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お化け屋敷をリフォーム  作者: 奈瀬朋樹
attraction
30/35

03

〝進行方向に注意・困った時は矢印確認を〟


「態々こんな忠告だから、迷路かな?」

「いや、それじゃこの部屋の時間ロスが大きくなって前後客とバッティングする。それに目の前は狭い一本道の通路だし、別の演出に違いない」


 通路横にある立て看板を確認してから彼の手を強く握り絞めて前進する。

 興味本位でお化け屋敷の誘いに乗ったけど、失敗だったかな?

 彼には頼れるお姉さんキャラでリードしてきた以上、可愛くない悲鳴・不細工な驚き顔を晒さない様にしないと。そう思いながら進行方向を示す足元の矢印に従って狭い通路を慎重に、オドオドと進み続け、曲がり角に差し掛かった所で、



 ガチャ



 明るかった照明が青暗く変わるのと同時に、真っ赤なアフロと唇・白塗りの顔・奇抜なストライプ柄の怪し過ぎるピエロが待ち構えていて、私達に気付いた途端、ゆっくりと近づいてくる。


「えっ? ちょっと、こっち来てるんですけど!?」

「狭い通路だから逃げ場がない!! どうすれば!?」


 通せんぼをしながら迫って来る展開にどう動いていいか分からず大混乱の最中、どんどん近寄ってくるピエロが地面を指差したので見てみると、


「地面に矢印!! 矢印が逆方向になってる!!」

「ほんとだ!! 急いで戻るぞ!!」


 いつの間にか変わっていた矢印に従って通路を逆走、私達が入って来た入口が消えていたけど、その横に無かった筈の通路が出現、矢印もその方向を示している。


「急げピエロが来てる! どんどん来てる!」


 足早に通路を進むと左右に別れた道が出現、中央にある立札には、



〝どちらかの道を選択して下さい(分散禁止)〟



「どっち?」

「ええっ!? 私が決めるの!?」

「レディーファーストだ!!」

「そんなファースト要らないから!! えっとえっと、……じゃあ左!!」


 この決断で左に進むと、


「どうしよう行き止まりだ!!」

「落ち着け! 壁に〝ピエロが去るまでココに隠れろ〟って書いてある!! 静かに待ってやり過ごすんだ!!」


 この指摘で一緒に口を閉じ、行き止まりの通路で身を潜めているとピエロの足音がゆっくりと、着実に近づいてくる。


(だっ、大丈夫かな?)

(心配するな。静かにしていれば絶対に大丈夫だから)


 小声で励まし合い、ギュッと抱きしめ合いながら黙ると、音が消えた室内でピエロの足音だけがじわじわと響きながら近づいてくる。



 ギシッ ギシッ



 追い詰められた袋小路に逃げ場はなく、だけど迫ってくる恐怖に心臓が鳴り止まずに呼吸さえも躊躇われる緊張感だよ。そしてピエロの足音が止んだけど足音は目前の、私が左を選んだ分帰路で止まっている。



 右っ、右に行って!!



 そう強く願い続けながら彼の胸にしがみ付いていると、足音は逆方向に遠のいていきました。



「「…………………………はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」」



 今までの人生で一番の凝縮度だったのではと思う程の溜息を2人で吐き出す。


「お化け屋敷って分かってるのに怖過ぎだよ」

「あのピエロも俺達が選ばなかった方向に行くって筋書きだろうけど、こっちに来るんじゃないかって冷や冷やだったな」


 言葉にすれば狭い通路を進んでいたらピエロ出現、逆走した先の分帰路のどちらかに隠れただけなのに凄い緊張感だったよ。


「そういえば入口なくなってたよね? 何でかな?」

「多分カーテンか何かで入口を隠したんじゃないか?」

「成程、じゃあ足元の矢印表示は?」

「ピエロが現れた時、照明が青暗くなっただろ。きっとその時に変わったんだ。ブラックライトって知ってるか?」

「それって暗い光に発光する奴だっけ? あー、確かにこの矢印、よく見たら光ってるね。最初の矢印はコレじゃなかったかも」


 よく考えられてるなー。

 脅かされる立場なのに感心しちゃったよ。


「あと、いつまでココに居るの?」

「さぁ、だけどずっとこのまま待機って訳にも…」



 ガチャ



 また照明が変わって青暗かったのが元の明るい、つまりこの部屋に入った時に戻った。足元の矢印方向も前に進めという表示になる。


「そういう事か。じゃあ進もう」

「だね。あのピエロももう襲ってこないだろうし」

「おいおい、そういう発言したらまた現れるかも…」



 パサッ



 彼の台詞が終わるより先に、私達が潜んでいた行き止まりの壁がカーテンっぽく開いてピエロが出現。満面のピエロスマイルでこっちに迫ってきたので、足元の矢印に従って即座に退散。そのまま最初にピエロが現れた通路の先に進んで、この部屋は終了となりました。


 そしてあのピエロは私達が最初に目撃した、待ち構えていた場所で制止する。

 数分後にまた、私達が味わった恐怖を再現させる為に。



   ◇  ◇  ◇



〝事故で現場作業員1名・左半身大怪我〟


 そんな看板と共に工事中断・立ち入り禁止というポスターが通路脇に貼られ、その先には〝左半身大怪我の患者が病院から脱走、発見した方は至急連絡を〟という文字が大きく表記されている。


「出るね」

「ああ、絶対に出る」


 恐怖に慣れた訳じゃないけど、流石に7つ目の部屋ともなれば展開の流れくらいは分かる様になる。そうして工事現場風の通路を進んでみると、左顔を全て覆った包帯・左腕プラプラ状態の病衣を羽織った朦朧患者が現れる。


「よこせ………、ひだり………よこせ………」


「うわぁ、やっぱり」


 侵入禁止線の外側で彷徨う姿にドキッとしたけど、その朦朧患者がこっちに来る感じがないので、そのまま前に進もうとしたら、


「おかしい」

「そう? ただの左半身大怪我な人にしか見えないけど?」

「よく見ろ、左足は無傷だ」

「ほんとだ。あとズボンも違うというか、左足だけ別衣装っぽいね」


 衣装は入院患者が羽織っている水色のゆったり病衣だけど、左足部分だけが紺色ズボンで、傷も左半身が損傷大の包帯まみれなのに左足だけが不自然な程に無傷なのだ。


 まるで無傷の左足を何処かから取って付けたみたいに。


 そんな物騒な妄想をしてから前に進むと、人が倒れていた。

 息絶えた様に横たわっていて、更には人と争った後みたいに服がボロボロで、左足がなかった。


「ねぇ、この倒れてる人のズボンの色……」

「ああ、さっきの朦朧患者と全く同じだ」


 この事実に身震いしつつ倒れた人を注視すると、右手の傍に血文字が、ダイイング・メッセージが残されている。



『持って行かれた……』と



「よこせ………、ひだり………よこせ………」

「ひっ」

「来てる! さっきの朦朧患者が後ろに!?」


 死体に気を取られていた隙に近づかれてしまい、更に迫ってきた時、プラプラ状態だった左腕がポロッと、壊れた玩具みたいに外れて、なのに取れた左腕には見向きもせず私達の左腕を見ながら、



「こんどは……、ひだり………うで……………、よこせえええええええええ!!!!!」



 この絶叫に自分の左腕がぞわっとした後、体内の酸素を全て使い切っての悲鳴が出ちゃいました。

 彼氏の前だから体裁を守ろうって気持ちが消し飛ぶ程に。

殺人ピエロのモデルはファーストフード業界No1のアレです

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