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深紅の悪鬼は繰り返す  作者: 札神 八鬼
一月編 深紅の悪鬼はやり直す
5/23

無風の凧(たこ)

しんしんと雪が降り積もる一月三日。

私はお気に入りの凧を誇らしげに掲げながら叫ぶ。


「深海、(たこ)上げしよう!」


「こんな雪が降ってる上に、無風の状態で凧上げとか、

正気ですか?それとも馬鹿なんですか?」


私は深海の心無い言葉にむすっとした顔になる。


「馬鹿じゃないもん!

私だって真面目に正月を楽しもうとしての行動だもん!」


「それなら尚更日を改めるべきです

今凧上げをやっても、地面を滑るだけですよ」


「その時は深海がうちわで扇げば少しは飛ぶじゃない」


「それ、わざわざ外でやる必要あります?」


「外だからこそ意味あるの!

ほら、ごちゃごちゃ文句言う暇があるなら、凧上げ手伝って!」


「使用人の一番横暴な使い方ですね」


「文句言わない!黙ってやる!」


「はいはい、分かりましたよ」


深海はため息をつきながら凧を持って私の後ろを走る。

最終的には私の言うことを聞いてくれるところが、

深海の良いところだ。

しばらく走ってみたが、やはり無風なので、

凧が一向に上がる気配はない。


「ねえ、やっぱりうちわで扇いで…」


深海に声をかけた瞬間、プツンと凧の糸が切れる。

何か鋭利な刃物で切れたような、雑な切り口だった。

深海は一瞬何かを懐に隠したが、いつもの笑顔で対応する。


「どうしました?柚様」


「今、何で凧の糸が切れたの?」


「きっとどこかに引っ掛かって千切れたのでしょう

凧はまた新しい物をご用意致します」


嘘だ。確実に深海は、私の命を狙っている。

確証もないのに、何故か私はそう思った。

大好きな平和の中に、少しずつ大嫌いな非日常が紛れ込み始めた。

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