寒椿の咲く頃に
今回は目まぐるしく視点が入れ替わります。
◇◇◇にて視点が変わりますが、
◇◆◇は、二人の視点です。
一月十日。深海との最後の一月。
一月が終わろうとしていても、私達の日常は変わらない。
◇◇◇
今日は一月十日。柚様と過ごす最後の一月。
僕は今日も変わらず、柚様との日常を過ごしていた。
◇◇◇
ふと外を見ると、寒さに凍えた椿が、首から綺麗に落ちた。
それは、まるで未来のあなたみたいで、とても美しく見えた。
「あの椿、綺麗ね」
「そうですね、柚様」
深海は先程落ちた椿ではなく、
未だに咲いている椿を見ながら答えた。
◇◇◇
「あの椿、綺麗ね」
ふいに、柚様が外を見ながら僕に話しかけた。
柚様の視線を追うと、そこには満開の椿があった。
「そうですね、柚様」
落ちている椿が、まるで未来の朽ちた柚様のようで、
とても悲しく、憎らしく感じてしまった。
◇◇◇
「まるで深海みたい」
私がそう続けると、深海は苦笑いしながら答える。
「僕はあんなに綺麗ではありませんよ」
もったいない。
あなたはそんなに美しく、美味しそうなのに。
◇◇◇
「まるで深海みたい」
柚様は素敵な笑顔で僕に笑いかけた。
そんな柚様に対して、僕は苦笑いしながら答える。
「僕はあんなに綺麗ではありませんよ」
いずれ鬼となるこの命が、綺麗であるはずがないのに…
◇◇◇
「私、深海がいないとダメになっちゃうかも
だから、私を置いて先に死なないでね、約束よ」
「はい、柚様がそう望まれるのならば」
私は、深海がいないと生きていけない。
◇◇◇
僕は、柚様がいないと生きていけない。
◇◇◇
だからこそ私は。
◇◇◇
だからこそ僕は。
◇◇◇
あなたを食べたいの。
◇◇◇
あなたを殺したいのです。
◇◆◇
これは、愛と殺意が渦巻く繰り返しの物語。