てか、ソラも私も抱いてる不満の規模が大きいねー」

「そうだな。でも二人のベクトルは一緒な気がする」

「だよねー。二人でなんとかできる問題なのかな?」

「すぐに解決するのは難しいな。ただ、僕らが変えたいのは今じゃなくて未来だからチャンスはあると思う」

「ソラならそういってくれると思ってた」

 僕には謎の信頼があるらしい。どうすれば僕らの未来を変えられるかを話し合った。

 明るい未来を作るには国の協力は必須だ。しかしながら学生二人の意見で都合よく動いてくれるはずがない。犯罪を犯して訴えるのはもちろん論外だ。

「正直に言うと、僕たち二人だけじゃ、世の中の仕組み自体を変えるのは難しいと思う」

「私も話しながら薄々思ってたよ。どうしようもないことってあるもんね」

「だから、僕たちは大衆を動かすことをメインにしようと思う」

「どうゆうこと?」

「僕たちの意見を発信して、鼓舞された人がいれば、きっと行動してくれると思う。他力本願な作戦だけど、僕らにはまだ知識やお金がなさ過ぎる」

「悔しいけど、それで未来が変わる可能性があるなら頑張りたい」

「ヒナタはSNSに詳しい?」

「投稿はあまりしないけど見るようで使うくらいかな」

「でも、今流行りのSNSくらいならわかるよ!なんせJDなんで!」

「ブランドになるのはJKだけだぞー」

 冗談を言い合えるほど気持ちはリラックスしていた。でも、真剣さは忘れていなかった。

「そのSNSを使って僕らと同じ思いの人を集められるかな?」

「文章で投稿してもいきなり拡散されるかは分からないけど、丁度いいSNSがあるかも!」

「教えてほしい」

「運よく最近リリースされて話題沸騰中なんだけど、投稿主が適当に議題考えてルームを作製するの」

「そしたらその議題に興味がある人がルームに入ってネット上で会議を開けるってやつ」

「それだったら僕たちの考えに興味がある人達だけ集められそうだな。やってみようか」

 彼女に頼み、早速僕のスマホでアカウントを作成した。

「スマホ新しくしたの?」

「どうしてわかった?」

「あ、初期の壁紙だから面白いなーって思って」

「ほっとけよ。去年スマホを変えて壁紙はそっから変えてない」

「そっかー。アカウント作れたよ」

 家でもログインできるようにパスワードは共有した。最近出たアプリってのもあり、すごく話題になっているらしい。

「そういう議題で投稿する?」

「ストレートに今の世の中を変えたいと思うかどうかにしよう」

 リリースされたばかりで、犬派か猫派、朝ご飯は米かパンなど、チープな話題しかなかった。そこで僕は本格的に会議に興味がある人がいると踏んで、少し重めの議題にすれば目立つと考えた。

「私もそれでいいと思う」

「とりあえず投稿したから、明日結果を見てみよう」

「そうだね」

 僕たちは一気に話が進んだことにとても満足していた。帰り道は彼女と全く関係のない話をしながら家に帰った。


 家の用事や大学のレポートを済ませ、ベッドに横になった。彼女からメッセージが着ていた。SNSを見てほしいとのことだった。予想通りか、運が良かったのか、とりあえず百人に設定していた定員が埋まる勢いで参加人数が増えていた。それに、圧倒的に変えたい派が多くただの愚痴大会と化していた。

 今がチャンスだと思った。投稿主のコメントは会議中の人に目立つように表示される仕様だ。参加者がコメントを見逃すことはほとんどない。僕は自身が本気で世の中を変えたいと思っている旨を正直に書いた。そして協力してほしいと訴えた。これが伝わるかは分からない。明日になれば参加者がゼロになっていてもおかしくはない。今は信じることしかできない。彼女にコメントを投稿した理由だけ説明して、スマホを伏せた。不安なのか、興奮しているのか、心臓の鼓動が速く、いつもより入眠に時間がかかった。

 朝目覚めたら、今日よりもほんの少しだけ彼女にとって生きやすい世の中になっていれば・・・と自然に願うようになっていた。



《期待》


 いつも通りうるさい目覚ましで目が覚めた。違和感がある。今日は休みだから目覚ましが鳴るはずがない。違和感の正体はすぐにわかることになる。目覚ましではなく彼女からの着信の音だった。モーニングコールを頼んだ覚えはない。それに、目覚ましと思って速効切っている手前、すごく気まずい。寝ぼけ頭で考えている内に、また電話がかかってきた。謝罪の意味も込めてワンコールで出た。

