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兵は語る


 城へ入り、レンの居どころをそこら辺の兵に聞き出して彼女の私室を訪ねた二人。快く部屋に入れてくれたので早速質問することにした。


「わざわざ私の部屋に来るなんて、もしかしてシロガネの兵になりたいのか?」

「そうじゃなくて聞きたいことがあるの」

「レンさんってこの国がシロガネとクロガネに別れた時の事とか知ってますか?」

「ああ、もう二十年近くも前の事だな。あの時の私は軍事学校を出たばかりで若々しくてなァ……」


 唐突に遠い目をして昔を懐かしみだしたレン。どうやら昔のことを語りたくてうずうずしているようだ。


「二人はダマスカスの事は知ってるか?」

「ええ、シロガネとクロガネの合体版でしょ」

「知ってるなら話は早いな。国中が混乱に陥った時、二人の若き英雄が現れ驚くべき手腕で民衆をまとめたんだ」

「それも知ってるけど」

「そうか、しかし私は当時は新米士官であまり歴史的事件に関わってないんだよな……あ、そういえばあれがあるな」


 そういうと、何かを思い出したかのように本棚をあさり始めた。レンはなにやら古びたノートを取り出し、開き始めた。


「おお、そういえばこんなこともあったなー、懐かしいなぁ」

「そのノートはいったいなんですか?」

「昔の日記。お、この辺りがいいな」

「え、みたいみたい!」

「恥ずかしいからだめ。じゃ読むぞ」


 二人の英雄は民衆を各々で1つずつにまとめあげた後、それぞれがトップに立って二つの国を建国した。国という壁が出来たことで民衆はひとまずは落ち着きを取り戻すことができた。

 しかしそれは間に合わせの沈黙であって、平和になったとはとても言えない状況である。そんな民衆の不安を察知し、英雄から国王になったシロとクロはかつてのダマスカスを己の手で復興しようと戦争をし始めるのであった。


「特にシロ様はいつだって人智を越えたような作戦を打ち立てて、無駄な血を流さぬ戦いをなさってくれているのだ!」

「なるほど、二人はダマスカス再興のために戦っているのですね」

「シロ様のためならば、私たちシロガネの兵は命など全く惜しくない。我ら民衆はいつでもダマスカスをシロ様の物にしてみせるのに、慈悲深いシロ様はいつも無理のない命令しか出さぬのだ」

「ほんとに心酔してるのね。しかし何か引っかかる気がする。もっと二人の間には、誰も介入できなさそうな何かが……」

「ま、昨日うわさのクロガネの国王に会ったが、思っているよりはまともそうだったし、もしかしたらシロ様とかつては戦友だったりはするのかもな」

「え? 戦友もなにもあの二人は……もが!?」

「あの二人が……なんだ?」

「あ、えと、エシャーティはたまに放送禁止用語を言っちゃうクセがあるのでお気になさらず!」

「ぶはぁ! こ、ころすきか!」


 どうやらシロとクロが兄妹だと言うのはあまり民衆には知られていないようなので、アグニャはとっさにエシャーティのお口に反重力を生成しちゃっているカバンを開いてぶち込んだ。しかしいつ見ても因果が狂っている作りのカバンである。


「まあとにかく、質問に答えてくださってありがとうございました」

「お、おう、こんなことでよければいつでも話してやるが……大丈夫か、エシャーティ」

「大丈夫じゃない! おいアグニャ、治療しろ!」

「はいはい、それでは失礼しました」


 口が女の子にあるまじき状態になっているエシャーティを治してあげながら、アグニャは部屋を出るのであった。


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 すっかり夕方になったので二人はとりあえず宿を取った。さすがシロガネの城下町だけあって豪勢なホテルもあったが、お金がもったいないのでちょっと路地を行った所の安宿にした。


「ゴロからもらったお金まだまだあるし、スウィートルゥームでもよかったじゃん」

「昨日はクロさんのお城で休んだでしょう、贅沢は頻繁にするものじゃありません」

「まあいっか。でもさっきレンから話を聞いてさらに分からないことが増えたわけだけど」

「え、どこら辺が?」

「アグニャって割りとなにも考えずに聞いてるだけだわね……」


 バカにされて少し不服なアグニャであるが、時にエシャーティは鋭いカンを利かせることがある。どうせ深読みしすぎだろうと思ったが、エシャーティの抱いている疑問を聞くことにした。


「まずシロとクロが兄妹なのを民衆に隠していること、そして兄妹なのに20年も戦争してる理由はなんなのか……」

「確かに兄妹だと公表すれば一気に国は1つにまとまりそうですし、兄妹ならなおさら戦争をする理由も分からないですね」

「あたしはさ、実はちょっとしたスレ違いだと踏んだわ」

「それ以前も聞きましたが。まあそこまで気になるなら明日クロガネに一度戻ってみましょう」

「どうして?」

「ローズリリーをクロさんにも見せた方がいいでしょうし、そのついでに話を聞けばいいじゃないですか」

「ああ、なるほどね」


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