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小っちゃな街の青い鳥たち  作者: 柊夏木ヤヤ
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面談 その3

「次のやつ、入ってこい!」

 パラソルが部屋を出て一呼吸置いてから次を呼ぶと、すぐにノックが聞こえてきた。

「失礼します」

 扉が開くと、先ほどまでのテツやパラソルとは打って変わっての礼儀正しい大学生の青年が入ってきた。

「お前らの後に見ると、やけにおとなしいやつが入ってきたな。本当にお前らの仲間なのか?」

「失礼な!ちゃんとデビ……この軍団の仲間っすよ!確かに俺らの中では一番しっかりしてるので、そう思われるのも無理はないっすけどね……」

 茶化して言ったつもりだったが、ちゃんとした返答が返ってきて思わず呆気に取られてしまった。そして、しれっとデビルキャロッツを言わないように訂正していたことにツッコみそうになったのをグっと堪えてそのまま面談を始めた。



郡野(ぐんの)宗二(そうじ)、二十二歳。職業、公務補代理……代理?」

「はい、ここから近くにある高校で公務補の仕事をしているのですが、もともとお仕事をなさっていた方が現在入院中でして、その方が戻ってこられるまでの代理として働いています。お恥ずかしい話ですが、その後のことは何も決まっていません」

「その公務補の仕事は、期限としては残りどのくらいなんだ?」

 平静を装って話を進めていたが、前の二人の面談の後だったので、至って普通の面接みたいだと感動していた。

「この仕事を始めたのが半年ほど前になります。そして、前の方がすでに退院されていて、もうじき復帰なさるとのことなので、早くても一、二週間ほどの期間となっております」

「近々だな……となると、そこからはお前も無職になるのか……」

 残りあと三人も残っていて、自分を含め半分以上が無職というのはかなり不安の種となっている。蓮は心の中でよく生き残れたものだと尊敬の念すら感じていた。



「それで、お前みたいなやつがどうしてこんなバカ丸出しの名前の軍団なんかにいるんだ?お前ならどこでも働けそうな感じなのに……」

「まぁ、それは……実際に見てもらった方が早いですね」

 そういうと、彼は立ち上がって二十七度という、今日の温度には適していない長袖のシャツの右袖をまくった。すると、まくって見えた腕からは蓮も実際に見るのは初めてだった見事な竜の刺青がこんにちはしていた。

「ほぉ……立派な刺青……って、刺青ぃ!?お前、これ自分で……」

「あぁ!!それについては俺から説明させてください!」

 食い気味に待ったをかけるようにテツが話に割って入ってきた。

「こいつの刺青は決して自分で入れたもんではないんすよ。そこはまず、頭に入れておいてください」

 急に雰囲気が暗くなり、これから話が重たい展開に入ってくることを物語っていた。



「こいつ、中学生の時に刺青専門の彫り師に人攫いに遭ってるんすよ。そん時にこいつの体を実験体にして彫りの練習をしてたんすよ。その彫り師は捕まったんすけど、結果としてこいつの体に刺青があるってわけっすね」

 重たい話になるとは覚悟していた蓮だったが、予想以上にヘビーな話が舞い込んできて胃もたれを通り越し、吐き気まで登ってきていた。


「自分、この刺青のせいで高校にも進学ができなかったし、今の職も長袖の作業着を脱がないという条件で通してもらった話だったんです。テツさんにも去年、仕事がなくて途方に暮れていたところ、声をかけてもらったという感じです」

「それでこの軍団にいたのか。やっと理解ができた」

「まぁ、理由もないのにこんな社会のはみ出し者の集まりみたいな軍団にいるのなんておかしいような性格してますからね」

 それを今までこの団をまとめてきたお前が言うのかというツッコみを飲み込み、話を戻した。




「……そういえば、お前もあだ名とかあるのか?前の二人はテツとかパラソルって呼び方みたいのがあったからさ」

「えっと、皆からは本名を縮めた「軍曹」というあだ名で呼ばれています」

「郡野宗二で軍曹か……なんか緑色のカエルみたいなあいつを思い出すが、まぁ、パラソルの後だし、まともなあだ名に思えるな」

「さらっとディスられたなあいつ……」



 そんなこんなで三人目の面談も終了した。

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