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一方南の山に向かったマオは、ミアを助けるには自分がちゃんとシロを手伝わなければと思い硬い表情でシロの足元を見ながら後ろをついて歩いていた。
「大丈夫だよ」
突然かけられた声に驚いて顔を上げると、シロが早足で歩きながらこちらを振り向いて笑いかけていた。
「うちに来た患者さんはみーんな元気になって帰っていくんだ。だからミアちゃんも絶対に良くなるよ」
「……はい、ありがとうございます」
10分程歩いたところで2人は南の山に到着し、躊躇なく背の高い草をかき分けて進んでいくシロに置いて行かれないようにマオも慌ててはぐれないようについて行く。
山に入って10分程度歩いたところで、マオはそんなはずはないと思いつつもどうしても拭いきれなかった疑惑を思い切って口にした。
「あの、先生?」
「うん?」
「さっきからこの辺りを行ったり来たりしてませんか?」
「え? ほんと?」
「……道、あってます?」
「うーん、正直滝の場所をよく覚えてないんだよねぇ」
「は?! え?! 冗談ですよね?!?!」
「あはははは」
「ちょっと?! どっち?! 先生?!?!」
「おぉぉ! すごい! 着いた!」
「つ、疲れた……」
迷子だと分かった後のマオの行動は早かった。
シロから以前行った時の話を聞き、少し歩いては耳を澄まし、微かに聞こえた滝の音を頼りに歩き見事目的の場所へ辿り着いた。
シロの証言は全く役に立たず、道なき道をほぼノーヒントで進んだにもかかわらずマオの通った道は最短ルートだった。進んだ方向が完璧だったことに加え、数日前に降った雨のおかげで滝の水が増え音が遠くまで聞こえていたことが幸いしたのだ。
さらに実は群生地に生えていた薬草は以前シロが見た時には10株程度しかなかったのだが、それも雨のおかげで増えたようで頼まれた20株を採ってもまだ残っていた。
「あ」
目的のものが無事に手に入って2人の間にほっとした空気が漂っていた時に、シロがなんとも不穏な声を上げた。
「……えっと、どうしたんですか?」
「えっと、ウツミさんたしか1時間で帰って来いって言ってたよね?」
「そうですね……あ!!」
言われてマオが自分の時計を見ると診療所を出てすでに50分が経っており、木々のせいで分かりにくいがよく見ると日が傾き始めていた。
今いる場所から診療所まで帰るとなると、途中で迷った時間を差し引いても歩いて40分はかかるだろう。
「と、とにかく急いで帰りましょう!」
「けどウツミさんのことだから……」
マオは真っ青な顔でそういうと、何か言いかけたシロの話も聞かずに診療所に向かって全速力で走り出した。
「ミア!!」
シロとマオが診療所を出てから1時間と10分。
マオはほとんどノンストップで走り続け、息も絶え絶えになりながらも僅か20分で診療所に帰ってきた。
「ミア!!」
それでもウツミに言われたタイムリミットを過ぎていることに焦り、祈るような気持ちでミアを呼んだマオの目に飛び込んできたのは――
「ですよね! 私だってそれくらいは出来るんですよ! なのにマオったら……あ、マオ! お疲れ様!」
待合室のソファに座りお茶を飲みながら楽しそうに(おそらくマオに対する愚痴を)話すミアと、
「おー、ホントに頼んだ通り採って来れてる」
自分が指示を出したくせに目を丸くして驚いているウツミの姿だった。
「ところで先生は?」
気が抜けて倒れこんだマオに慌てて駆け寄るミアの横で、シロの姿が見当たらないことにウツミが首を傾げた。




