最終章1
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帰り道。
校門前で待ち伏せして中川と会った。
「よっ。」
「それ固定なのか。」
「駄目なの?」
「別に。」
そう言って帰ろうとする中川のカバンを掴む。
「なんだよ……。」
「一緒に帰らない?」
ストレートに伝えると中川は意味が分からないとばかりに顔を顰める。
「っ……そんな嫌がらなくても良いじゃない。
これでも勇気だして誘ったんだけど。」
「別に嫌がってる訳じゃねぇけど……。」
「そ、なら良いじゃない。」
言いながら歩き出すと、中川は渋々と言った感じで後ろからついてくる。
相変わらず感じ悪いけど、今は何故かそんなコイツの態度も不快に思わない。
しばらく無言で歩いてると、思い出したように中川が口を開く。
「そういや、なんだあの甘過ぎるコーヒーは。」
「飲んだんだ。
私的にはちょうど良かったけど。」
「は?舌狂ってんじゃねぇの……?」
「あんたに言われたくないわ!?
甘党の私にブラックコーヒー押し付けてくるし、ロシアンたこ焼きで外れ引いても真顔だったじゃない!」
以前佐藤、静も交えて夏休みにカラオケに行った時の事。
そこでやったロシアンたこ焼きで、唐辛子入りたこ焼きを引いて悶えてる私を後目に、コイツはまるで何事も無かったかのように涼しい顔だったのだ。
あの時の恨みはまだ忘れてない……!
「いやだからってあれは甘過ぎ……。」
「そ、ザマーミロ馬鹿。」
そう笑って言ってやると、中川は頭を搔く。
そのまましばらく無言で歩いてから、私から切り出す
「ごめん。」
「は?何が?」
当然ながら中川は急に謝られて意味が分からないと言った表情。
「私も、他人の事言えなかった。
自分で自分にルールを決めてたの。
それで自分を縛ってた。
破ったって何がある訳でもないのに、結局それに縋ってなきゃ色々な事が怖かったんだと思う。」
「ふーん。」
「静に遠慮してたのもあった。
でも静に怒られちゃった。
遠慮された方がよっぽど悲しいって。」
「なるほど…ね。
実際俺もそうだった。
自分で決めたルールで自分を縛って、母さんが死んだって現実から目を背けてた。
寂しさとか悲しさとかと痛さとか、そう言うのずっと気づかないふりしてお前の言う通りカッコつけてた。
でもそれは結局大切な人を喜ばせる事じゃなかった。
そしてそれは自分の為でもなかったんだよな。」
「やっぱり、私達似てるね。」
「…かもな。」
あの時は似てないと否定したのに、今度は否定されなかった事が何故か嬉しい。
心臓がまた脈打つ。