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深紅の悪鬼は繰り返す  作者: 札神 八鬼
三月編 監視者
23/23

悪鬼の最終形態

今回は非人道的なシーンがあります

後、赤月くんがゲスく見えるシーンがあります

研究員の一人の中に、犠牲対象がいることが発覚した。

しかも対象は研究員Yの息子とのこと。

それは同じ悪鬼症候群患者である研究員Aからの情報だ。

至急実験をする必要がある為、犠牲対象となっている

研究員Yに事の経緯を説明することにした。

すると研究員Yは『私の犠牲が研究の為になるならば』と、

快く承諾してくれた。

まずは研究員Yの体の一部を件の息子に食べさせれば、

どんな反応をするかのデータを取ることにしよう。

もしかしたらこれは今までにない大発見になるかもしれない。

今までは犠牲対象の肉だと言及せずに食べさせたデータしかないが、

それは犠牲対象の肉だと言及した上で食べさせるとどうなるのだろうか。

これは良いデータが取れそうだ


筆者:■■ ■■(この箇所は黒く塗り潰されている)


「それは、確かな情報なのですか?」


声が震える。

確かに二人は私には理解出来ない程狂ってはいたが、

まさかそこまで悪化していただなんて。


「いいや、まだ憶測に過ぎないんだ

実際に彼らはザクロ肉を発注する数が減っているからね

それに、周りの人間が次々と消えているし、

怪しまない方がおかしいだろう?」


「…………柚さんはともかく、深海さんは違うと思います

柚さんは見るからに狂っていましたが、

深海さんはいつも通りでしたから」


「そうか……じゃあ深海くんはまだ食べていないんだね

彼はいつ悪鬼になってもおかしくない危険な状況だ

ギリギリ理性で耐えている所に、

人肉なんて食べようものならまともに会話なんて出来ないだろうからね」


「それなら、柚さんはいつ人肉を食べたのでしょう

私がいる間、特に外に出た形跡はありませんでしたよ」


「いや、人肉の調達ならきっと……いや、これ以上憶測で話すのはやめよう」


「何か心当たりでもあるんですか?」


「いいや、大したことではないよ

もしもそうだとしたら忠誠心の強い犬だなと思っただけさ」


「忠誠心の強い犬……」


「気にしなくて良いよ山羊、これはただの憶測でしかない」


「…………分かりました、私はこれにて失礼します」


「ああ、その前に少しだけ僕達の実験に付き合ってくれるかな?」


「実験?」


「そう、君の父親も関わってる大切な実験さ」


「…………分かりました、どこに行けば良いんですか?」


「すぐそこの研究室だよ、ガラス張りになってる場所があっただろう?

今から僕達が行くのはそこだよ」


「…………そう……ですか……」


父さんが関わってると言われたら、私に断る選択肢なんてなかった。

思えば私から父さんを奪った研究を妬んで悪鬼症候群を発症した私は、

結局研究に勝てはしなかった。

皮肉にもあれだけ憎んでいた研究の仕事に就き、

今では彼と一緒に研究に協力している。

人生とは何が起きるのかつくづく分からないものだ。


「さあ着いたよ、山羊くん」


見慣れたガラス張りの部屋にはポツンとテーブルと椅子が置いてあり、

丁寧に調理された肉が皿に乗っていた。

きちんとナイフとフォークまで用意してある。

私にこれを食べろということなのだろうか。


「もしかしてですが、これが研究内容ですか?」


「ああそうさ、君は目の前にある肉を食べるだけだ

実に簡単な仕事だろう?」


赤月はニコニコと私を見ながら答える。

でも何かがおかしい、嫌な予感がする。

この笑顔は、何かを企んでいる時の顔に良く似ていた。


「食べるだけ?じゃあどうしてこんなに研究員がいるんだ?」


おかしい、ただ肉を食べる為だけにこんなに人が集まるか?

どう見ても悪鬼症候群患者が普通の家畜の肉を

食べた時のデータを取るとは思えない。

赤月は心底嬉しそうに笑う。


「そう、君の父親だって喜んで協力してくれたんだ

今後の研究の為に、食べてくれるだろう?」


そこで私は気付いた、ガラスの外にいる研究員の中に、

どこにも父さんの姿がないことを。


「父さんは?赤月、父さんはどこに行ったんだ?」


「さあどこだろうねぇ、案外近くにいるかもよ?」


私は反射的に目の前の調理された肉を見る。

その最悪な可能性に気付き、顔が青ざめていくのを感じた。

体が冷えていく、冷や汗がいつまでも止まらない。

嫌だ、嫌だ、嫌だ!

私は早くここから出たくて出口に向かうと、

すぐに赤月に引き留められる。


「山羊くん、食べ物は粗末にしちゃダメだよ」


「食べ物?冗談でしょう?

あんなのが食べ物だなんて頭がおかしいんじゃないですか?」


「あっ、流石に気付いちゃった?

まあそうだよね、君の父親がここにいなけりゃ気付くか

言ったでしょう?彼は快く協力してくれたと」


「研究内容を知っていればここに来ませんでしたよ

あなたは私が父親を食べたくないと

知った上でこれを実行したのですか?」


「当たり前じゃないか

だからこそ君から良いデータが取れると判断したんだよ」


「…………ああ、あなたに話した私が馬鹿でした

こんなことになるなら……」


「どのみち君には彼の肉を食べる以外の選択肢はないんだよ

食べやすいように加工したんだから、美味しく食べてくれないと

犠牲になってくれた彼に申し訳ないだろう?」


「食べません、例え父さんの為であろうと、絶対にね」


「…………おい、こいつを椅子に縛りつけろ」


「分かりました」


突然何人かの研究員が入ってきたかと思うと、

彼らは私を捕まえ、近くの椅子に縛りつけた。

私が恨めしげに睨むと、赤月は面白そうに微笑んだ。


「さあこれでもう逃げられないだろう?