「おはよー。切ったでしょー」

「おはよう。わるい」

 彼女は珍しく声から眠気は感じられなかった。

「まだ見てないと思うけどアプリ開いてみて」

「私まだメイクしてないから切るねー」

 速効切られた。数十秒の電話で目が覚めた。アプリを開くとフォロワーが千人を超えていた。昨日のコメントに賛同する意見も多く見られた。それだけ今の環境に不満を抱いている者が多いという事が証明された。嬉しかったが悲しかった。最近は物価も高騰したり、マイナスなニュースが多かった。それがさらに大衆を怒らせ、誰しもが不満をぶちまけるところを探していたのが後押しになったのかもしれない。


 ここからは時間の勝負だと思った。SNSは話題が移り変わりやすい。熱いうちに鉄を打つのが鉄則だ。彼女とすぐに集まった。

「休みなのに呼び出してごめん」

「全然いいよ!凄い伸びだねー」

「僕もびっくりしたよ。改めて聞くけど自分の人生をかけて行動しても何も変わらないかもしれない。それでもこの先、進み続ける自信はあるか?」

「急にどうしたの?当たり前じゃん!てか、もともと私のお願いでしょー」

 確かに、もともとは彼女が生きやすい世の中をつくるのが目的だった。いつの間にか僕の目標になっていた。僕が彼女の人生を変えるかもしれないと思うと確認しておきたかった。自信満々に即答してくれる彼女を誇らしく思った。

「ソラは何十年か先の未来にタイムマシーンはあると思う?」

「なにそれ、なぞなぞか?」

「真面目に答えてよ」

「あってもおかしくないんじゃないか」

「私はあるって信じたほうが何でも自信を持てるって気づいたの」

「タイムマシーンと自信に何の関係がある?」

「私は一つだけすごい後悔していることがあるんだけど、未来にタイムマシーンがあったら過去に戻って、その後悔をどうにか消そうとすると思うの」

「でも今のところ未来の私からの暗示?みたいなものがないってことは、今のまま進んでも問題ないんだって、今の行動は間違ってないんだって思えるの」

「ヒナタってほんとポジティブだよな。なんか安心したよ」

 彼女は嬉しそうに照れた。

「話をもどそうか。早速僕たちの未来に向けての作戦を練るとしよう」

「うん!」

 僕たちはアプリで会議を開きながら、次に何をすればいいか考えた。数日でフォロワーもみるみるうちに増えていた。まず初めにみんなの不満をリストアップすることにした。次々と書き込まれていく不満を二人で集計するのは骨が折れる作業だった。その間もフォロワーは増え続けた。まとめたものを確認すると、僕たちの不満と大衆の不満に相違はなかった。不満の多いものから順番に解決策を考え意見をまとめ、投稿した。頑張りが伝わったのか賞賛のコメントで溢れた。

 しかしながら、待てど暮らせどフォロワーの中から自ら行動し始める者は現れなかった。少し期待していた。僕らの行動がきっかけで、世の中が動き始めることを。権力も地位もお金もない僕たち若者には発想力や想像力があった。親世代の方達も自分の子供の未来を守るための使命感があった。孫を守るご老人の意見もあった。そこには先人の知恵があった。でも、行動力は乏しかった。いくらコメントが多くても付加価値に過ぎない。そう学んだ。

「行動してくれる人なかなかいないね」

「そうだな。やっぱ先人切って前例にないことをするのは勇気がいるのかもしれないな」

「難しいね・・・」

「僕たちもみんなの意見をまとめただけで、行動したつもりになっていたのかもしれないな」

「フォロワーとか増えてたからちょっと期待しちゃったね。期待してる時点でダメだったのかな」

 浅はか過ぎた自分たちに少し落胆し、反省した。

「規模の大きいことを自分たちで変えるにはまだ力が足りないな」

「少し段階を飛ばし過ぎちゃったね」

「次は僕らが自身が出来ることを探そうか」

「また一から考えよ。でも、不思議と前よりちょっと生きやすいかも」

「世の中まだ何にも変わってないぞ?」

「私のお願いをよーく思い出してみて」

「あ、私が生きやすい世の中をつくりたいって言ってたな。勝手に世の中を変えればヒナタが生きやすくなると思ってた」

「世の中が変わってほしいってのは私も本気で思ってるよ。だから今回の行動は全然無駄じゃなかったし、これを通して生きやすくなった。少し動き始めたよ」

「それは良かった」

 僕も彼女と試行錯誤してる瞬間が楽しかったと心で思った。

「今日はおいしい夜ごはんが食べたいな」

「僕らなりに頑張ったし、どっか食べに行こうか」

「うん!ナイトショーとかで映画観れないかなー。気分転換したいね」

「ご飯食べながら調べるか」

 彼女と関わるようになって、それなりの信頼関係が構築されていた。なにかの目標に向けて二人で行動することで、自分たちの存在意義を証明しようとしていたのかもしれない。


 自転車で大学から少し離れた、彼女のおすすめの店に行くことにした。外はとても寒く雪が降っていた。僕らは少しの達成感と少しの満足感で口数が多かった。

「前から車来たから気を付けてね」

 道は少し狭く、僕らは車が通りすぎるのを待った。僕は前からくる車のハイビームをもろに受けた。その瞬間途轍もない頭痛に襲われ、自転車から崩れ落ちた。自転車が倒れる音を聞いた彼女は僕に駆け寄った。彼女は僕の名前を何度も何度も呼んだ。意識が遠のく中、車が真正面から走ってくる映像が頭の中をリピートしていた。空から降る冷たい雪とは別に、少し暖かい水が頬に落ちてきた。前にもこんなことがあった気がした。無音になり、目の前が真っ暗になった。

