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深紅の悪鬼は繰り返す  作者: 札神 八鬼
一月編 深紅の悪鬼はやり直す
11/23

心の悪鬼肉体の悪鬼

今回はかなりのふざけ回です。

アホらしいかもしれませんが、

温かい目で御覧ください。

嫌悪感から発症した患者は心が悪鬼になるのに対し、

強い絶望から発症した患者は、肉体が悪鬼となる。

症状の進行は遅いが、末期にまでなると、

肉体は悪鬼そのものへと変わり果て、

症状の進行が分かりにくい患者でもある。

そして絶望から発症した末期患者の特徴は、

頑丈な肉体。人より長い寿命。鬼の角。

理性こそあるものの、偏食であること。

食の好みは患者の個性により大きく変わる。

過去に死肉を好む末期患者が、家畜の肉でも

満足するという結果が出たことで、

殺処分を(まぬが)れたという記録がある。

つまり何が言いたいのかというと、

所詮(しょせん)嫌悪感から発症した患者は、

心が鬼と化しただけの、(まが)い物に過ぎないのだ。


著者:悪鬼症候群研究家 葉桜 拓郎


◆◆◆


一月九日。一月ももうじき強制的に終わりを迎える。

何度も一年前に戻りすぎた僕達は、

十二ヶ月全てが、10日しか過ごせなくなった。

それ以降は強制的に時が進み、次の月へと進んでしまう。

これが、僕達が支払った代償だ。

僕は柚様のお父様の本を棚に戻すと、自分の部屋を出た。

まだ寝ているであろう柚様を起こしに向かう。

案の定、柚様はまだ夢の中にいた。


「柚様、起きてください」


「ううーん、後三時間…」


「三時間は長すぎです

早く起きないとお昼になりますよ」


柚様は人前では上手く隠せているが、

こうして無防備な状態だと、鬼の角が生えている。

きっと柚様も、既に末期なのだ。

僕が布団を剥ぎ取ると、柚様は布団を取り返そうと

懸命に僕の足を掴んでいた。


「かーえーしーて!私のマイスウィートダーリン!」


「出来ません

彼は柚様をダメにしてしまいます」


「彼がいないと生きていけないの!

寒すぎて死んじゃう!」


「残念でしたね柚様

彼は今から水責めにされ、外に干されるのです」


「いーやー!私の布団くんがーー!」


いつもの茶番を終えた後、布団を洗って外に干す。

今日は気持ちが良いくらいの晴天で、お洗濯日和だ。

まだ空気が寒いのが難点だが…

柚様には新しく買ったふかふか布団で我慢してもらおう。


「うっ、うっ、こたつくんに慰めてもらおう…」


柚様は泣きながら着替えると、そのままこたつがある部屋へと向かった。

言い方にかなり問題があるが、

それがいつもの柚様なのだから仕方ない。

僕は布団を干し終わると、朝食を作る為にキッチンへと向かう。

朝御飯の準備をしていると、こたつがある部屋から

柚様の声が聞こえた。


「ねえ聞いてよこたつ

今日ね、彼が干されたの」


柚様、こたつは喋りませんよ。


「柚、彼って誰のことだ?

俺以外に男がいるのか?(渋い声)」


柚様がこたつ役をするのか…

ていうか、こたつの声渋っ。


「違うわよ!彼とは寝室で会ったの!

特に深い関係じゃないわ!」


まあ、相手布団ですからね。

そりゃあ出会う場所は寝室になりますよね。


「やっぱり浮気じゃないか!

俺というものがありながら、他の男と寝ていたのか!(渋い声)」


いや布団だから寝る時に使うのが普通ですよね?


「別れるのは嫌!私はこたつも愛してるの!」


「もって何だ!俺はおまけ程度の男なのか!?(渋い声)」


何か知りませんが謎の修羅場に突入しましたね。

これ、一体どこで決着がつくのでしょうか。


「二人とも喧嘩はやめろ!(イケボ)」


まさかの第三勢力参戦!?


「その声は、布団さん!?」


外に干してある布団ですねそれ。


「思い出せこたつ!僕達は暖房具なんだ!

柚の体を温めるのが、僕達の使命だろう?(イケボ)」


「布団さん、私は…」


「柚様、朝御飯出来ましたよ」


「わーい!朝御飯!」


突如(とつじょ)起きた茶番は、

朝御飯によって幕を閉じたのだった。

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