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くすんだ星

 鎧戦──それは鎧装(ガイソウ) と呼ばれるパワードスーツを見に纏い闘う格闘技である。

 最近では各国の大企業も積極的にスポンサー登録をし始めており、多くの国際 大会も開かれる程だ。

 豪快な外見、直感的な操縦技術、自由度の高い改造……まさに観てもよし、乗ってもよし、創ってもよしという三拍子揃ったその競技性は、今や世界中で人気を博していた。


 何よりの人気の理由はその敷居の低さだ。ちょっとした機械知識と改造の腕さえあれば個人であっても用意に参加することができる。それどころか、ズバ抜けた操作のセンスや卓越した改造技術さえあれば、たとえ個人あっても上位にランクインすることも可能だ。俺自身、そういった少数精鋭のチームや団体、プレイヤーを何人も知っている。


世界をも巻き込んだ鎧戦旋風。俺は今、その真っ只中にいる。一エンジニアとして、そしてプレイヤーとして、今まさにこの熱狂の中心に立とうとしているのだ。これにさえ勝てば甲子園優勝、日本中の高校の中で我が高はトップというわけだ。


「さぁて、ひと暴れしますかっ!!」


 迎えた大将戦、チームメイトがつないだ襷を俺が無駄にするわけにはいかない。だが、お相手は未だ無敗の全日本どころか全世界のランキング1位の俺含め誰しもが憧れる「将軍」と二つ名が付けられた最強の選手だ。

 卓越した操作技術と鎧のカスタムセンスを兼ね備えており、勝てるかと問われても100 %イエスが言えない恐るべき強敵だ。去年も一昨年も将軍に挑み敗北した。

「今年こそ、その首取ってやる......!!」

 俺は静かに闘志を燃やし、武道場へ向かった。

 一一一一一一一

「おーい、パーツは届いてるかー?」

 高校卒業後、俺は普通に大学に進学し、学業もそこそこ、どちらかといえば鎧のメンテのバイトに明け暮れる毎日を過ごしていた。

「うっせー! 昨日一週間後に届くって言ったばっかじゃねえか! 何回同じこと言わせんだ!」


 勤め先のパーツ屋は高校時代に世話になって、それからずっと贔屓にしていた馴染みの深い店だ。ここはプロの競技プレイヤーというより、もっとカジュアルなプレイヤーたちを商売相手にしている為、広い客層、豊富な年代のプレイヤー勢に大いに親しまれている。


「はっはーん、そう言って裏に隠してるんだろ~?」

「バーカあるわけねえだろ! あったら既にお前に売り付けてるわ!!」


 そして何より、この店は何デモ屋的な面を兼ねているために、仕入れたパーツの販売だけではなく、鎧装そのもののメンテも請け負っているのが大きな特徴だ。元来から鎧弄りが好きな俺にはうってつけのバイト先だった。

 今日も今日とて、冷やかしに来るだけで何も買おうとしないオッサンの相手をしたり、壊れちゃったと泣きじゃくるクソガキのパーツを直してやったりと大忙しだ。


 俺の方で簡単に直せるモノならまだいい。たまにどうしてそうなったのか分からない程の、トンデモないぶっ壊れ方をしたパーツも運び込まれてくることもある。


 トラックに突っ込まれて、そのままロードローラーにも轢かれたような、もはや原型さえ留めていないような代物もザラだ。予算のない依頼に限って特にそういうのが多い。

 複雑な立体パズルを解くかのように頭を捻って、足りない部分はジャンクからちょっぱってきて組み合わせて、それでようやく修理できそうな難易度の依頼が、ぽんぽんと飛び込んできたりするわけだ。


「はぁ……毎度毎度よくもまぁこんなに激しく……」

 今、まさに俺の目の前にいるうっせえ常連なんかがいい例だ。いっつも俺が丹精込めて修理した鎧を大破させては、これ見よがしに外国産の高いパーツと交換してくれなんて言ってくるのさ。

 金なんて全く持ってない癖に。


「ほれ、何とか治ったぞ。頼むからもう壊すんじゃねえぞ。鎧が泣いてる」

「いつもワリィな。サンキュ」


 このバイトは好きだ。新作のパーツが装着が可能なプレイヤーにはなれなくとも、そして何より苦手な接客が待っていようとも、大好きなパーツを弄れるだたそれだけで俺はおおかた満足してしまっている。なんなら歳とって爺さんになって、この手この腕が震え出すその日までパーツをいじっててもいい。

