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顔なじみの店主のいる店での買い物を終えた帰り道。ミアはふと違和感を感じて路地裏に目を向け、それを見つけて驚いて駆け寄った。
石畳と同化するような色のフードを被ってうつ伏せになっているからわかりにくかったが、そこには人が倒れていた。サイズからして子供だろう。
「大丈夫!?」
声をかけると微かに呻き声が聞こえたので、ミアはうつ伏せの体を起こそうと肩に手をかけた。
その瞬間、子供は自ら勢いよく反転し、同時にミアは後ろに引っ張られた。
仰向けになった相手を見るとミアが思った通りまだ幼い男の子で、その手にはナイフが握られており、自分が今切り付けられたことに気づいて心臓が早鐘を打った。
再び男の子が気を失ったのを見て、ミアを後ろから引っ張ったマオが彼に近づき、その手からナイフを抜き取った。
「あ、ありがとうマオ」
「このバカ! いつも気をつけろって言ってるだろ!?」
「ご、ごめん。ちっちゃい子が倒れてるって思ったら、つい……」
反省しているのか怪しいミアの様子にマオはため息をつきながらも気持ちを切り替えた。
ミアが危ない目にあうのはいつものことだ。気を付ければ少しは頻度も減るかもしれないが、ミアの性格上困った人を見捨てることはできないことはマオもわかっているし、自分が一緒にいて守ればいいだけだとこの件については諦めている。
しかし小言は毎回言わせてもらう。諦めてはいるが、不満がないわけではないのだ。
「この子、ダンテドール人だ」
ミアが男の子の顔を見て呟いた。彼は褐色の肌とこげ茶色の髪を持っており、先ほど僅かに見えた瞳は金色に輝いていた。褐色の肌はダンテドール人の特徴である。
ダンテドール王国はこの国、マルメルモック王国の隣国で、両国は建国以来ずっと仲が悪く様々な理由で戦争と停戦を繰り返している。
現在は5年前に何度目かもわからない停戦協定が締結されて争ってはいないが、決して友好的とは言えない。
ミアもマオも、戦争は偉い人のせいであり民衆は巻き込まれているだけと考えているため、かの国自体や国民に対して特に悪感情はもっていない。
しかし全ての人がそう考えているかというと、残念ながらそうではないし、2人はそういう考え方もあると理解している。
「とりあえず診療所に運ぶぞ」
「あ、ちょっと待って」
マオは念のため他に武器を持っていないか男の子の持ち物を確認し、意識のない彼をおぶった。
ミアは男の子に脱げていたフードをかぶせ、その容姿が周囲から見えないようにした。
「よし! じゃあ帰ろう!」
笑顔で声をかけたミアに目を向けたマオがそのまま視線を下にずらし、気まずそうな顔をしたのでミアは首をかしげる。
「あー……その前にミア、オレの上着貸すから待って」
そう言って男の子を再びおろしたマオに、不思議そうな顔をしてミアが視線をマオが見ていた自分の胸元に落とした。
見ると先ほどのナイフがかすっていたらしく、ざっくり服の胸元が割けて大変セクシーなことになっており、ミアは言葉にならない悲鳴を上げた。




