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民衆に知られぬ王たちの秘密


「兄妹なのを隠してるのは成り行きで、ってことだったのね」

「そうだな。世間的には俺とシロはただの、ダマスカスが崩壊した時に偶然現れた2人の指導者ってわけだ」

「しかし、上手く2人の思惑通りに事が運んでいるのにどうして20年も兄妹で戦争を?」

「そうだな、それは俺の才の無さがシロの足を引っ張っているのだろう」


 どこか寂しそうな目をしながら、クロは語り始める。


「俺がシロと離ればなれになり、一国の為政者としてシロと対立するようになってしばらく経ったある時、この戦争を終わらせられる一つの方法を思いついたのだ」


 それは国のトップである自分が相手のトップであるシロに直接倒されるという、かなり豪快な思いつきであった。しかしそれは最も被害が少なく、最も手っ取り早く、最も民が納得するだろう方法だとクロは意気込んで語る。

 自分がシロに倒されれば民衆はシロに従うほか無い。シロならば俺がいなくとも天性のカリスマで上手く国をまとめあげ、ゆくゆくはかつてのダマスカスのような栄華へと民を導いてくれるだろう、と。


「不思議なことに、その方法を思いついた頃からシロが最前線に立って兵を指揮し始めたのだ。ちょうどいいので俺も最前線に立ち、シロと毎度のように直接対決していたのだが……」

「二人はいつも相討ちなんだよね。まあ民衆は王自らが敵の大元と死闘をしてくれるから、二人の支持は上がりまくり。でもシロガネとクロガネの対立は深まる一方だね」

「そうなのだ。俺がシロに倒されれば万事上手くいく。シロは俺よりも才能に溢れてるから敗戦国のクロガネの民も不便しないようやってくれるだろうに……」


 つまりクロはさっさと負けたいのだ。しかし兵が大勢見ているので露骨な手加減もできず、シロの攻撃を全て食らうしか手はない。だがなぜかシロはシロでこちらの攻撃全てを真正面から食らうのだ。あえて避けやすいような攻撃も、律儀にもらっていくという。


「毎度相討ちになるのは、俺たちのあまりの死闘に感動した兵たちがエキサイトして大乱闘になるので、泣く泣く被害を抑えるため撤退するからなんだ」

「相討ちが続いてもう五年以上は経ってるんじゃないかな。シロもクロもよくやるよね」

「なるほど、クロさんとしてはそういう思惑があったのですね」

「しかし国の再興ためとはいえ、妹に兄殺しの汚名やその後の面倒や重圧すべてを押しつけるの?」


 そのあまりにも突然の不躾な一言に、思わずアグニャはビンタした。エシャーティも自分の発した言葉がどれほど失礼なのか気付き、とっさに謝罪した。


「ご、ごめん。今のはすごく無神経だった」

「良いのだ。もうずっと前にこの優男から同じ事を言われ、ずっと前から覚悟は決めているのだからな……」

「そうそう。さ、気分転換にみんなで無駄に広い城下町にでも行こうよ」


 ピリついたアグニャとしおらしくなったエシャーティを見兼ね、ゴロがそう提案した。この雰囲気なので二人とも大人の対応に身を任せることにした。


「そうだな! ようし俺も民衆に顔を見せるとしよう。前夜祭を半日前倒しだ!」

「いいよクロ、そうこなくちゃね!」

「ちょっとクロ、王様なんでしょ? 準備とかやることあるんじゃないの?」

「はーははは、知らぬわー!」


 大人がゴキゲンだと子供も楽しくなってくる。はしゃぎまくるクロとゴロを見ていたら、なんだかエシャーティとアグニャもつられてはしゃぎ始めていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 クロガネが国王の突然の行脚に沸いていた頃、シロガネでも明日の建国記念日に備えて準備が進められていた。と同時に、シロのある作戦も着々と進行していた。


「シロ様、いよいよこの戦争にケリをつけるのですね!」

「ああ。しかし明日の無謀な奇襲にそなたの部隊を使ってすまんな」

「いえ、こんな光栄な大役を仰せ仕えるなんて、我が新兵器テスト部隊のみなも感無量でありましょう」

「なあレンよ、もしもだがな、妾がいつものようにクロガネの王と一騎討ちになり、敗れたとしたら……」

「わかっています、シロ様。もう何度もこのやり取りをしているではないですか」

「……そうだったな。ありがとう、レン」


 豪華絢爛なシロガネの城から、建国記念日にむけて賑わっている城下町を眺めながらそんな会話が交わされていた。


(悪用されていないか憂いていた父上の愛剣も見つかった。きっと兄上なら妾の亡き後の苦難も乗り越え、悲願の再興を叶えらよう……)


 机の上には、建国記念日を狙いクロガネに少数で忍び込み一気にカタをつける内容の計画書が置かれていた。


「ではシロ様、私はクロガネの動向の監視に戻ります」

「うむ。そなたの千里眼があったからクロガネが建国記念日に兵を一堂に集めると判明し、この計画に現実味が出たのだ。助かったぞ」


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