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禁断師弟でブレイクスルー~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~  作者: アニッキーブラッザー
第十一章

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第六百四十一話 母と婿候補

 ひとっ飛び……といえども、インターバルなしに一気に飛んでいけるわけではない。

 帝国まではそれなりに距離もある。

 だからこそちゃんと休んで英気を養ったりするのも当然必要であり、何よりも腹が減っては戦はできないため……



「「「「カリーッ♪ カリー♪ カリー♪」」」」



 一同は夜に森の中でキャンプを張って、クロン、エスピ、そしてスレイヤやアミクスを中心にカリーダンスをしながらカリーを作っていた。


「ウキー、やっぱカリーだよなぁ! 腹減った腹減った腹減ったー!」

「噂のカリー食えるんやから、ほんまワイも来てよかったわ!」

「不思議だね。朝食でカリーを食べたのに、僕ももう食べたくなっているよ」

「んあー、ガアルのお兄姉ちゃん、それがカリーの力なのん! カリーは朝も昼も夜も毎日でもいいのん!」

「カリーダンスか……こんど小生も集落の子供たちにやってみるか……」


 ノリノリで準備をするクロンたちを、笑顔で皿を楽器のように叩きながらゴクウたちもノリノリで笑顔を見せていた。

 

「んふふふ~、楽しいのです。みんなで食べるだけじゃなく、みんなで作るのも楽しいのです~」


 昼間アースに「気を抜きすぎだ」と一喝されたにも関わらず、クロンを中心に皆もピクニックのキャンプ気分。

 まるで宴でもして盛り上がっているような雰囲気で……


「だ、ダメだこいつら……」

『うむ……早く何とかせねばな……』


 もはやその雰囲気にアース、そして傍らのトレイナも頭を抱えるしかないような浮かれた状況下であった。


「っていうか、エスピなんてそれこそ昔は人類連合軍の勇者で、バリバリの軍人だったのに大丈夫かぁ? 相手は親父たちでも勝てなかったっていうハクキが相手だっていうのによ……」

『まあ、だからこそ実戦に入れば切り替わるのだろうがな……あやつとて、余裕とは本心では思っていまい……痛い目にもあったであろうし』

「そういやラルも魔王軍でバリバリだったし……まぁ、こっちにはそれこそ今では六覇のヤミディレまで―――」


 これから戦うのは六覇最強。そして、かつて父であるヒイロたちが束になってかかっても負けたという話しかない。

 戦争の最後では総大将であるトレイナが討たれたということで決着をつけることがなかったとはいえ、いずれにせよ現時点において全魔族の中では最強というのは間違いなかった。

 それこそ、アースも過去の時代で実際にハクキを目の当たりにしたときのことは身に染みて分かっている。

 しかし、今のこちらのメンツ、戦力では、確かに負ける気がまったくしないというのもあり、アースももはやここでこれ以上を言うことはできなかった。

 すると……



「コッソリの独り言も我らレベルであれば聞き取られるから気をつけることだな」


「ぬおっ!?」



 そのとき、カリーダンスで盛り上がっているキャンプの炎と一同から少し離れていたアースの傍らに、ヤミディレが腰を下ろしたのだ。

 

「お、おお……さ、流石にあんたはカリーダンスはしねーのか……」

「………………………」

「……ヤミディレ?」


 浮かれている一同と違い、ヤミディレの表情は硬い。

 そこでアースは……


(ヤミディレの空気が重い……そうか、ヤミディレは六覇だから、流石にハクキの力をよく分かっている。だからこそ、浮かれずに緊張感を保って―――)


