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深紅の悪鬼は繰り返す  作者: 札神 八鬼
二月編 愛の後悔 
13/23

この愛、朽ちるまで

二月一日。今日は珍しく柚様から

散歩をしようと言い出してきた。

僕は出かける準備を済ませると、

柚様と一緒に外を出た。


「こうして二人で散歩をするのは久しぶりね」


「そうですね、柚様」


あれから何度目かの二月一日だが、

こうして柚様と歩くのも久しぶりだった。

僕は後何日、柚様の側にいられるのでしょうか。

ふと、柚様の目線がある場所へと留まる。


「深海、少し寄っても良い?」


柚様が指を指しているのは甘味処だった。

目を輝かせる柚様に対し、僕も笑顔で応じた。


「それなら、僕は店の前で待っていますね」


甘味を買うだけなら、柚様一人でも大丈夫だろう。

店の前に腰掛けると、段々と眠くなってきて、

僕は夢の中へと堕ちていった。


◆◆◆


見渡すと、そこには一面クロッカスが生えていた。

どこに行ってもクロッカス畑が終わる様子はなく、

他に人も建物も見当たらなかった。

確か、クロッカスの花言葉は…

青春の喜び、切望、あなたを待っています。

そして…


「……………これは、紫色のクロッカス?」


ふと気づくと、真ん中には紫のクロッカスが咲いていた。

確か、紫のクロッカスの花言葉は…


「愛の後悔」


紫のクロッカスを優しく手折ると、

生気を吸われたかのように枯れていった。


◆◆◆


目が覚めると、地面には何かを引きずった跡と血痕があった。

血痕を辿ると、そこには柚様の姿があった。


「やっぱり、両想いじゃないと美味しくないわね

いつも食べてるお肉と同じ味なのは気のせいかしら?」


「柚様、ここにいたんですね

用事が済んだのなら帰りますよ」


柚様は僕に気付くと、にこりと笑う。


「先に帰って良いわよ

私はまだ用事が終わっていないから」


僕は、柚様が既に鬼となっているのを知っている。

だからこそ僕は、あなたの想いには答えられない。

そうしてしまえば、僕はあなたの側にはいられなくなってしまう。

だから僕は、鈍感な使用人を演じるのだ。


「分かりました

僕も少し寄り道してから帰りますね」


◇◇◇


「深海、私の部屋に紫の花が飾ってあったんだけど、

あれ何の花なの?」


「あれはクロッカスという花でして、

僕からのプレゼントです」


「そうなの?ありがとう!

深海もやっと私の有り難さが分かったのね!」


「昨日こたつでお菓子を食べ散らかしていなければ、

もっと尊敬出来たんですけどね」


「だって、こたつが離れたくないって言ったのよ?

それは仕方ないじゃない」


「そう思ってるのは柚様だけです」


「彼もちゃんと私を愛してくれてるわよ!」


「柚様」


「何?深海」


「柚様は僕が一生をかけて、お仕えしますからね」


「?そんなの当たり前じゃない」


「それもそうですね

柚様にとっては、当然のことでしたね」


この愛、朽ちるまでは共にいよう。

あの紫のクロッカスのように、

いつかは枯れゆく命であろうとも、

僕は己の命をかけて、彼女に尽くし続けよう。

どうか、僕を裏切らないで下さいね柚様。

クロッカスには、『裏切らないで』という

花言葉があるそうです

何か深海にぴったりだと思ったので入れてみました(偏見)

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