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またもゴロ再び


 その声の正体はゴロであった。なにやらゴツい鎧を着けた人形を連れ、いつものようにニコニコとこちらを見ている。


「ゴロじゃん! どうしてクロガネに?」

「最近もらったクロの手紙に君たちが来たって書かれてたからさ。建国記念日も近かったし、君たちの様子も気になるから来ちゃった」

「あたしたちがずっとここに留まるとは限らないのに、思い切ったわね」

「入れ違いになったらなったでクロに前々から会いに来いって言われてたしね」


 ゴロが門番の近くへ向かうと途端に敬礼し、ようこそおいでくださいましたとか何とか言い始めていた。


「この二人はぼくの友人なんだけど、クロに会わせてあげてもいいかな?」

「どうぞどうぞ、君たちこんな偉い人の知り合いだなんて隠すなよな! 俺の査定に響くぜ……」

「次あたしの足を止めることがあれば覚悟しときな」

「あなたは偉くもなんともないですよ?」


 想定外の助けがあり、無事に城に入ることが出来たエシャーティ一行。クロのところへ向かいながら、ふとゴロに疑問を抱く。


「あんた町長でしょ? 前見たときは代理なんていなさそうだったけど、こんなとこ来ていいの」

「ぼくの代わりはぼくの人形たちが立派に勤めてるよ。まあ主に案内人形の子がね」


 案内人形はたしか、ゴロの近くによくいたおしゃべり出来る人形だ。他の人形に比べて大きかったし頭も良さそうで、なにより話をすることが出来るので、確かに彼女がいれば町長の代理も短期間はこなせるだろうと合点がいった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「久しぶりだねクロ、王様は大変かい?」

「ゴロじゃないか、女のことを報せ(しらせ。手紙の事)に書いたとたん来るとは、そなたも軟派になったな!」

「質問に皮肉で返すような男になったなんてぼく悲しいな。王様向いてないんじゃない?」

「ふはは、その通りだ。王など向いておらん。だからシロかそなた辺りに今すぐにでもなすり付けたいわ」

「ゴロたちめっちゃ仲いいね」

「しばらくそっとしときましょう」


 ゴロとクロは昔からの仲であると一目で分かるくらい、再開を喜びあっている。軽口を叩きあってはいるが、二人の顔は抑えきれぬ満面の笑顔ばかりが浮かんでいる。

 数十分も再開の感動を味わった二人は、エシャーティたちもいたことに気づいて申し訳なさそうに声をかける。


「ごめんごめん、君たちもクロに用があるんだよね」

「あたしたち邪魔者だったら今度でいいわよ」

「気を悪くしたなら謝る。そうだ、シロには会ったか?」

「会った会った、兄妹なのも聞いたしダマスカスの事も教えてもらったよ」


 そして本題へ入る。二人はローズリリーをクロに見せて、反応を伺う。しかしクロは特に気にする素振りを見せないので、シロに言われた通り刀身を見せてみる。するとクロはうってかわって驚いた様子になった。


「あのシロが初対面相手におしゃべりをするなんておかしいと思ったが、まさかこんな物を携えていたとはな」

「どうしたんだいクロ、このなまくら仕込み聖十字がなんだっていうんだい」

「じっくりと見なくても分かる。黒鉄をこんな使い方するのは今はなきダマスカスくらいだ。二人はどこまで事情を知っているのだ?」

「そうねえ、これはシロとクロのお父さんが愛用してた剣って事くらいかしら」

「なるほど全部知っているのだな」


 ローズリリーをまじまじと観察しながら、クロはなぜシロがこれを手元に残さずにみすみすと返したのか聞いた。二人は昨日の出来事を説明すると、なるほどとクロは納得した。確かに今ローズリリーが手元にあっても、飾るしか使い道はないなと。


「ゴロはこれについてなんか知らないの?」

「司祭とはかなり長い付き合いだけど、こんなのを持ってること自体知らなかったよ」

「司祭がもしかしたら何か知っているかもしれませんが、少し事情があってしばらく会えないのです」

「そうか。まあ父上の遺産が無事でなによりだ。礼を言う、ありがとう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 クロと仲の良いゴロもいるし信頼もかなり得たと踏んだエシャーティは、思いきって昨日感じた疑問をぶつけることにした。なぜクロたちは兄妹なのを隠しているのか、なぜ兄妹なのにわざわざ戦争を仕掛けあっているのかを。


「ねえ、なんでクロたちは兄妹だって国民に知らせてないの?」

「父上は実は俺たちの存在を公にしていなかったのだ。なので父上が死んだとき、混乱した民衆に追い討ちで突然の公表をしても悪手にしかならない」

「確かにあの時は凄まじい状況だったねえ。ぼくもあんな青かったクロたちがここまで立派に王様できるとは思わなかったなぁ」

「ゴロさんってそんな昔からクロさんたちと知り合いだったんですね」

「と、いうよりクロたちのお父さんに会ったこともあるしねぇ」


 その一言にエシャーティたちは仰天した。まさかこの一見平凡な男が王家一族と何世代にも渡り交流していたなんて。というよりも、その割にはゴロは若い気がする。クロが今40歳くらいだとすれば、その父は若くても60歳だろう。しかしゴロはパッと見ではクロより若くすら見える。


「うーん、村の外の世界って不思議なことばかりなのね……」

「私も自分の知っている世界がいかに狭いか、痛感しました……」

「あはは、まあぼくたちより司祭のほうがよっぽど奇想天外だろうけどね」


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