 と、思ったのだが―――


「クロン様の御子様が生まれたら私もやろう」

「……は?」

「世話係としてその程度の遊戯もできねばならんからな……当然のことだ。で、いつ作るのだ? アース・ラガン」

「おま、お前もこんなときに何言ってんだよこの野郎! お前だけはと思っていたのによぉ!」


 ヤミディレもそこまででもなかった……と、思わず声を荒げてしまうアースだった。


「大体よぉ、何が世話係だよ……クロンが産んだらあんたの孫だろ」

「はうっ……ま、孫……孫…………………」

「おい、顔が緩んでるぞ! 本当にお前までそんな……あ~、もう、勘弁しろっての……」


 アースから孫という単語が出てきて、硬かった表情が緩み、口元が「にへら」となるヤミディレ。

 だが、せっかく隣にヤミディレが居るということで、アースは溜息を吐きながら……


「なあ、ヤミディレ……勝てるか? ハクキに」

「ぬっ…………」

「ぶっちゃけ、俺は過去の時代であいつの顔面にパンチしただけで、あいつ自身の本気の力はよく分かんねーんだよ……」


 六覇と度重なる戦闘をしてきたとはいえ、ハクキだけは未知数。

 それゆえの素朴な疑問。

 それこそ、トレイナですらハクキの力を認め、何よりも唯一の懸念はトレイナですらも「今のハクキの力」を知らないというところだ。

 それはヤミディレも、そしてゴクウやタツミヤですら知らないと言えること。

 だからこそ、それが唯一のアースの感じる不安な点であった。

 だが、その不安要素に対し、ヤミディレは……



「アース・ラガン……少し時間を欲しい……」


「……………ハ?」


「コホン……私が黒でよろしいでしょうか?」


「あ、え、あ?」


「……では、一局よろしくお願い申し上げます」



 ヤミディレが再び表情を引き締めた。そしてどういうわけか、ヤミディレは何故か敬語で意味不明なことを言い出したのだ。

 一瞬なんのことかまるで分からなかったアースだったが、ヤミディレはその直後……



「右上隅、星」


「あ?」



 その時点でもまだアースは何のことか分からなかった。

 だが……


『……ふふふ……』


 傍らのトレイナは微笑み……


『左下隅星』

「ッ?!」


 そう呟いた。そして、その言葉でようやくアースは全てを理解した。

 ヤミディレはもう分かっているということを。そして、そんなヤミディレが何を求めているのかを。


「……左下隅星」

「ふっ、右下隅小目!」

「左上星」


 互いに言葉を紡ぎ合う。しかし、その言葉は一つの戦いとなっていた。

 目の前には無いが、想像の中で二人は盤上で向かい合っている。


「天元」

「カカリ」

「ケイマ」


 それは、実際に盤を用意せずに棋譜を読み上げていき、互いの記憶を頼りに繰り広げる、『戦碁』であった。


『目隠し戦碁か……まあ、余とヤミディレでは何の支障もないが―――』


 そして数分後には―――――


『一刀両断せよ!』

「両断!」

「ッ!? ッ、あ……つ……っ……ぬ……」


 そして、互いにほぼノータイムで打ち合っていた目隠し戦碁であったが、数分の時を経てヤミディレの表情が驚愕に染まる。

 正直、アースはもうどういう展開になっているのかは全然分からないが、少なくともトレイナがヤミディレを圧倒しているということだけは分かった。

 その理解の通り、ヤミディレはそこで止まり……


「ふっ……格が違うか………当然だな………」


 観念し、しかしどこか嬉しそうに微笑みながら……


「負けました」

「お、おお、おお………」


 ヤミディレが頭を下げて敗北宣言をしたのだった。

 いくらルールとはいえ、自分の目の前でヤミディレがそんなことをするとは思わず、アースも流石に動揺してしまう。

 だが、アースは同時にヤミディレが別に自分に対して頭を下げているわけではないということも分かっていた。


「流石だな。勝てるわけがない」

「ヤミディレ……」

「私もかつてはあの御方の趣味は全て網羅しようと色々と学んだ……それこそ、あの御方の残された棋譜は何度も並べた。それなりに自信もあったのだがな……とはいえ、ここまで容赦なくというのは心地よい……我が神よ……光栄にございます。ありがとうございました」


