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お化け屋敷をリフォーム  作者: 奈瀬朋樹
attraction
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04 みぃつけた

「やっと最後の部屋だね」

「ラストは絶対物凄いのがくるぞ」


 工事現場で全身全霊の悲鳴が出たと思ったのに、すぐ後の教会・刑務所でも同等の悲鳴を吐き出して息も絶え絶え、如何にかココまで来られたって感じだよ。


 たけど彼と一緒なら大丈夫!!

 もう何も怖くない!!

 そう信じて前に進んでいるんだけど、


「最後の入口、遠くない?」

「だな。今までの部屋の間はすぐ先だったのに、やたら長い細道が続いてるな」


 最初から入口は見えているけど、遥か彼方と感じてしまう程の一本道で、それでも歩みを進めて行き、小さかった入口がどんどん大きくなっていくと、



 もーいーかい?



「またこれか」

「合間合間に必ず聞こえてきたけど、やっぱりこれって〝かくれんぼ〟かな? 子供の遊びの」

「多分な」

「まだ声の正体が分かってないし、この先にその答えがあるのかな?」

「その筈だが、もう1つ気になる事がある」

「何が?」

「このお化け屋敷の名称だよ。何で〝赤い家〟なんだ?」

「確かに赤っぽい部屋は1つもなかったけど血の付いたお化けが結構いたし、そこかな?」

「うーん、その理由だけじゃ弱い気がする」


 このお化け屋敷には謎がまだ残っている。

 そしてその答えは、すぐ先にある最後の部屋で体験するしかない。

 そう覚悟を決めて前に進んだら、今までは1回だけだった声が……。



 もーいーかい? もーいーかい? もーいーかい? もーいーかい?

 もーいーかい? もーいーかい? もーいーかい? もーいーかい?

 もーいーかい? もーいーかい? もーいーかい? もーいーかい?



 「ええっ、何これ怖い」

 「意味不明なだけに得体の知れない恐怖があるな」


  謎の問い掛けが治まる気配が一向にないまま更に進むと、



もーいーかいもーいーかいもーいーかいもーいーかいもーいーかいもーいーかいもーいーかいもーいーかいもーいーかいもーいーかいもーいーかいもーいーかいもーいーかいもーいかいもーいーかいもーいーかいもいかいもももーいいいいかいもいかかかかかもいかかかかもいかがががぼいーがいががががぼがぼぼぼががががぼいががががががががががががががががががががががががあががががががあがががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががが……



 もう何を言っているのか分からない壊れたスピーカーみたいな呻き声のせいで足取りがどんどん重くなっていき、お互いに握り絞めている手の力もどんどん強くなっていく。そうして謎の問い掛け・横にある脱出口を全部無視して、遂に最後の部屋に踏み入ったのだ。



   ◇   ◇   ◇



「えっ?」

「何これ?」


 最後の部屋に入るのと同時に〝もーいーかい?〟の声が消失、何が待ち構えているのかと思いきや、何もなかった。今までで一番狭いんじゃないかと思える程の広さしかなく、照明もお化け屋敷内とは思えない明るさで、何よりも四方だけでなく地面・天井までもが全て真っ白なのだ。


「もう終わりって事?」

「最後がこんな肩透かしは有り得ない。それに進路を示す矢印もあるし、付いてない照明もあるから絶対にまだ何かが有る」


 彼の言う通りよく見れば真っ白な壁の所々にスポットライトが設置されていて、その光はまだ付いてない。他にもOFFの照明がちらほらと有り、あとこの部屋だけ1階と2階を隔てる壁がなく、天井が高いのだ。そして進行方向を示す矢印は部屋の中央を指示し、そこで行き先が止まっている。何が起こるか全く分からない未知の恐怖に慄きつつ、彼の手を強く握り締めたまま私達は部屋の中央に佇んでから覚悟を決めたのだが。


