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「さて、先生。ここで1つ問題が」
マオが落ち着いてきた頃、ウツミが引き出しを漁りながらおもむろに声を上げた。
「なんでしょう? ウツミさん」
「先生はこの薬草を覚えていますか?」
そう言ってウツミが取り出したのは乾燥した紫色のカスミソウのような花だ。
シロにはそれに見覚えがあった。最初に薬草を採りに行った時にシロが採って帰ったもので、とても貴重な薬草になると褒められた記憶がある。シロがウツミに最初に褒められた忘れられない思い出だ。
「確かこれの群生地を南の山の滝の近くで見つけたって言ってましたよね? 今ここにある在庫じゃとても足りないから、今すぐに採ってきて欲しいんですが」
「わかりました!」
「待て待て待て」
ウツミは頼みを聞くなりかごを持って飛び出して行きそうになったシロの襟首を慌てて掴んだ。
勢いよく引っ張られる形になったシロの首が閉まり、ぐえっとカエルが潰れたような声があがった。
「マオ、お前運が良いって言ってたな?」
「え? まあ、はい」
「じゃあ先生について行ってくれ」
「え!?」
ウツミの突然の頼みにマオは戸惑っている。
「あの、オレなんかがついていって何か役にたつんでしょうか?」
「詳しくは言えないが、確実に役に立つ」
マオはキッパリと言い切ったウツミに驚いたが、やはり役に立つとは思えず、困ってミアを見た。
彼女は打ってもらった注射が効いているようで、今は穏やかに寝息をたてている。
そのまま見つめながら悩んでいると、その様子に勘違いしたウツミが眉間にシワを寄せた。
「心配しなくても襲ったりしねーよ」
「あ、いや! わかってますよ!」
「なら行け。すぐ行け。1秒でも早く戻って来い。それから1時間探しても見つからなかった場合も戻って来い。あとこれは見本として渡しておくからお前が持っとけ。20株は採ってこい。根っこごとな」
そう早口でまくし立てると、ウツミはシロとマオを有無を言わせず追い出した。