 


《記憶》


遠くからまた僕を呼ぶ声が聞こえる。どんどん大きくなる。意識を失っていたのは数秒の事だったらしい。えらく長い間、暗い場所にいた気がする。彼女は僕を抱きかかえながら泣いていた。すごい力で僕の手を握っていた。


「ヒナタ・・・思い出したよ・・・ごめんね・・・」

「遅いよ・・ソラ・・・」

 記憶を無くしていたのは僕の方だった。ヒナタはさらに僕を強く抱きしめた。僕もヒナタを強く抱きしめた。


 ヒナタは僕の彼女だった。

 大学生になりたての樸は大学に期待し、誰彼構わず話しかけ、友達が多いふりをしていた。でも、そこに期待していた大学生活はなく、次第に人と関わらなくなっていた。ヒナタもまた大学生活に期待し、落胆したうちのひとりだった。お互いに惹かれあうものがあった。朝が弱いヒナタのために僕は毎回席を確保していた。僕の左は彼女の定位置になっていた。

 自然と話すようになり、僕はヒナタに「もっと生きやすい世の中になってほしい」と話すようになった。ヒナタもまたそう思うようになった。一緒に映画に行くようになった。僕は初めて一緒に行った映画で「エンドロールが嫌いだ」と言った。ヒナタはその時は何も言えず、僕の話を真剣に聞いていた。

 僕はある日の帰り道、事故にあった。その日も雪が降っていた。事故後数日は記憶があった。でも、少し経ってから僕の様子がおかしくなったと聞いた。ヒナタは身近な人が記憶喪失になるとすぐに分かるんだよ、と教えてくれた。 

 全部思い出した。彼女との時間。彼女との思い出。一緒にいた時間は短いかもしれないが、とてつもなく貴重な時間だった。


 私はソラの全てを知っていた。

 いつからかソラは私を全く見なくなった。教室に入っても、ソラの左には荷物があった。私の席ではなくなっていた。悲しかった。苦しかった。私は無理に記憶を思い出させるのが怖かった。無理に思い出させようと、記憶のないソラに「私はソラの彼女だよ」と話しかけても、不振に思い、余計に避けられるのが目に見えた。何でもない関係になるのが怖かった。だから、もう一度初めからって思った。

 気分転換をするときは、隣町のショッピングモールに行くことも知っていた。映画までの時間は、その日に買った本をカフェで読むことも知っていた。だから、私はソラが手帳を落とした時、大げさにアピールをした。あの日は偶然ではなく必然だった。久しぶりにデートが出来るって思って、少しだけオシャレしたんだよ。

 私はソラが今まで話してくれたことを、私が思っていることのように話した。よく大学の帰りに行ったうどん屋さんにも連れて行った。いろんなきっかけを作った。でも、なかなか記憶は戻らなかった。家で何度も泣いた。毎日記憶が戻ることを願った。記憶を無くしたソラと関わるようになって、彼女には戻れないけど、新しい関係性が出来た。どんな理由でもソラと会えることが嬉しかった。少し生きる意味が見つかった気がした。このままの関係でも一緒にいられるなら。と思った。でも、寂しかった。

 ある日、私に「エンドロールの話」をしてくれた。泣きそうになった。ずっと考えていた。私の考えをやっと伝えることが出来た。ソラは「ありがとう」と言ってくれた。少しだけ、ほんの少しだけ、前のソラに戻った気がした。私はメニュー表に隠れて少し泣いた。

 

「ソラ・・・エンドロールは好きになれた?」


 僕はエンドロールが嫌いだった。でも、今ではエンドロールが大好きだ。どれだけ世界に迷っていても、必ず自分の居場所に引き戻してくれる。愛嬌はないが安心感がある。考えをまとめる時間をくれる。エンドロールにはそういう力がある。


 これが僕たちの物語。

 この物語を読んでいる未来の僕たちが住む世界は、少しでも明るく、一人一人が生きやすい、愛に満ち溢れた世界になっているだろうか。少しでも変わっていたらと今願う。


 彼女のエンドロールにはどれだけの名前が記されているのだろう。僕には知る由もない。僕のエンドロールには彼女の名前だけ記されていた。それで充分だ。それが僕の幸せだ。

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