 まさに天職さ。正真正銘のな。


「で、こないだは勝ったのか?」


 ピカピカに磨き上げた鎧装を手渡し眺めながら、俺は目の前の常連に尋ねてみる。


「へっへーん当然。この俺が負ける訳ねえだろ」

「よく言うぜ。出会った頃のお前は、アイツに勝てない、コイツに勝てないって泣きついてきてたくせに」

「おいおいそれは言わないお約束ッ!」

「へいへい。んじゃ、またご贔屓にな」

「おう、次もよろしく頼むわ」

「毎度」

 お代を渡し、弾む足で駆けていった常連の背中を俺は微笑んで見送ってやった。さて、また中古パーツの磨き作業に戻るとしよう。今日は数が多いからな。

 こりゃ定時までに終わるか分からん、仮に終わんなかったら残業代をたっぷり貰わねえと気が済まねえぞ

 店のカウンターから離れ、草臥れた空布巾と、変色した革手袋、そして錆落としのオイルを手に取って、裏の作業場へ向かう。

 ちょうどそのときだった。

 勝手口の扉がゆっくりと開いたのであ

 る。


「ようリュウセイ、調子はどうだい」


 従業員専用の部屋から店主であるタイジュがビール片手に陽気の調子で出てきたのだ。俺が定時で終われない理由はまさにコイツのせいだ。

「まぁその、ボチボチっすよ」


 昼間っからいいご身分だよまったく。俺が居なきゃアンタがこの店切り盛りしなきゃなんだからな。普通の奴ならこんな安月給で満足するわけないんだからな。


「ほれ、また新しいお客さんみたいだぞ。店番店番」

「……アンタが働いてくれりゃ、俺ももっと好きなこと出来るんだけどな……」

「なんか言ったか?」

「いやなーんも」


 実際、俺は俺を雇うだけじゃなく朝でも夜でも好きにガレージを使うなり寝場所にしてもいいと言ってくれたタイジュに感謝している。だから、やれることは全部やるようにしている。


 手に付けようとしていた手袋を再び作業台に置き、客の前に立つ。営業スマイルは苦手だが仕方あるまい。これも仕事だ。


「しゃーらっせー」


 本音を言わせていただければ、今すぐにでも接客を終わらせてパーツ弄りに戻りたい。そこでグビグビやってる店長と代わってもらってな。

 新しく来た客は筋骨隆々でスキンヘッドの強面の男だった。両腕のタトゥーをこれ見よがしに見せつけて、ニヤリと笑っている。

 後ろには取り巻きが二人。こいつらも揃って筋肉ムキムキだ。


「 ここに腕利きのエンジニアがいるって聞いてな。俺の鎧を見てもらいたくてな」

「はぁ...」


 男はどんっと机の上にケースを乱暴に置いた。おいおい、もうちょっと大切に置いてやれよ。

 鎧装はナノテクノロジーの発展の産物であり、胴体パーツと胴体パーツの真ん中に付いた直径15cmの鎧核だけ残して他の頭や足のパーツなどは全部小さく収まっている。試合をするときは胴体パーツつけ、鎧核を起動すれば全身に鎧を纏うことができる。

