海水浴だけがビーチの楽しみではないっ!
「いやー、ほんとにありがとうございました」
「こちらこそ旨い料理が食えて最高の気分だ」
「中々楽しかったわよ。気をつけて帰ってね」
山のように釣れたキスは天ぷらや塩焼きへと変貌を遂げ、三人に非常に豪勢な夕飯を提供してくれた。明日も釣りをしようとエシャーティたちは声を掛けたが、今日はたまたま東海岸へ釣りをしによそから来ていただけでもう帰るのだと釣り人は言う。名残惜しい別れだが二人は笑顔で釣り人を見送った。
「さて、それじゃアレをしますか」
「うふふ、いよいよアレをするのね!」
「アレは綺麗ですが危ないので、きちんと準備をしましょうね」
「はーい!」
イソイソとカバンからバケツを取り出して海水を汲みに行くエシャーティ。アグニャはテントの周りにあった燃えやすそうな布などを片付け、火をつける道具も準備をした。
「ふぅ、これで花火ができますね」
「アグニャ〜、いっぱい汲んだ〜」
「よくがんばりました、えらいです」
「よーし、じゃ早速開けちゃおう!」
海の家で購入した花火セットを開封し、各々気になった花火を手に持っていよいよ点火用のロウソクに火を灯して準備完了。エシャーティは最も巨大な筒型の花火を選び、アグニャは形がかわいらしいネズミ花火を手に取った。
「それじゃあたしからやってみるね」
「どうぞどうぞ」
「よっと……わわわ!!」
「凄まじいスパークです!」
「おりゃ、喰らえ〜!」
ババババと勢いよくスパーク火花を撒き散らす手筒花火を砂で作った山に向ける。ブスブスと火花が砂に衝突し、砂の山がえぐれていく様はとても爽快である。エシャーティがエルフ仕込みの魔法をぶっ放したほうが迫力ある、などという無粋なツッコミはいけない。
「さて、こっちもつけましょうかね」
「いいねいいね、どんな花火かな」
「丸っこいですしタンポポみたいだったりして」
「なるほど、ふわふわって燃えるのね」
きっとこのフォルムはかわいらしくのほほんとした花火に違いないと想像する二人は、ねずみ花火に火を付けるとすぐ足元にポイッと置いてしまった。もうこれから起こる悲劇は皆さんの想像に難くないだろう。
「ぎ、ぎえー!!」
「どわわわわわ!」
「暴れまくるじゃないのコレェー!」
「てい、ていッ!」
「おお、アグニャナイス!」
暴れるねずみ花火を勇敢にもローズリリーで一刀両断するアグニャ。が、なんとも運の悪いことに真っ二つになったねずみ花火の両方に火がついた状態で切れてしまい、ビタンビタンと火を散らしながら跳ね回る物体へと変化してしまった。
グルグル暴れ回るだけならともかく、ビタンビタン跳ね回る状態の花火を相手にするのはアグニャでは不可能。バケツに汲んだ水も跳ねられていては掛けにくい。となると解決策は一つ……
「あたしの魔法の出番ね!」
「そ、そうでした、魔法で何とかしてください!」
「ふふん、海の近くだから液素が充満してるわ」
「液素がよくわかりませんが、なんか良さげですね」
「最高よ! というわけで、スプラァァァ!」
力強い水圧のイメージをしやすくするため、エシャーティは思い切り拳を握って大気中に満ちていたあらゆる水分の源たる液素を集約、凝縮し、そのまま全力で二つの炎に向かいダッキングアローを放つ。するとエシャーティの小さな手の拳骨から凄まじい勢いで純水大瀑布が噴射され、火どころか空気の層にまで穴を穿ちながら花火を消し飛ばした。
「やー、今のはすごかったね」
「もしかしてコントロールできてたのですか?」
「あ、そういえば若干制御してた!」
「なんとまぁ」
凄まじく水を圧縮したせいで空気の層が歪むほどの魔法を発射したことに驚きを隠せないアグニャ。しかし当のエシャーティは何事も無かったかのように、新しい花火を手にとって遊ぼうとしていた。その様子を見ると、なんだか色々考えるのがアホくさくなったので、アグニャも次の花火を選ぶことにした。
二人が次に選んだ花火がたまたま同じ花火だったのがなんだかおかしくて、笑いながらどっちが長く線香花火を落とさずにいられるか競争したのが一番地味で、けれど一番印象に残ったのがエシャーティの記憶に残り続けている。
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