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ちょうど次の登校日は週明けだった。

いつものようにダラダラと過ごす週末だったが、美結は日に日に嫌な予感が増していった。

しかしそれは決して避けられないことであり、意を決して月曜日を迎えた。


いつもよりのんびりと登校した美結が教室に入るなり、多くの視線を浴びる。

工以外の仲良しメンバーが自分の机の周りにいて、そんな彼ら以外のクラスメイトも注目していることが分かった。

嫌な予感はやはり的中であった。


「みんなおはよう!」


美結はそれでも作り笑顔を振りまいたが、友人らは顔を見合わせており、隼人が海に背中を押されて一番に口を開いた。


「実はさ、あれから噂聞いちゃったんだけど。転校生と美結って…。」

「付き合ってたよ。」


美結の耳元で小声で言う隼人に、その余所余所しさににイライラして思わず声が出た。

教室内では耳を立てていた野次馬達がヒソヒソ話をしているのが聞こえる。


美結はため息をついて、自分の席について荷物を出した。

あからさま不機嫌な美結に三人は机の前で膝をついて頭を下げた。


「美結本当にごめん。」

「ごめん、噂で聞いちゃって。聞いてないとか平気なふりできなくて…。」

「過去のことなのに本当ごめん。そりゃ嫌だよね。」

「てかお前らさー、まじTPO弁えろよー。」


言い訳には余計に腹が立ち無言でいた美結の後ろから、聞き慣れた声がした。

まさに妥当なことを話した彼も、相当苛立っているのが分かる。


「工。おはよう。」

「美結、声デカくて俺にまで聞こえたー。」

「まあそれは後ろにいたら聞こえるでしょ。」


美結は振り返り、工を揶揄う軽く睨みつけた。

しかし工は明らかに重い空気を振り払ってくれた。


「俺と美結だって付き合ってたのに、誰も噂してくれないよな。俺はまだ大好きだし、そっちの方がよっぽど面白いネタじゃね?」

「お前、本当素直だな。」

「てか本当バカ。」

「美結、また俺と付き合おうよ?」


ふざける工に仲良しメンバー達は安堵しながら話に乗っかった。

美結は椅子を後ろに倒し、工のこめかみに向かって自分の握り拳を回した。


「美結、痛い。」

「もう、皆が変な誤解したらどーするの。」


あまりに単純で素直な工と困っている美結の姿を見ていた周りから、明るい笑い声が聞こえてきた。

美結は顔を赤くして照れながらも、周りの雰囲気を和ませてくれた工に感謝の気持ちでいっぱいだった。


「誤解してくれた方が俺はいいんだけどなぁ。」


工がそう小声で言ったのは、美結には伝わっていただろうか。

担任が来たので、この話はこれっきりすっきりと終わりになった。


しかし明人が現れたことにより、美結にとって心穏やかで平凡な高校生活は消え去ったといっても過言ではなかった。


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