 普段プレイヤーは胴体だけをケースに入れて持ち運びしている。


「それでまたどこをどうればいいのか?」

「全部だ」

「は?」

「金属音で耳でみやられたのか?全部だ」


 これまた面倒な厄介ごとを押し付けてきやがった。ひとまず中を見てみるか。

 ケースを開けて中の胴鎧を取り出してみた。


「あーらら」


 やつの胴鎧は黒色で目立ちにくいが返り血がこびりついていた。状態はひどい有様だった。

 鎧核はへしゃげていて中の導線がむき出しになっており火花がちっていた。両肩に犬の装飾が施されていたがどっちもへしゃげていた。


「解放できるか?」

「......」


 男は何も言わず、ポケットから3つ首の犬、西洋神話のケルベロスのストラップが着いた鍵を取り出し、鎧核の下にある鍵穴に差し込みカチャリと回した。


 ガチャンという重々しい音とともに鎧が解放された。胸部以外にも、激しい打痕が痛々しくついていた。


「こりゃ一日で終わらないぞ」


「あん?舐めた口きいてんじゃねえぞ。明日は大事な試合があるんだぞ」


 後ろの取り巻き達が拳を鳴らしながら近づいてきた。


「つーか何で大事な試合の前に大事な鎧をこんなスクラップにしちまったんだ」


「オマエんとこのお得意さんが生意気に俺様と同じ大会にでるっつーから、景気づけに醜態さらしてやろうと思ったらこのざまだ!」


 男はドンっとカウンターを強くたたいた。男の鎧が軽く宙に浮いた。だから鎧を大事にしろって。


「他を当たってくれ。今日は立て込んでる」


 男が合図した。取り巻きの一人が俺の胸倉を掴もうと手を伸ばした。俺はカウンターの下に隠してあるナイフを右手で掴んだ。

 そして、取り巻きの手を左手で払いカウンターから身を乗り出して男の胸倉を掴んだ。そしてそのまま男を引き寄せ、首にナイフをつきつけた。


「おいおい軽い冗談だって」


 男は取り巻き達に下がるように目配せした。


「俺は弱い者いじめが嫌いでね。わかったら、とっとと失せな」


「テメエら、人の店でなにガタガタやってんだっ!」


 横で見ていたタイジュが激昂していた。酔っているのかいつもより声がでかい。耳がキンキンする。

 俺はナイフを男に向けたまま胸倉を掴んでた手を乱暴に離し、カウンターの中に戻った。


「リュウセイ、テメエ客に物騒なもんむけんじゃねえ」


「うっせー、襲われそうになったらこれ使えってテメエが言ったじゃねえかよ」


「そんなもんとっくに忘れたらぁ」


 俺はナイフを元あった机の下に戻した。


「その鎧ワシが修理するから、オメエはとっとと作業に戻りな」


「わかった、わかった」


 接客しろだの作業しろだのいちいち面倒い奴だ。


 工具と革袋を再び手に作業場に向かった。


「うちの若いのがすまなかった。で、この紙に必要なことを書いてくれ」


 タイジュは机の引き出しから申し込み用紙を出し、机の上のペン立てに刺さってたペンを渡した。


「爺さん本当に大丈夫なんか?」


「当たり前じゃ、儂をみくびるんじゃない」


 実際、タイジュの腕は確かだ。俺も何回か世話になっている。修理のスピードも出来も俺より遥かに卓越している。タイジュを超えるエンジニアになるのが俺の密かな目標の一つだ。


「これでいいか」


 男は紙を片手でタイジュに渡した。


「あぁ、大丈夫じゃ。明日の朝絶対とりこい」


  男たちは店から出ていった。


「さてと、儂も作業するかの」


 タイジュは預かった鎧をケースに入ったまま俺がいる作業場まで持ってきた。


「本当に明日までに修理できんのかい?」

「当たり前じゃ。儂を誰だと思ってるんじゃ」

「よく言うよ」


 俺は作業台に乗っていた鎧を床に下ろし、分解し始めた。そして、その横でタイジュは修理用の工具箱から必要な工具を取り出して、鎧の修理に取り掛かった。


「にしても、大分ひでえな」

「これは裏じゃな」


 裏.....裏ファイトのことだ。普通のルールだと、法律で取り付けることが義務付けられている鎧のセーフティプログラムで勝敗が決まるが、裏ファイトだと、そのセーフティを違法に切って、相手が力尽きるか鎧が限界を迎えるまで続ける何でもありのファイトになっている。俺の店にもちょくちょく持ち込まれているが


「最近多いな」

「恐らく、さっきのが言ってた大会が関係しておるのじゃろ」

「まっ俺たちはあんま関係ないがな」


 裏ファイトがよく行われているのは「奈落」と呼ばれるスラム街で、俺達がいる街で裏ファイトをやろうもんなら、警察の世話になってしまう。この店にも裏ファイトで派手にぶっ壊れた鎧が持ち込まれるのは、それだけ「奈落」に店の名前が通っているせいだろう。どこの誰が流したんだか、仕事が増えて儲ける分にはいいが、修理が大変すぎる。


