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苦難の末、ようやく隣街へ


「ま、町だー! やっと隣町に来れたー!」

「これでひとまずは安心ですね」

「よしアグニャ、一安心したとこで町のヤツらがおうちに帰る前にさっさとゴロって人を探さなきゃ」


 二人はとうとう隣町へ着いた。時刻はもう夜中であったが、栄えている隣町は夜間営業している店も多かったので人探しにはまだ間に合う時間である。早速、司祭に言われた通り適当な人に声をかけることにした。


「じゃアグニャ、ちょっくら行ってくるわ」

「あ!! 待ちなさい! あなたが他人と会話すると面倒に!」


 声をかけようとしに行くエシャーティを引き留めるが、間に合わず。アグニャはあまり知らない人に話しかけるのは得意ではなかったが、かといってエシャーティに任せてしまうと初対面の相手だろうがお構いなしに偉そうな態度で接するからトラブルになるのは目に見えている。


「ね、あんた! ゴロって人知ってる? 知らなかったら失せていいよ」

「ん?」

「ああ! ごめんなさい悪気は無いんです、ちょっと人探しをしてるだけなんです、気を悪くしたら謝ります!」


 案の定な言い方をしたエシャーティの頭をグィーと無理やり下げ、アグニャは謝った。しかし、アグニャの嫌な予想とは裏腹に友好的な言葉が飛んできた。


「別に気にはしないさ、それにゴロって町長の事だろ? こちらの用事が済んでからで良いなら、町長の家まで案内できるが」

「なかなか話が分かるね。待っててやるから……ぐァ!」

「バカタレ! あなたはだまらっしゃい! あ、待ってますので用事を済ませたらまたよろしくお願いします」

「おう。君たちおもしろいな、じゃすぐ済ませるから待ってろ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「しかし、ゴロってやつは町長とはね。司祭の知り合いにそんなのがいるとは驚きだよ」

「と言うより、私たちは外の世界の司祭を何も知らない気が……」

「いやたぶん村でのほほんとしてる司祭を見るに、村の外でもあんな感じだよ」

「そうでしょうか……そうでしょうね」


 二人はおしゃべりをしながら、さっきの町人が戻ってくるのを待っていた。見慣れぬ土地でずっと何かを待つのは、少し不安になってくる。二人はお互いに、親しい話し相手がいてよかったと心から実感していた。


 少し経つとあの町人が戻ってきた。


「待たせたな。町長の屋敷はこっちだ、着いてきな」


 ランプを揺らめかせながら、町人は二人を案内し始める。さっきも気になったが、この町は夜も開いているお店がたくさんあるようだった。それに、そもそもお店の絶対数が村とは比べ物にならない。


「ねえアグニャ、食事をするお店が隣同士にあるよ。変だねぇ」

「どうしてわざわざ飲食店の隣に飲食店を作るのでしょうね。お客の取り合いが起きそうです」

「え、別に何もおかしいとこはないだろ。あっちはうどん屋でそっちはカレー屋だから、客の取り合いにはならんよ」

「ふーん。というか、今日パンしか食べてないからお腹すいたね……」

「我慢です。お金はあまりないし、ゴロさんに会うのが先決ですし」


 そんな話をしながら、夜なのに明るい町を三人は進んだ。繁華街から離れるにつれて、だんだん辺りが暗くなっていったのも二人の印象に残った。


「ここら辺は村とあまり変わらない雰囲気ですね」

「さ、シスターさんたち、そこの豪邸が町長のお宅だ。夜だけど、あの門の所にいる人形にワケを話せば会ってくれるはずだ。じゃあな」

「ありがと!」

「見返りも無いのによくしてくれて本当に助かります」


 町人に礼を告げると、今度は豪邸を眺めてみる。門は閉まっていて、辺りに人の姿はない。そして町人の言った通り門の所に人形が立っていた。置かれていたのではなく、立っていた。


「人形ってこれだよね。話、通じるか?」

「分かりません。が、あの人は人形に話せと言っていたし試してみましょう」


 町人に言われた通りに、アグニャは人形に向かって話しかけてみた。


「こんばんは、人形さん。えー、あの、ゴロさんに用事があるのですが」

「ふ、ふふ、人形さんって、今のアグニャすごいヘンテコリン……」

「うう、笑わないでエシャーティ、自分でも今のは絶対アレだと思ったのに……」


 今の行為について二人できゃっきゃしていたら、なんとアグニャに話しかけられた人形がいきなり浮かび上がった。そして門を飛び越え、豪邸の一番上の階の部屋の窓を開けて入っていったのだ。


「へ、へぇ~。イマドキの門番はキュートなんだねぇ」

「ああよかった、危うく私はいい歳してお人形に挨拶する変な女になるところだった……!」

「そこは変わんないんじゃない」


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