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さよなら、せかい  作者: 金甘
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生贄はサクリファイス

初めての投稿です。

楽しんでいただけたら幸いです。

おっす、俺の名前は榊太一。27歳独身、彼女募集中な半フリーター。

まぁ、身長と筋肉以外は、どこにでもいるような男だけど、腕っ節には結構自信あるぜ!


「あー、えっと、どこだここ?」


頭の中で自分のプロフィール(合コン用)をおさらいして見たものの、状況は変わらない。

ちなみに、今の状況は、

薄暗い納屋のような場所で、

足に鎖

手に縄

体にも縄

ようするに,緊縛、監禁された状態だったりする。

いやーん,エッチィ。

・・・・・・こんなことされるような恨みを買った覚えはないんだが、なぜこんな理不尽な目にあっているのだろうか?

今まで清く正しく生きてきた俺にあんまりな仕打ちだろう。

彼女をひどくふった覚えもないし(みんな俺をふって行った)、犯罪も犯していない。近所のヤンキーは殴ったけど和解済みだし。

まぁ、物騒な現代社会、理不尽な恨みを買う機会はいくらでもあるんだろう。『そで擦り合うも他生の縁』というよりも、『そで擦りあったら殴られる』がふさわしい社会だからな。

全く、日本の未来はどうなることやら。


「おお、これなら久留里神様も喜んでくださるだろう!なんと言っても黒髪黒目、このガタイならば、食いでがあるに違いない。」


おれが日本の未来を憂いていると突如納屋の中に灯りが差し込んだ。

眩しさに目をすがめると、そこにいたのはでっぷりと肥えた腹の親父。

・・・・・・うわぁ、こういうやつって俺の中で対外悪人なんだよねぇ。

買春で捕まった高校の時の陰険教頭にそっくりだし。


「よくやった。流石村一番の魔術師、アルザス・ユースタリアだ!!」


「恐れ入ります。」


おっと、逆光であんまり見えなかったけど、白いマントのお方がもう一人いた。

ひょろひょろな体格は俺の半分の厚みしかないように見える。

こいつはあれだな、日本が誇るOTAKU的な何かの香りがする。しかも普通のおたくじゃなくて、引きこもった部屋で掲示板的なもので論客やってそうなやつ。基本他人disってるっていう感じのDQN。

俺のバイト先、というか実家でもある空手道場には、そういう子供を心配した親が無理やり空手で根性を叩き直してくれ、と連れて来るケースが少なくない。

ちなみ普通のオープンオタクは、『マジあのアニメのナントカちゃん萌えだよなー。あ、空手?やるやる。って訳で『ミラクル・マリン・キック♡』教えて』っていう感じのオタクだ。

そう言う好奇心が旺盛なタイプのヤツは上達も早い。

基本的にオタクの方が普通の奴らより上達が早いから、ま、なんにしろ熱中できるもんがあるのはいいんだろうなと思う。

というか俺だって、立派な格闘技オタクだしな!

空手だけじゃなくて、色々な格闘技をかじっているのは親父兼師範には内緒にしておいてくれ。


「ていうかさー、ここどこな訳?」


「ひっ、しゃべった!!」


いやいやおっさん。いくら俺より20cmくらい背が低くて20キロは重そうなあんたでも、喋っただけで怯えるってどうよ。

そういや、教頭のヤツも俺があいつのこと見るたびにビクビクしていたっけ。

俺はただ単に生ぬるい気持ちでヤツのカツラを見ていただけなのに。

カツラの装着角度が日によって微妙に違って面白かったのだ。悪気はない。


「長、ここは私が。」


すっとまえに進むオタク。

よくみれば骸骨みたいに生気がない。

あー、現実と妄想が区別つかなくなっちゃって人刺しちゃうようなオタクなのね。


「ここは、マリガ村。ここの村長が信仰する久留里神様の生贄になるべく、おまえは私に召喚されたのだ。」


どや顔で言うオタク。

・・・・・・マジうざいし怪しい。


「久留里様は、一刻も早く生贄を求めておられる。今夜、贄の儀式を行うまでが、お前の残された時間。せいぜいこの暗い場所で楽しむがいい。」


そして高笑い。

・・・・・・あり得ない。

そしてそのまま出ていく悪人コンビ二人。

マジあり得ない。

再び暗闇が訪れた納屋の中、俺は少し某然としていた。っていうか、人の話聞けよな。

しかし、ぼぉっとしていられないのが世知辛い現実ってヤツな訳で。


「あー、どうすっかなー。流石に27じゃ死にたくねー。」


ぼやきながら、足の鎖を引っ張ってみる。地面に杭を打って繋がれた足をぐっとひきよせれば・・・・・・『ずぼっ』

まさかの、杭が抜けるというおち。


「なんだ?」


結ばれた両手を横に引けば、ぶちぶちぶち、縄が見事なまでに引きちぎられる。

やっべ、これ、簡単に脱出できるんじゃね? なんか嫌に脆弱な拘束だ。

自由になった手で体の縄をとけば、はい、自由の身。




「な、なぜ!?ぐぎゃ」

「クソッ、ひごわぁ」

「ひっ、や、やめろ!!」


まぁ、おれに策を弄するなんて言う頭があるはずもなく、捕まったらもう一回逃げればいいかなぁなんて言う軽い気持ちで正面からの強行突破を試みた訳だが。


「くそ、生贄が逃げたぞ、追え、早く追え!!」


さっきのひょろひょろオタクが叫んでいるが、もう兵がいない。

何故なら俺が全部倒したから。

・・・・・・まさか、20人近くいた奴らをこんなにあっという間に倒せるとは思ってなかった。都合はいいけどぶっちゃけ拍子抜けだよ。

しかし、どうも奴らが弱いって訳じゃないようだった。

むしろ、ナニコレ魔法? ってくらい俺が強いんだな。さっきも一人道の邪魔をするヤツを殴ったら吹っ飛んで行ったし。

流石に喧嘩上等、空手馬鹿一代、武術一直線な俺でも、地球ではあり得なかった現象だ。

それに追っ手を全て潰して逃げている今も、かなりのスピードで走っているのに全く疲れがない。さっきもジャンプしたら、昔の日本にあったような茅葺屋根に飛び乗れたし、何これ、どんな魔法? あれか、重力? 重力ってことか?

昔高校で『重力が小さかったらみんなスーパーマンになれるぞー』と言っていた教師がいた。その言い方がおかしくて、その時は真面目に授業を聞いてしまったので覚えている。

移りゆく景色を見ながら、俺は空に向かって跳躍した。

ノミみたいにはねながら移動するのが一番早いんだな、これが

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