 切なそうで、胸が締め付けられそうな、しかしそれでもヤミディレは嬉しそうで、どこか複雑な笑顔を見せてペコリと頭を下げる。


『うむ……』


 そのヤミディレに対し、トレイナも優しく微笑んで頷いた。


「六覇の肩書を得て、あらゆるものを学び高みを目指したこの私ですら……未だにあの御方の足元にも及ばないのだ……アース・ラガンよ。そう、六覇はあくまで魔王軍の大幹部ではあるものの、その力はあの御方には及ばない」


 そしてヤミディレは、今度はアースを見て、アースに対して語る。

 


「アース・ラガン。過去の世界で貴様も言っていたであろう? ハクキに対して貴様は――――」


――それに……それに、どんだけ大物だろうと、伝説だろうと……六覇最強だろうと……仮に『今』の勇者ヒイロより強かろうと……最終的には大魔王トレイナよか弱ぇんだろうが! 


「あっ……」



 かつてアースがハクキに対して言った言葉。

 エルフの集落で初めて対峙したアースとハクキ。

 その圧倒的な力で幼少期のエスピやスレイヤをも圧倒した。

 もはや絶望というその状況下で、立ち上がったアースはハクキに対してそう言った。


「ハクキがどうした。貴様はハクキよりも絶対に強い御方を知っているのだろう? 何を恐れる必要がある」


 そう言われてアースもかつてのことを思い出し、そしてそれを言うヤミディレに思わず笑ってしまった。


「はは……そりゃそうだ。大魔王トレイナより、ツエーわけがねえんだからよ……そうだ。勇者ヒイロだって全員がかりなんて卑怯な手を使わないと勝てなかったんだからよ」

「ふははは、そうだそうだ! 勝てるはずがないのだ! 私には分かっていたぞ。卑怯な手を使わない限り勝てるはずがないのだ。そう、貴様の父は卑怯者だ」

「まったくだぜ。勇者のくせによ~、一対一で戦えってんだ」

「まったくだ! うんうん、普通は勇者と魔王は一騎打ちというもの。私たちは分散させられミカドの足止め、ツナの最後の力で邪魔を受けて、あ~、忌々しい!」

 

 アースとヤミディレは互いに勇者ヒイロを批判しながら、それをきっかけに気づけば笑い合い、そして盛り上がっていた。

 それは、アースとヤミディレ、二人が出会ってから初めてのことだった。

 二人で話して笑い合うなど。しかし、今の二人にはもはや自然なことだった。



「あーーーー!」


「「?」」


「お母さん、アースとコソコソ楽しそうに何してるんですかー……じゃなくて、してるの! ずるいよです~!」



 そんな二人にようやく気付いたクロンがムスっとして慌てて駆け寄る。

 だが、クロンはムスっとしたのも一瞬で、すぐに二人の間に座り、二人の腕を引っ張って自分に引き寄せてくっつく。


「もぉ~、仲良しはみんなで仲良しなのです! でも、アースとお母さんが仲良しになったのは嬉しいです♪」


 そうやってニッコリ笑うクロンに、一瞬呆けるもアースとヤミディレはまた笑った。


「ったく~、ほんとノンキなお姫様だぜ」

「ふっ、何を言うか。クロン様に不安な表情をさせないことが貴様と私の役目であろうが」


 そして、アースとヤミディレを繋ぐきっかけとなったのは全てクロンの存在があったからこそ。

 クロンの存在が今のアースとヤミディレの関係を作った。



「なら、……何が来ようと勝つしかねえな、おかーさんよぉ」


「当たり前だ。クロン様を未亡人にするなど天地がひっくり返っても許しはせんからな。さっさとハクキを倒してクロン様と子作りだ、婿殿」



 そんな二人にとって共通の大事な存在であるクロンの温もりを感じながら、アースとヤミディレは互いに誓い合い、同時に―――――



『ダダダダダダ♪ 作品の無断記録はパナイ犯罪です♪ オレのルールにより罰金か死刑、またはその両方が課せられます』


「「…………は?」」


『ノーモア記録泥棒!』

 


 星空に、『アレ』が突如始まったのだった。


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【新作・俺は凌辱系えろげー最低最悪魔将】
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