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おっさん、異世界転性してデストロイヤーガールになる!?  作者: 椎乃律歌
06.アールヴ森林編

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第五話 緊急EWF対策本部

 私は迎賓館に戻ると主寝室続きの居間で参謀会議を始める。ちなみに迎賓館は二階建てで屋根裏部屋まで含めると三階建ての造りになっている。二階は主に付き人用の部屋で一階は貴賓室となっている。貴賓室の構造はホテルのスイートルームのような感じだと思っていただきたい。


 主寝室の他に副寝室が二つの三ベッドルームスイートてやつである。他にはダイニングルームと付き人が待機するためのコネクティングルームなどがある。


 ちなみに「スイート(SUITE)」は「一組」とか「一式」という意味で「甘い(SWEET)」という意味ではない。多くの人が一度は勘違いしていると思うが、私も残念なことに、ある程度の大人になるまでは勘違いしていた一人である。


 今は一人で全部のフロアを使い切っているわけもなく空き部屋も多く贅沢な話である。ちなみに貴賓室が一階にあるのはエレベーターとか無い世界なので高位者が階段を登り降りしなくても済むようにとの配慮からである。


 そんな居間での参謀会議。出席者は副官のオスカー。航海科からはブラッキー。砲雷科からはエミーとフェリックス。機関科からはキッドー。主計科からはプーリの六匹と私が参加者である。実は、ここにいる猫達は初期艦である〈フレッチャー〉からの古参船乗り猫達である。


 司会は副官のオスカーが務める。

「本日の議題はEWF対策についてです」

 EWFと言うのはアース・ウィンド・アンド・ファイアーの頭文字を取った略称。つまりアース・ドラゴン、ウィンド・ドラゴン、ファイアー・ドラゴンのドラゴン三匹のことである。


 ちなみに居間の中には『緊急EWF対策本部』と墨書された垂れ幕がかかっている。書いたのは私である。自衛隊系の艦を建造しているので備品に書道セットがあったんだよね。


「こちらを御覧ください」とオスカー。

 居間にあったローテーブルやソファー等は退かされて、絨毯の上には大きな地図が広げられている。アールヴ森林を中心とした周辺地図だ。その地図の周囲に私達は立っている。


「アールヴの首都レチェブエシから北に一一五キロメートルほどにあるロトゲンにEWFが拠点として活動しているのが判明しました」

 地図の上にはEWF三匹を示す凸型の駒が置いてある。


「ロトゲンの場所はドイツェット王国とフランチェスカ王国の国境沿いか……」

 私は地図を眺めながら呟く。私達がいる所にも駒が置かれており全艦隊の現時点での配置場所にも駒が置かれている。


 所謂、兵棋演習(へいぎえんしゅう)、または図上演習と言うやつである。駒はT字型の棒によって動かせるようになっている。運動場の整地に使うトンボとかデッキブラシのブラシが無いものを想像して欲しい。


「国境沿いですが、周辺はEWFに狩り尽くされたようで障害となる人も魔物も居ません」

「で、EWFはそんな所で何やっているのだ?」

 私は疑問に思ったまま口に出してみる。


「それについて私から報告します」とブラッキー。

「現在、第三艦隊がEWFの監視と周辺の警戒を行っていますがEWFは定期的に国境沿いを往復しては戻ってきているようです。野生の魔物の行動としては少々不審な点がありますので、周辺を偵察させた所、ロトゲンに補給物資が運び込まれている形跡があるようです」


 現在の艦隊編成は第一二艦隊まである。一つの艦隊に二個戦隊が所属している。戦隊は四隻編成なので一艦隊は八隻である。つまり全部で九六隻の駆逐艦を運用していることになる。第一艦隊は海自の護衛艦で固めてあり、第二艦隊以降は米海軍の〈アーレイ・バーク〉級で揃えてある。


 ロドゲンは既に人々が逃げ出しており、EWFが住処としているような所に補給物資が運び込まれている形跡がある。これは大変臭う案件だ。

「……つまり、何らかの人為的なものだと?」

「断定まではしていませんが、状況から見て間違いないかと思われます」

 私がブラッキーに尋ねるとブラッキーは条件付きで肯定した。


「さて、EWFをどうするかだな」

 ぶっちゃけ、こちらにちょっかい出してこないなら放っておきたい。触らぬ神に祟りなしというやつだ。しかし人為的となると話が違ってくる。敵対するなら撃破しなくてはならないしフランチェスカ奪還作戦の進路を妨害するなら排除しておきたい所だ。どのみち避けられないという話か。ならば叩くしか無いな。