僕が食べさせてやるんだから、残さず食べるんだよ?」


「嫌だ!私は父さんの肉なんて食べたくない!」


「ごちゃごちゃうるせえんだよ、黙って食え」


赤月は私の口を無理矢理開けると、父さんの肉を口の中に入れた。

吐き出さないように口を押さえて、私が飲み込むまで許すつもりはないらしい。

ふと、さっきまで話していたザクロ肉の話を思い出した。

悪鬼症候群患者は一度本物の肉を食べると、

偽物の肉では満足できなくなってしまう。

何でも、悪鬼症候群患者はザクロ肉よりも人肉の方が美味しく感じるのだとか。

私はそんな記録に異を唱えたいと思う。

美味いわけがあるか、こんな不味いもの。

同じ悪鬼症候群患者である私が言うのだ。

これを美味いなんて言う奴はもう人間じゃない、悪鬼だ。

まだ人間でいる私に安堵したと同時に、

こんな不味い肉を食わなきゃいけないことに絶望した。

ああ、私は最後まで、研究に勝てなかったのだな……

肉を全て食べ終わる頃には、私の意識はほとんど残っていなかった。

最後に赤月は満足そうに笑い、拘束を解く。


「お疲れ様山羊くん、もう帰っても良いよ」


やっと終わったのかと安堵し席を立つ。

もう帰ろうかと思っていると、違和感を感じた。

背中が焼けるように熱い。

中に何かが蠢いていて、今からでも飛び出しそうだ。

私が背中の激痛に苦しんでいると、赤月は嬉しそうに眺める。

今まで何ともなかった私に突然変化が訪れたのだ。

きっと良いデータになるとしか思っていないのだろう。

体の痛みに耐えているとやがてそれは収まり、

焼けるような背中の痛みはもうなくなっていた。

その直後、ガラスの外の研究員、そして赤月から、

大きな拍手の音が響き渡った。

ガラスの外からはどこか興奮気味な声が聞こえる。


「ああ、おめでとう山羊くん

君は今、人間を越えた生命体に進化したんだ」


「……………え?」


意味が分からずに背中を見ると、背中からはコウモリのような羽根。

尖った耳、口には八重……歯……。

…………嘘だろう?嘘だと言ってくれ。

こんなのもう、ただの化け物じゃないか。


「見たところ、その羽根は突然変異で出来たものだろう

素晴らしい!悪鬼症候群は人間をここまで進化させるなんて!」


どこか興奮気味な声、響き渡る拍手に、僕は気が遠くなってきた。

『世紀の大発見だ!』と騒ぐ研究員達を他人事のように見つめる。

どんな結果を残そうが、父さんはもう帰って来ないのに。


「いやー、君の息子さんは凄いね!

彼は今までになかったデータを残してくれたよ!」


赤月の声で我に返り、視線の先を見ると、

そこには片腕がない父さんがそこにいた。

一瞬幻覚かと目を擦ったが、どうやらそうではないようだ。

僕は確かに、父さんの肉を食べたはずなのに……

どういうことかと赤月を見ると、赤月は悪戯が成功した子供のように笑った。


「死んでないとは一言も言ってないだろう?」


赤月を殴りたくなったが、今回は勘違いした私が悪い。

それに、結果はどうあれ父さんが生きてるならそれで良かった。

父さんは私に今まで一度も見せなかった笑顔で私に語りかける。


「お前は自慢の息子だよ、智也」


その一言で、私は今までのことを許せてしまった。

父さんが私を息子と認めてくれるのであれば、

私は大嫌いな研究に人生を捧げよう。


◇◇◇


無事研究は成功した。

どうやら犠牲対象の肉だと予め言及したのが良かったようだ。

研究員Yの息子は肉を食べることに強い拒絶をしていたので、

無理矢理食べさせた所、突然変異した。

背骨が変形し、コウモリの羽根のような形状となり、

耳も尖り、八重歯も生え、まさしく悪魔のような姿に変化した。

飛行出来るか確認した所、羽根が生えたばかりで慣れないせいか、

おぼつかない動作でありながら、飛べることが判明した。

それほど長時間は飛べないようだが、これは進化と言っても良いだろう。

世紀の大発見だ、研究員Yの息子には感謝しなければならない。

我々はこれを悪鬼症候群患者の最終形態と仮定した。

これはどうやら犠牲対象の肉を食べることを拒絶した

状態で食べることで起きる現象のようだ。

後日他の悪鬼症候群患者でザクロ肉を犠牲対象の肉だと、

言及して食べさせた所、特に変化は見受けられなかった。

やはり犠牲対象の肉でなければ効果は出ないらしい。

そして、他の悪鬼症候群患者にも同様の研究をした所、

患者によって変化する姿が違うことが発覚した。

どうやら最終形態は願望から作られた姿から

連想されやすい姿に変化することが分かった。

研究員Yの息子は羊のような姿だった為、

恐らくそこから悪魔という連想に至ったのだろう。

やはり悪鬼症候群は人間の進化を進める病気だったのだ。

我々の仮定は間違いではなかったのだと立証された。

ともかく、犠牲対象は体の一部でも問題ない事が分かった。

我々は引き続きこの奇妙で魅力的な悪鬼症候群の、

新たなデータを得るために研究を続けていこうと思う。


筆者:■■ ■■

山羊くんを生かすか殺すかで悩んだけど、

結局生かす路線で書くことにしました。

危うく拒絶反応で死ぬとこだったんだよ、君

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