終わりのない空間、始まりのない時間【Twitter140字小説、16の物語その4】
Twitterに掲載した、1話140字以内の物語が16個あります。お楽しみいただければ幸いです。
【NO.1】
全てがロボットになった。料理を作るのも、配膳するのも、漫画を描くのも、配信するのも機械がしてくれる。なんの不自由もない。ロボットの教師に教わり、卒業したら遊んで暮らす。
「生殖してください」
社会人になった今毎日ロボットに脅かされる。
「あなたの価値はそこだけですよ」
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【NO.2】
『デジタル整形』が流行っている。お面を被るだけで好きな顔を映せる。痛みもないし投資額も少ない。今は『綾小路琴音顔』が流行だ。
「えっと……田中さん」
「鈴木です」
「鈴木さん……」
「佐藤です」
全部綾小路琴音の顔だ。声でなんとか覚える。その後『デジタル発声』が流行り全てがやり直しに……。
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【NO.3】
テレビをつけた。『オススメベスト10!』番組が10個目にはいる。
やる気がなくなりネットを見る『今日の話題ベスト10!』
買い物に行く『売れてる野菜ベスト10!』
何でもランキングにしないと気が済まないの? 何でランキング以外の物が買えないの?
『絶対操作されてるよ』
スマホに打った瞬間文字が消えた。
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【NO.4】
国民全員に固有のナンバーが振られ、チップとして体に埋め込まれる現在。人はカジュアルに名前を変える。ナンバーは絶対に秘密で公表は死後。
友達の棺の前でご両親が泣いている。
「『12678B973』どうして……」
そうか。それが彼の本名なのだ。でも僕の中では今でも小学生のままだ。誠也。山崎誠也。
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【NO.5】
『馬鹿な家主だ』
鍵を開けたまま外出するなんて。好きなだけ家を荒らすと、札束を懐に入れて玄関のドアを開けた。いや、開けられない。諦めて窓に向かった。窓も開かない。何かのガスが流れ込んでくる。
「馬鹿な泥棒」
機械を通した女の声が聞こえた。
「逮捕してもらうくらいで済むと思っているなんて」
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【NO.6】
あるアイドルが自分の精子を売り出した。高い人気に金額が高騰。ついに日本円にして1000万円になった。282人の子が生まれた。ところが子供たちは彼と似ていなかった。施設と共謀して他人の精子を売っていたのだ。訴えようにも彼はすでに死去。財産は全額出身である乳児院へ寄付されていた。彼は父を知らない子だった。
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【NO.7】
国民全員に固有のナンバーが振られ、チップとして体に埋め込まれる現在。ナンバーは絶対に秘密で公表は死後。
ある日酔っ払った友達の彼氏が「うちの彼女の番号なんですけどぉ」って言い出した。その場の全員が焦る。
「『LOVE–KA REPI♡4649』なんですぅ」
嘘だから! そんなわけないから! よく騙せたな!
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【NO.8】
大願成就のためお百度参りした。神が私の前に現れた。
「神様! いつ私の望みは叶いますか!」
「それ確か下請けに出したなぁ」
「えっ!?」
『下請け』に会わせてくれた。
「孫請けに出しましたよ」
「えっ」
『孫請け』に会わせてくれた。
「ひ孫請けに出したなぁ」
「玄孫請けに出した」
「来孫請けに……」
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【NO.9】
ティシュペーパーが最後の1枚になってしまった。引っ張ると下にもう1枚あった。引っ張っても引っ張っても次がでてくる。夢中で引っ張り続けた。山のようになったそれを端っこにまとめる。翌朝私は1面ティシュペーパーの上に寝ていた。体が沈んでいく。手を伸ばしても掴むのは紙ばかり。欲張りの末路。
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【NO.10】
パンドラの匣。開けるとありとあらゆる不幸が飛び出て最後に希望が残ったそうだ。
その希望も出た後の匣には何が残ったのだろう?
私はパンドラの匣を手に入れた。開けてみた。
にゅうっと手が伸び私の腕を掴む。
「私は新しい人類です。貴方達を滅ぼして次の文明を築きます」
絶望が飛び出て行った。
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【NO.11】
「小説は意外性だよ」編集者が言った。
「最初に主人公を殺してしまえ」
「ええっ!? 次はどうするんです?」
「生き返らせればいい」
「次は?」
「また殺すんだ」
「次は?」
「また生き返らせる」
「意外性以外何もないですね」
「じゃあ分裂させて生きてるのと死んでるのとに分けて……」
「もういいです」
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【NO.12】
財布を拾った。しめしめ! 中にクレジットカードがあるぞ! 早速パソコンを買った。
『このクレジットカードは使用できません』
なんだって!? じゃあ次だ! 2枚目もダメ。3枚目もダメ。4枚目も5枚目も6枚目もダメ。7枚目のカードの裏にデカデカとマジックで書いてあった。
「どれも使えないよ〜ザッマァ!」
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【NO.13】
女神は言った「お金、美女、健康、人気のうち1つあげる」
「迷うなぁ」
「お金は100億。家族全員富を狙って殺し合います」
「美女は世界一。あなたの人生は彼女の添え物」
「健康で長命よ。縁者はみな先に死に墓を見つめて生きる」
「人気は一生絶対1人にさせてもらえない」
「どれがいい?」蠱惑的な微笑。
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【NO.14】
私は女性ソロキャンパーだ。
男がテントにやってきて「LINE交換しましょう」と言った。
私は頷き薪を立てた。
「アチョーッッッッ」
素手で真っ二つにする。
次に塊肉を吊るして「アタタタタタ!」と正拳突きした。肉が柔らかくなる。
後ろに熊がいたので一蹴りで撃退。
男はいつの間にかいなくなっていた。
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【NO.15】
死んだおばあちゃんに会うためGoogle Earthを立ち上げる。写真のおばあちゃんは道路に横向きで立っている。腰は曲がってモンペに割烹着だ。
おばあちゃんあのね。明日結婚するよ。
いつもの道路をクリックするとおばあちゃんがこちらを向いて手を振っていた。ぼかしが入っているがきっと笑顔だ。
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【NO.16】
ビッグバン以来、星々は全て『外側』に向かって飛び続けている。空間は無限だからどこまでも先へ進んでいける。ならば私達は今、宇宙の『どこ』にいるのだろうか? 終わりのない空間と、始まりのない時間の『いつ』に存在しているといえるのだろうか。無限に過去に遡れるならいつまで経っても『今』はやってこない。
(終)
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