「っと客か。今行きまーす」


 カウンターに設置しているブザーの音を聞き、俺は道具を置き、カウンターに向かった。


 訪れた客はこの店に相応しくないくらいビシッ とした白いスーツを身にまといカッコつけと言わんばかりにサングラスをかけていた。鎧のケースを持っていないあたり、冷やかしかパーツを買いに来たのだろう。


「遠巻きに見てたが、この店はいつも賑わってるな」

「ええ、働かねぇお上の代わりに、好青年のバイトが頑張ってるもんで。ご来店誠にありがとうございますよ。この店は初めてで?」


 なるべくそのスーツにあう高いのを買ってってもらえると、俺の給料も雀の涙からカラスの涙くらいにはランクアップするだろうからどうぞよろしく頼んます。

 そうでなければさっさと帰ってくれ。


 内心悪態をつきながら、にこやかな笑みを貼り付けてみる。


 そんな俺を見てなのか、新規の客さんはやたら訝しげな顔をしているように見える。


「……っておい、お前リュウセイか?久しぶりじゃねえかよ」


 そう言われてしかと客の顔を見てみた。

 どこかで見たことあるような……つーか、一時期毎日のように顔を合わせていたような。


 あ、思い出した。その顔は......


 俺に話しかけてきた男は高校時代、共に部活で切磋琢磨したハヤテだった。


「久しぶりじゃん。見違えちまったぜ。元気してたか」

「へへ。見た通り元気だぜ」

「相も変わらず鎧弄りに夢中じゃねえか」

「それは、どうも。」


 互いに拳を合わせ、懐かしい男とのご挨拶。

 こいつとは高校卒業以来、やってもメッセージを送り合うくらいで実際に顔を合わせるのは久しぶりだった。


 懐かしいなぁ。 そういやお前は……プロの世界に行けたんだっけ。


「見たぜ、昨日のインタビュー記事」


 俺は、カウンターに立てかけているマガジンを手に持ち、ひらひらと振って見せた。


「今注目のルーキーだってな、羨ましいぜ」

「よせよ。ライターが適当書いただけだって。俺なんてまだまだだよ」

「よく言うぜ。昨日ガキがハヤテ選手みたいな、すっげえスピードでるようにカスタマイズしてくれって頼まれたぜ」

「おいおい、まじかよ。素人が真似したら、ケガじゃあすまねえぞ」

「わかってる。ちょいとだけ、ブースターを弄って気持ち早くなるだけにしといた」

「はははっ。鎧に関しては、お前の右に出る奴は居ないぜ」

「そんなことねぇよ。俺が興味あることだから、自然とそうなっただけだし。お前もそうだろ?」

「まぁな」


 他愛の無い会話で笑いあう。まるで高校時代にタイムスリップしたみたいだ。


「で、今日はこの店に何しに来たんだ」

「この店に奈落のヤバイ代物が流れ着いてくるって聞いてな」

「おいおい辞めとけ」


 ハヤテの いう通り、この店では奈落から流れて来た非合法なパーツやソフトウェアがある。そういった代物はタイジュがどっかからか仕入れて来たり、お得意のジャンクショップから仕入れたりしている。

 鎧に搭載することで、正規のパーツより凄まじいパフォーマンスが出せたりするが、使用者の肉体に負担がかかるものが多い。

 もし、使っているのがバレたら、鎧を扱うライセンスを剥奪され、二度と鎧に触れなくなってしまう。一時期、プロリーグで大流行したパーツが闇パーツだったという問題があったこともある。


「まさか、僕が手にするわけないよ」

「だよな。プロまでいったのにやるわけないよな」

「僕は、ただね」


 一拍おいて、ハヤテは言った。


「将軍に関する情報を知りたかったんだ」

「ぐぼぉっ」


 おもわず、えづいてしまった。


「げっほげっほ、おいおい、どういう事だ」

「ここに来れば将軍について知ることができるかと思ったんだけど外れみたいだね」

「いやいやいやいや」


 将軍はあの甲子園終わって、優勝トロフィーをもって消息を絶った。俺は、あの日、将軍に届かなかったことと、二度と将軍と相手できないことから、燃え尽き症候群になっていた。