「EWFが人為的に操作されているなら、その根本を叩くのはどうでしょうか?」と砲雷科のエミーが発言。

「悪くはない手ですが、我々には特殊部隊がないので敵地に乗り込んで原因を排除する事が出来ませんぞ」と同じく砲雷科のフェリックスが答える。


 そうなのだ、我々は大量の駆逐艦を所有しているだが艦隊としては歪な状況にある。駆逐艦しか無いので様々な状況に応じた戦闘をこなせるかと言うと出来ないだろう。上陸用の戦闘部隊もないので都市を占領したりとかは難しい。艦砲射撃による制圧ぐらいしか出来ない。幸い軍艦なのに陸上を進めるチートがあるので上陸用舟艇はなくとも何とかなってはしまうが地上を制圧する武力があるかと言うとあっても限定的である。海兵隊の一つや二つ欲しいところである。


 「もし、人為的に操作されている所を叩けたとして、自由になったEWFはどうなるのだ?」と機関科のキッドーが発言する。

「そうですね。自由になったEWFがどう動くかは予測ができません」とは主計科のプーリ。


 EWFが人為的に操作されているならば操作を外れたEWFはただの野生のドラゴンに戻ると思われる。正気に戻ったEWFが帰巣本能に従って元の住処に帰るだけなら良いけれど、腹いせに暴れ回ったりしたら目も当てられないな。


「やはり、攻撃するしか無いか……」と私は顎を撫でながら考える。

「オスカー、攻撃するとして作戦はどうする?」と私はオスカー副官に訪ねた。

「先日の戦闘でEWFの攻撃は簡単に我々の駆逐艦を破壊できることが証明されました」


 現代の駆逐艦は全鋼製ではあるが、戦艦の様な重装甲では無いので小型ボート爆弾により大破したり、タンカーと衝突しては大破と装甲はあっても薄い。装甲を抜けてもダメージが拡散しないような設計になっている。ただし戦闘指揮所(CIC)などの枢要区画は分厚い装甲に覆われている。

 そんな抗堪性(こうたんせい)に配慮された駆逐艦が(ことごと)く撃沈されたのだからEWFの火力の凄さがわかるというものだ。


「そこで、今回は水平線の彼方から攻撃します」とオスカー副官はビシッと地図を指す。


 まぁ、そうなるな。私も先日の教訓を元に〈アーレイ・バーク〉級を揃えたのも敵射程外からの超遠距離攻撃、つまりアウトレンジ戦法を想定しての事だ。


 アウトレンジ戦法自体は珍しい戦術ではなくて、相手が小刀ならよりリーチが長い太刀で。相手が太刀なら更にリーチが長い槍でと古くからある考え方だ。ドラゴンの攻撃が届かない距離から攻撃しようという単純な戦法ではあるが、アウトレンジ出来る武装がなければ成立しない話でもある。こちらがアウトレンジ戦法を仕掛けようとして相手のアウトレンジの方が優秀だったなんて話は実際にあるので慎重に行こう。


 引き続きオスカー副官の説明が続く。

「現状、我々に使える武装は艦対空ミサイルSM−二とSM−六。対地上戦にトマホーク巡航ミサイル。水上艦向けですがハープーン対艦ミサイルが有ります。今回は地上目標についてはトマホーク、対空目標についてはSM−六を使う予定です。状況によってはハープーンも打ち込む予定です」


 〈アーレイ・バーク〉級のフライトI、IIの垂直発射装置(VLS)は前方に二九セル、後方に六一セル。フライトIIA、IIIではそれぞれ三二セルと六四セルとなっている。これはフライトI、IIにあった再装填クレーンストライクダウン・モジュールが三セル分当てられていたが、洋上での再装填作業が廃止されたことで不要となったので三セル分増加したのだ。


 船舶用のクレーンは例えば一.五トンが使用荷重(SWL)のクレーンだと通常は一トン以下で使用するのだが、海の上では波があるので動揺があり、吊り荷が振り子の原理で揺れると遠心力によってワイヤーに対して加重がかかる。すると〇.五トンの吊り荷だったとしてもワイヤーが切れて吊り荷が落下してしまうこともあるそうだ。なので洋上ではキャニスターの再装填を安全に実行するのが難しいので再装填クレーンが不要になったのではと思われる。


 海上自衛隊の〈こんごう〉型も前方に二九セル、後方に六一セル。〈あたご〉型と〈まや〉型はそれぞれ三二セルと六四セルとなっている。なので現在編成済みの米海軍艦と海自艦の全セルを合計すると八二五六セルとなる。一つのセルに一基のミサイルが格納されているので八二五六発のミサイルを撃てるということになる。


 …………流石に今回の作戦で全部は使わないと思いたい。


 おおよその作戦概要が決まれば後は参謀たちの細かい打ち合わせのみで私には出来ることも少ない。後は出来上がった作戦計画を承認するだけである。夜食に用意されたハンバーガーを食べながら会議の様子を見守ってみる。そして熱い会議は夜遅くまで続くのであった。


評価、ブックマーク、誤字報告、お好きなミサイルなど有りましたら、お気軽にお願いします。

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