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シロとマオが診療所を出発して30分が経った頃、ミアは目を覚ましてぼんやりと辺りを見回した。
(はて、ここは……)
とりあえず起き上がろうとしたところで体が妙に重いことに気付き、そこでミアはやっと自分が倒れたことを思い出した。
「起きたか。調子はどうだ?」
「あ、お医者さん……」
「お医者さんは君のお兄ちゃんと一緒だよ。ちゃんと次の薬が効いたらすぐによくなるはずだから、辛いだろうがもうちょっと頑張れな」
「あ……の、せっかくですが、次の薬は大丈夫です。だいぶ楽になりましたし」
「駄目だ」
「けど、あの、すみません。たぶんお金が払えないんです」
「ところで今日、ヒノウシに触ったか?」
「へ?」
「ヒノウシ。触った?」
「ええと……」
突然変わった話題にミアは混乱しながらも今日の記憶を辿る。
「触ってはない……ですけど、群れから外れた子牛が一頭近づいて来ました。私のことが気になったみたいで5分くらい近くにいたと思います」
「その時周りに人は?」
「誰もいなかったです。ちょうどマオも呼ばれて離れていたので」
「成程」
「あの、それよりお金のことなんですけど」
「ああ、それなら気にしなくていい。今まさに君のお兄ちゃんに体で払ってもらってるからな」
「え!?」
「薬の元になる薬草を採りに山まで行ってるんだ」
「あ、ああ、そういう……」
青くなったり赤くなったりしているミアを見て、ウツミが軽く笑った。
「君たちはよく似てるな」
「そりゃ双子ですから」
「いや、見た目のことじゃなく。今自分のせいで兄が酷い目にあっていると心配していただろう? 彼も終始君の心配しかしていなかったよ」
「……マオから私たちのこと何か聞いてますか?」
「境遇のことか? それとも体質?」
「どっちも聞いてるんですね。じゃあマオってバカだと思いません?」
「……うん?」
ウツミは聞き間違いかと思い聞き返したが、「バカですよね」と繰り返された。
予想外の言葉にミアの真意を測りかねたウツミはミアに続きを促した。
「私は自分の不運……いや、それじゃ生ぬるいか、凶運についてはもう受け入れてるんです。それに確かに運は破滅的に悪いけど、不思議と周りの人たちには恵まれてて。みんな巻き込まれても笑って許してくれたり、凶運なことを理解して心配してくれたり笑い話にしてくれたり。だから私は十分恵まれてるし、幸せなのに。でもマオはそのことを全然わかってくれないんです! ね? バカですよね?」
「成程。確かにバカだな」
「ですよね!」
ミアは同意してもらえて嬉しそうに笑ったが、次の瞬間激しく咳きこんだ。
ウツミが時計を確認すると、シロとマオが診療所を出発して50分が経過していた。