「実はね、将軍が奈落のリーグで活躍してるって噂をきいてね。それで気になって、ここ最近情報を集めてるんだ」

「いやいや、噂だろ。そんな馬鹿なことあるかよ」

「僕もそう思うけど、もしかしたら本当かもしれないじゃん?」


 確かにその可能性も否めないが……。


「で、何か掴めたか?」

「いんや、全然」


 ハヤテは両手を広げてお手上げポーズをした


「おい、ジジイ、奈落のこと知らないか?」


 カウンターから作業場で修理してるタイジュに声を掛けた。こいつなら、何か知ってるかもしれない。


「誰が、ジジイだ、クソガキ!儂はそっちのことはまったく知らん!!」

「駄目か」


 はぁ、何か奈落に続く手がかりはないか....俺は顎に手を置いて考え込んだ。


「タイジュさん。ご無沙汰してます」


 ハヤテはタイジュに軽く会釈した。返す形でタイジュは手を降った。


「あっ」


 あるじゃないか、すぐそこに。


「ハヤテ、これから空いてるか?」

「一週間休みを貰っているから、暇だけど、久しぶりに飯でもいく?」

「俺とお前の仲で頼みがる。一生の頼みだ」


 俺は、両手を.合わせた。急の出来事で、ハヤテの顔に戸惑いの色が出る。


「ど、どうしたの」

「俺と一緒に、鎧をメンテしてくれっ!」

「いやいや、お客さんの鎧を勝手にメンテするわけには......」

「いや、メンテするのは、俺の鎧だ」

「はぁっ!?リュウセイ、鎧戦は引退するって言ってなかったっけ?」

「今日まで引退。明日から復帰だ」

「相変わらず、滅茶苦茶だな」


 また、将軍とやりあえると思うと、体の内から何か熱いものが込みあがってきた。


「頼む、ハヤテ!この通りだ」


 俺は、勢いよく頭を下げて、カウンターにぶつけた。


「……わかった。いいよ」

「本当か!」

「でも、条件があるよ。僕も将軍について何か掴んだら教えること」

「ああ、もちろんさ。ありがとうな、恩にきるぜ」


 さて、そう決まったら、早速―

 俺は、居住スペースに行き、ベットの下から埃をかぶった、ケースを作業場に持ち込んだ。床に置くと同時に埃が舞った。


「げほっげほっ、リュウセイお前ちゃんと布でもかぶせとけよ」

「わりい、わりい。さぁ久しぶりだな、相棒」


 ケースを開き、ポケットからキーを出し、展開する。俺の相棒、『銀星』が姿を現す。


「おっ懐かしいな、高校以来か」


 ハヤテは興味深そうに相棒を眺めていた。


「しっかし、ぼろぼろだな」

「長い間、倉庫で眠ってたからな」

「いや、そうじゃなくってなんか塗装が剥げてるんだけど……」


 そういえば……高校の頃はもっと銀色の輝きがあったような気がするんだが……最後の甲子園で将軍におもいっきし、負けたり、金欠で高校のとき碌なメンテをしていなかったせいか? まぁいいか、こいつがそこにいることが大事なんだ。


「おい、ガキども、何勝手に話を進めてるんだっ!」

「やべっ」


 タイジュが大声を放ってきた。


「さすがに、マズイよな......」


 俺達は顔を見合わせ、苦笑いした。


「はぁ、儂は知らんからな。今日中のが納品できなかったら、わかってるだろうな」

「わかってるって、爺さん。今度なんか買ってくるわ」


 さてと……それじゃあ始めますかね。


「僕は作業着に着替えたいんだけど、着替えはあるかい?」

「あぁ、丁度、今日洗濯が終わったのが一着あるぜ」


 俺は、作業場にかかっている作業着をハヤテに渡した。


「サンキュー、それじゃ奥で着替えてくるね」


 ハヤテは、作業場から奥に姿を消した。


「おい、リュウセイ」

「なんだ?」


 タイジュが鎧をpcに繋げながら話しかけて来た。


「あんま、奈落に関わるんじゃねえぞ。碌な目にあわねえぞ」

「急になんだよ」

「別に。儂は忠告したからな」


「へいへい」


 俺は、タイジュの忠告を適当に聞き流した。


「おまたせ」


 ハヤテが作業着姿で戻ってきた


「よし、早速始めようぜ」

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