面談 その2
「次のやつ、入ってこい!」
蓮の合図があってから数分が数秒経ってから扉がノックされ、部屋に一人入ってきた。
「失礼しやす!」
元気よく入ってきたのは、先ほども話題に出た俺に一番最初に絡んできたあの男だった。金髪で長身の彼はいかにもヤンキーという感じの見た目をしていた。
「えっと……笠崎雄大、二十五歳。職業無職……って、お前も無職か」
「まぁ、強いて言うのであれば、デビルキャロッツの切り込み隊長ってのが仕事みたいなもんすね」
「……テツ、後でお前の方からデビルキャロッツの意味を教ええとけよ。そして、近いうちにこの名前を変えるぞ」
「了解っす……」
間違いなく、面談の後に行う最先端事項である。そう心に言い聞かせたと同時にこのくだりを後数回行うのかと思い、大きなため息が出そうになったのを飲み込み、落ち着きを取り戻してから面談へと戻った。
「それで、お前はどうしてこのダサ名前の軍団に入ったんだ?」
「自分は中学の先輩だったテツさんに誘われてデビルキャロッツに入ったんすけど、高校の時に万引きで学校を退学になりまして……まぁ、自業自得なんすけどね」
「何を言っている……お前が万引きしたのは、あのヤンキーのバカどもにお前の母親を殺すと脅されて仕方なくやっただけじゃないか。盗品だってその日に返しに行ってるし、店の人も事情を理解してくれたじゃないか?」
彼が述べた万引きの犯罪歴に待ったをかけるようにしてテツが反論をした。
「確かに、テツさんの言う通りですが、それでも俺が万引きをして学校を退学になったという事実には間違いないっすからね」
「だが、あれは……」
自分の行いの非を認めている雄大と、その行いの正当性を訴えるテツ。二人の意見がぶつかり合ってどちらも一歩も譲らないという感じだった。
そのやり取りに対してイライラが募ってきた蓮は、舌打ちをしてから二人の間に割って入った。
「あぁもう!うっせぇな、てめぇら!この際、過去に万引きしただのしてないだの、どっちだっていいんだよ!結局、万引きをしたその後にどのようにしてここに入ったのかを説明しろや!!」
「は、はい!万引きして捕まり、高校を退学になった後、母の紹介でテツさんと同じコンビニで働くことになりました!デビルキャロッツにもその時に誘われました!」
彼はもう怒られないようにと、早口且つ簡潔に説明を終えた。
「そういうことか……テツ、この話に間違いないんだな?」
「ないっすね。辛い境遇にあった仲間みたいな感じで放っておけず、俺からパラソルに声をかけた感じっす」
「そっか……いや、待て?パラソルってなんだ?」
「こいつのあだ名っすね。苗字の笠崎の笠の部分を英語にしてパラソルってあだ名になりました」
テツの説明を受け、蓮は面談書に書かれた名前を再度凝視する。
「……いや、この笠はパラソルじゃねぇよ……」
蓮は肩を落としながら「こいつら、バカの集まりなのか?」と心の中で呟いた。
テツの段階で話が重く、この後もそういうのが続くと思って、胃もたれの一つや二つ覚悟をしていた蓮だったが、違う意味で胃もたれをしそうになってきた。
「話を戻すと、お前もテツと同じでコンビニが潰れたから今は無職ってことなんだな?」
「そうっすね。今は職探しの最中っす」
「まぁ、仕事に関しては追々考えていくとしよう。ひとまず、お前は終了だ。これから頼むぞパラソル」
「はい、おねしゃす!」
勢いよく立ち上がり、深々と頭を下げてから部屋を後にした。
「二人目でこれか……先が思いやられる……」
後に控えている人数を確認してから、蓮は大きな溜息を出した。