末席神の東方奇譚 続
末席神の東方奇譚の続編となります。
本当は、末席の破壊神メインで書いて居たのですが、一寸ずつ息抜きで書いて居たら、1作分出来たので投稿させていただきました。
これは、天界で居場所のない神が、日本の神社で居候する物語である。
居候神メディアの朝は早い。
と言うより、睡眠を必要としないため、寝てないのだから早くて当然なのだ。
境内を甲斐甲斐しく掃除する。
正に神の鑑み。
『ふう、綺麗になったのぅ』
掃除の終わった境内を見て満足に呟く。
「きたないわ」
突然湧いて出た、この神社の主の六瓢神にダメ出しを食らう
『どこが汚いんじゃ』
「アンタよ」
ガシッと頭を鷲掴みにされ、ぷらんっと持ち上げられる
『おおぉぉぉ…』
「アンタ風呂入ってないでしょ、どーも脱いだ洗濯物が出てないんで、おかしいと思ったのよ」
『ま、まて六瓢、儂等神は代謝しないので、垢は出んから別に良いじゃろう』
「良い訳あるか、アンタ風呂どこか、御祓の沐浴もしてないでしょ」
『だって穢れないんじゃから入る必要なかろう、節水してエコってやつじゃ』
「ダメよ」
にっこり笑って裏手にある滝壺にフルスイングで投げられる。
『にょわあああぁぁ、せめて行衣に着替えてからにせんかぁぁぁー』
ドバシャッと水飛沫を上げ滝壺に中に浮かぶ
「ホールインワンね」
それはゴルフ…
酷い目にあった。
本来、息も吸わない霊体みたいなもんじゃから、溺れて死ぬことはないが、服がの…
巫女服どころか下着まで濡れてしまったので素っ裸にバスタオルで部屋に居ると
巫女さんバイトの綾乃ちゃんがやってくる
「大丈夫?御祓中に足滑らせて深みで溺れたって聞いたけど…」
六瓢…嘘ばかり言いおって
「泳げないなら今度教えてあげよっか?」
『綾乃は泳げるのかの?』
「うん、こう見えても私、水泳部なんだよ」
『ほー、バイトと部活とで大変じゃの』
「巫女のバイトは休みの日だけだから」
「でもね、最近部員が何人も溺れる事故が多発してて、部活が暫くお休みなの」
「不思議なのは、溺れたのは大会出場候補の泳ぎの上手い人ばかりで、部活終わった後に自主練し朝も早くから練習するような先輩達なの」
『その溺れた先輩とやらはいつ発見されるのじゃ?』
「んー朝方、顧問の先生が見に行くとプールサイドに倒れてるんだって」
「倒れてた先輩全員が水を沢山飲んでるんで、溺れたって事らしいよ」
「でも、メディアちゃんが無事で本当によかったよ」
『うむ、心配かけたの』
「あ、そろそろ休憩終わるんで行くね」
そう言って手を振りながら部屋を出ていく。
入れ違いに部屋に入ってくる六瓢
『やっぱり聞いて居ったか、どう思う?』
「アヤカシの仕業でしょうね…」
『綾乃の学校も神佑地の中じゃし、行くのじゃろ?』
「ええ、朝発見されるって事は、事件が起こるのは夜よね…今夜行くわよ」
『了解じゃ』
それまでに服乾けばいいのう…
日が落ちて夜も更けた頃
儂と六瓢は綾乃の学校の外にいた。
『どうすんじゃ、警報あるぞ』
神眼で学校見ると赤外線が張り巡らされている
「愚問ね」
そう言うとメタモルフォーゼで鳥になって空から侵入する
成る程、メタモルフォーゼか
古来より神は、色んな動物に化ける事ができたのは、神話を読んで貰えばわかる。
謂わば神特有のスキルである
続いて儂も鳥に化け、刀の入った筒を掴んで後に続く
屋内プールの天窓が一部半開きになっていたのでそこから中へ入り元の姿に戻る。
真っ暗だ。
とは言え、電気をつければ御近所から通報されてしまうので、このまま灯り無しで行く
まあ、2柱とも神眼持ちなので、視界は昼間と変わらんから問題ない。
『ふっふっふ、今日の儂は一味違うのだ』
『実はの、今夜プールと決まった時に通販サイト天蔵のお急ぎ便で水着を買って置いたのじゃ』
『これで、戦闘になって水に落ちても問題ない』
「あー神社出る時に何か届いてたの…アレかぁ」
『しかも、もう下に着てきた』
ジャーンと上着を脱ぎ捨てる。
「ぷっ、何よそれスクミズじゃない」
『人気商品じゃったぞ、しかもXXSサイズがあったし』
「あははは滅茶苦茶似合うじゃない」
『でもちょっと胸がキツいのじゃ』
「アンタ生意気にCだものね…」
その時、水が跳ねた
「現れたみたいね」
『そのようじゃの』
刀を取出し居合の構えをとる。
プールの中から高水圧の水鉄砲が来る。
横に跳んで避けるが、直ぐ様次弾がくる
切れ間なく飛んで来る水弾に、そのままプールサイドを駆け抜け避け続ける
相手が、此方に気を取られている間に、六瓢が御札に何やら術を唱えた後にプールに投げ込む
刹那
雷撃がプールを襲う
ぎゃぎゃぎゃと悲鳴をあげて河童がプールサイドに出てくる。
『コヤツが今回の犯人か』
そう呟いた隙に、河童は両手の間から水を吹き出す。
水は六瓢を濡らした。
「やられたわ、御札が濡れて使い物にならない」
また河童はプールに飛び込む
『じゃあ、儂の雷撃魔術で…』
「ダメよ、アンタが魔術使ったらプールごと消滅するでしょ」
『じゃのう…』
仕方ない、刀で倒すかの
しかし、中央部に居てプールサイドに寄ってこないのじゃ
神眼で水の中の河童を追う
河童の影に向けて居合の鎌鼬を放つ
しかし、水がクッションになってしまい鎌鼬が水底まで届かない。
そんな儂を嘲笑うかのように、プール中央から水鉄砲を撃っては沈んで逃げるを繰り返す河童
だんだん苛ついてきた。
確か、テレビで片足が沈む前に次の足を前に出せば水の上を走れるとかやってたの
河童が水鉄砲撃ちに水面に上がってくる
今じゃ!
右左右左と素早く駆けて水の上を走る
お、できた!
そのまま顔を出す河童に、走り抜けながら斬撃を見舞う
『我流、散華』
河童をバツ斬りにするが、技を放つ時の軸足に時間掛けすぎて水走りが失敗する。
そのまま水中へ…水着で良かった
『うへぇ…塩素が苦すっぱいのじゃ…』
「アンタ水走りなんてできたんだ?」
そう言いながらプールから引き上げてくれる六瓢
『あーあれはテレビでやってたから真似してみただけじゃ』
「テレビって…あれ、お笑い番組じゃない」
通りで、テレビの芸人が水に落ちてばかりじゃった
「ところで、アンタ着替え持ってきて無いけど、どうすんのよ?」
あ!
そうじゃった、下に水着を着込んで来たんで着替えがない
「まさか、スクミズで外歩いて帰る気じゃないわよね?」
『…』
「同類の変質者と思われたくないから先帰るわね」
じゃっと先に帰ってしまう
『ちょ、六瓢?着替え持ってきて欲しいのじゃあぁぁ~』
深夜の学校に、スクミズ神の声が木霊するのだった。
こちら、末席神の東方奇譚は不定期になりますが、また1作分溜まり次第投稿させていただきます。
読んで頂きありがとうございました。