始まり
柊夏木ヤヤとしての第一作目になります!
不定期ですが、これから頑張っていきます!!
「俺は何もやっていない!!」
その日、彼はたった一日であらゆるものを失った。
身に覚えのない罪を着せられ、冤罪だというのに職、友、家族と人の繋がりの根底といえるものは完全に断たれてしまった。
借りていたアパートの部屋も親によって解約され、ほとんどの荷物は捨てられていた。
不幸中の幸いは、財布と通帳が手元にあり、銀行へ預けていたお金が無事であったということ。もともと趣味もそんなにないために、人並み以上の貯金がある。彼は何が起こるかわからないと、預金の幾分かを引き出し、残りは新しく作った口座へ移した。そして、手付かずになっていた多少の衣服と日用品など僅かとなった自分の荷物をすべて持ち、行き先もよくわからない、電車に乗り、逃げるようにその地を離れた。
長いこと電車に揺られていると、僅かに開いていた小さな窓から潮の匂いがしてきた。
今まで住んでいた土地は海に面しておらず、本物を見ることが初めてだった彼にとってはとても眩しく、輝かしい光景だった。
彼は終点であるその海の見える町で降り立ち、先ほどの海まで歩いて行く。その海は今まで見たどの景色よりも綺麗で美しく、胸を打たれたと同時にここ最近のことを思い出し、絶望を感じていた。
「今更、どこへ行っても同じなのに……どうしてここに来たんだろうな……」
途方に暮れつつ町の方へ歩き始めると、知らない男四人に囲まれていた。
「おいおい、ここら辺じゃ見ない顔の兄ちゃんだな?あぁん?」
「なぁ、兄ちゃん。痛い目に遭いたくなかったらさ、お金置いてってくれねぇかなぁ?」
至って普通のカツアゲだった。
「あぁん?」
彼は前の会社でも聖人と称されるほど優しく、怒る姿を見たことがないほどの人間だった。だが、彼に起こった一連の事件が彼の中にあった絶望が膨れ上がっていき、「怒り」という感情に変換され男らへの態度に表れた。
「ったく、うるせえな……こっちは今、虫の居所が悪いんだよ!痛い目遭いたくなかったらとっとと失せろ!!」
「なんだと、おいお前ら!この野郎に俺らの恐ろしさ見せつけてやれ!!」
そういうと彼らは一斉に襲いかかる。そして彼らがボコボコに締め上げられ、彼の恐ろしさに気づき、震え上がるまでに五分とかからなかったのだった。
「なぁ、お前ら?お前らの仲間はこれで全員か、あぁん!?」
彼は最初に突っかかってきて、突撃を指示した男の胸ぐらを掴み、彼に脅し紛いの質問をぶつけた。
「あ、いえ……この先に行った倉庫にまだあと三人います……」
「よし、案内しろや」
「えっ……ですが、中にはまだ高校生のガキもいて……」
「んなことはこの際どうでもいいんだよ。とりあえず黙って案内しろや!」
「は、はい……」
そして彼らはボロボロになった体に鞭を打つように歩き出し、彼をほかの仲間がいるという倉庫へと向かいだした。
これから始まるアホたちの物語……。
ぜひ、最後まで見届けてやってください!