「あれ?」

「何も起こらない?」


 本当にこれで終わり? そう思った時、



 あははははは



 さっきまでの『もーいーかい?』の声が、笑っている。



 あははははははははははははははははははははははははははははははは

 あははははははははははははははははははははははははははははははは

 あははははははははははははははははははははははははははははははは



 その声は幼くて、無邪気で、狂った様に笑い続けている。

 まるで念願叶ったかの様な、とても嬉しそうな声で。


 私達はそんな事態に身動き1つ取れず、そして声が止んだ瞬間、真っ白だった筈の壁に、巨大な目が出現する。その目は真っ赤な色だけで、私達を食い入る様に見つめている。

 そして次に聞こえてきた言葉は、




    みぃつけた




 この瞬間から世界が反転、視界が赤に染まった。


 更に全方向から無数のお化けが出現、四方だけでなく地面からは数えきれないゾンビの手が生えたり、上には無数の幽霊に漂っていたりと、この部屋に辿り着くまでのお化けを全部足しても余裕でお釣りがくる物量がこの狭い部屋に犇めいている。


「ちょっ、ちょちょちょっ!! 何これ!! 何だこれ!?」

「出口!! 出口どこ!?」


 この部屋に出口は最初からなく、私達が入って来た入口もいつの間にか消えていて完全に袋の鼠状態だ。しかも私達があたふたしている間に壁からお化けが次々に出現、2体のゾンビが先導してジリジリとこちらに迫って来る群れに恐怖が爆発しそうになった時、一筋の光が真っ赤に染まった室内に差し込んでくる。


「あそこ!! 出口だよ!!」


 一筋の白い光が私達が居る場所と出口を繋ぎ合わせ、その光の道筋にお化けの姿もない。だけどその両側からお化けがジリジリと迫って来て、このままじゃ出口が塞がれちゃう!!!

 だから今すぐ向かおうとしたら、



「出口だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

「ええっ!? ちょっと待って!! 置いてかないで!!!」



 ついさっきまで固く握り締めていた筈の彼の手がいつの間にか解けて、一切振り返らずの直行、完全に見捨てられちゃったよ!! そうして彼の背中が脱兎の如く消え去った後、トボトボと私も後を追って部屋を出たら、そこは太陽の光と、お化け屋敷に並ぶ行列が有り、そしてその人達は少し前の私達と同じ様に、一体どんな恐怖が待ち構えているのだろうって視線が降り注いている。



 あはははは、何でこうなったのか、すぐに分かるからね。



 そう心の中で失笑してから、目の前で「ぜぇぜぇ」言ってる彼の背中をロックオンしながら、


「と~ってもたのしかったね~、お~ば~け~や~し~き~」

「ああっ、ごめん!! ほんと御免なさい!!!」


 彼女を見捨てて逃げた罪悪感はちゃんと有る様で、行列で人が大勢いるこの場所で勢いよく土下座、硬いアスファルトに額を擦り付けている。


「そっか~、君は彼女がピンチの時、逃げちゃう男の子だったか~」

「違います!! いや実際逃げちゃったけどほんとパニクっちゃって!!」

「最後はほんと怖かったよね~」

「だろ、あんなの反則だって!! だから今回はノーカン!!! 次は絶対に見捨てないから、見捨てないで下さい!!!」


 そんな彼の全力の誠意を込めた情けない格好に満足してから顔を上げてもらって、お互いに顔を見合わせてから。



「「あははははははははははははははは」」



 全力で怖かって、驚いて、絶叫して、最後に大笑い。

 短時間でこんなにも感情を揺さぶられたのは始めてかもしれない。


「ほんと怖かったかったね」

「だな。俺の背中でずーっとビクビクだったし」

「え~、そんな事を言う人には~、今日の出来事を友達に教えてあげなきゃね~」

「止めて下さい!! 俺のイメージが崩壊する!!」

「ど~しよっかな~」

「ええっと……、あそこの店でアイス食べない? 奢るからさ!」

「う~ん、どちらと言えば暖かい食べ物で癒されたいかな。お化け屋敷で背筋も凍る思いだったし」

「了解! パーク内にそういう店もあるから行こうぜ!!」

「あはは、待ってよ~」


 今後のデート、お化け屋敷巡りもアリかもしれない。

 イイ話のネタになるし、相手の本性が垣間見えるのも面白い。



 とっても怖かったけど、楽しかったかな。

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