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お化け屋敷をリフォーム  作者: 奈瀬朋樹
chapter 2
9/35

08話 幼女が迷子

「……小さな女の子が1人だけ。気になる」

「ほんとだ。動きもすっごい慎重ですね」


 このお化け屋敷は小学生以上なら入場OKになってはいるが、大半が保護者同伴で子供1人のケースは殆どない。大人1人のチャレンジャーなら全力で怖がらせるって選択肢もあるけど、この場合は当然除外だ。


「……私が先に出る。川葉君は同伴者がいないかカメラチェックを続けて。必要ならあの子に声をかけるから」


 お化けがお客さんに話し掛けるのはNGだが、こういう場合は致し方ない。そうして幼女が雪山に入ってきたけど、やたらキョロキョロしていて、まるで誰かを探している様子に、もう迷子確定と言っていいだろう。


 なので雪女も怖がらせる演出をせず普通に幼女の前に出て「どうしたの?」と、優しく声を掛けたのだが。



「やーーーーーーーーーーー」



 ビックリした幼女が奇声をあげながら強引に雪女を振り切ったので、こちらも慌てて飛び出し、雪山の出口前に立ち塞がる。



「待って待って! 迷子だよね? 出口まで送るから!!」

「やーーーーーーーーーーー、やーーーーーーーーーーー」



 駄目だ! 幼女がパニクって会話にならない!

 とにかく落ち着かせないと。


「怖くないから安心して! ええっと……、ウキキー」


 謎の勢いで河童なのに猿真似をしながら謎ダンスを踊り、これで幼女の足が止まってくれたけど、明らかに警戒されている。


「たっ、たべりゅ?」

「食べない。河童は胡瓜しか食べない。だから一緒に出口に行こう」

「やっ! 怪しい人について行っちゃダメなの!」

「ええっと、俺は人じゃなくて河童だからセーフ……、じゃ駄目?」

「ダメっ!」


 うう、埒が明かない。

 御法度だけど緊急という事で河童の被り物を取ろうとしたら雪女が再び声を掛けて、幼女が振り向くと。


「あっ、プ●キュアだー」


 そこには小さな女の子向けアニメのお面を付けて雪女の顔を隠し、姿勢を低くして話かける姿があり、その効果は幼女の警戒心が一気に消し飛ぶ程だ。


「……教えて。あなたは迷子なの?」


 この問いに、幼女は意外にも首を横に振ってくる。


「私じゃなくて、妹が迷子」

「……妹? でもあなた1人だけど」

「さっきの部屋で走って先に行っちゃった。だから早く追い付かないと」


 この言葉に雪女がこちらを見てきて、河童も首を横に振る。一本道の通路でこの子より小さい子が走って部屋を駆け抜ける様を見落としたとは思えない。だとしたら。



「……前とこの部屋の間には『退場口』がある。そこから出た可能性が高い」



 退場口とは恐怖に耐えられなくなった人が途中リタイアできる様、要所々々に設置された出口である。なので幼女にその旨を説明した後、音霧先輩が一緒に付きそう事になった。


「……なるべく早く戻るけど、場合によっては迷子センターまで送るから。あともしこの子の妹か親子さんが来たら携帯に連絡してね」

「分かりました。ココは俺に任せて音霧先輩は行って下さい」


 と、無駄に格好良い台詞で2人を見送ったのだが、雪山から雪女が消えて河童1匹だけになっちゃったよ。これはもう回転寿司のネタが河童巻きオンリーになるくらいの暴挙だが、嘆いても事態は好転しない訳で、ひと工夫してみるか。

なお私の友人は富士急ハイランドの戦慄迷宮にて、入ってすぐ横の退場口を使用。一切お化けに会わずに外に出ちゃいました。

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