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お化け屋敷をリフォーム  作者: 奈瀬朋樹
chapter 6
27/35

26話 エロ河童

「では皆さん、お化け屋敷を救った勇者の登場でーーーす!!!」


 野土さんの号令後、多くの拍手に推されながら、ありのままの気持ちを暴露する。


「皆様、この度は盛大な茶番に巻き込んでしまい誠に申し訳ありませんでした。もし自分が本当の河童なら、脳天の皿を叩き割って自害…」

「比奈菜ちょーーーーーーーーーーーーっぷ!!!」

「ギュゲッ!!」


 下げていた頭に要望通りの衝撃が走り、ぶっ倒される。


「暗い、暗過ぎる! ちょっと男子~、銭湯でリフレッシュさせてって言ったじゃん」


 比奈菜の抗議に、明智さん・風雷コンビが苦笑しながらの弁明が始まる。


「裸の付き合いに興じながら坊主を励ましたんじゃがなぁ」

譫言うわごとの様にお父さんの悪口を言い続けて、ずっと上の空だったから」

「この生筋肉で抱きしめても駄目だった!」


 この言い分に比奈菜がやれやれって反応をしてから、潰れた蛙状態の俺を起こして、


「ほらほらお兄ちゃ~ん、可愛い妹の浴衣だよ~。レンタルしちゃった~」


 くるっと回ってから袖をヒラヒラさせてきたので、


「おー、かわいーかわいー。世界一かわいーよー」

「めっちゃ棒だ! くっ、やっぱり比奈菜だけじゃ駄目か! 他の皆も巻き込んで正解だったよ。ほらほらお兄ちゃん、あっち見て~」


 比奈菜に顔を掴まれ、問答無用で視線を移すと、


「おお、浴衣がいっぱいだ」


 湯上がりで湿った長い髪を結い、体のラインを覆う浴衣でも隠しきれない胸部の膨らみが魅惑的な雫先輩。いつものふんわりアップヘアーを下ろしたスレンダー体型と浴衣の王道コラボも中々に雅な味わいを感じさせる神岸。そしてロリ体型でありながら、実は人妻というマニアックな浴衣姿の…。


「なんで鈴芽ちゃんがいるの? 会議いなかったよね?」

「ふっふーん。後輩君が見事お化け屋敷を救い、しかも銭湯で一服した後に宴会って連絡あったから、赤ちゃんの世話は親に任せて来ちゃったー。私の浴衣が見れて嬉しい? 嬉しいよね?」

「はいとっても。だから絶対に脱がないでね」


 会議の後、親父からパーク内にあるスーパー銭湯の無料券が配られ、そして銭湯内の食事処の和室宴会スペースを使っていい事になり、皆でひとっ風呂浴びてからの祝勝会となったのだ。なお食事は従業員専用の裏メニュー『ちょっと鮮度が落ちた食材テンコ盛り激安コース』という粋な計らいである。


「お兄ちゃん皆待ってるから乾杯して。その後に好きなだけ落ち込んでいいから」

「ったく、分かったよ」


 比奈菜に推されてから再び皆の前に立ち、今度は真面目に話そうと決めてから、



「皆さん、今日は本当にあり…」

「かんぱーーーーーーーーーーーーーーーい!!!」



 ベッタベタなお約束で比奈菜が音頭を取り、その後に俺は余興として数年ぶりの兄妹プロレスごっこを決行。騒がしい妹を締め上げて尻児玉ブチ抜いたろうとしたら、皆に乗せられた雷山さん(筋肉)が乱入、返り討ちとなりました。



   ◇   ◇   ◇



「ったく比奈菜の奴、元気付けたかったにしても、もうちょっとマシな方法をだな」

「まぁまぁ、兄妹仲良しで結構な事じゃん」


 文句を垂れ流す俺を右横にいる神岸が宥める。

 因みに左横は雫先輩と鈴芽ちゃんで、主賓として当然の待遇だと比奈菜が強制配置してきたのだ。そして今は壇上で大道芸を披露中の風雷コンビのアシスタント役として皆を盛り上げまくりで、本当に騒がしい妹だ。


「神岸も呼び出して悪かった。プレゼン指導ありがとな」

「ほんとだよ。確かにずっと生徒会で前出る機会多かったけど、あんなガチ現場知らないから! すっごい緊張したんだからね!」

「だから握手してやったじゃん。お前それで落ち着くだろ」


 神岸は緊張した時、誰かと握手をして気を静める習性がある。

 中学で生徒会を手伝っていた時に気付いた事だ。


「それはそうだけど……、握手は女子としかやってない……」

「えっ? 小声で聞き取れなかったんだが」

「五月蝿い! とにかくお疲れ様、川葉」

「ありがとな。それともしお化け屋敷の新企画が通ったら今度こそバイトに来てくれないか? 夏休みだけでいいから」

「うん、ついでに友達も誘ってみる。あと今度は落とされない様に川葉の名前出すからね」

「ああ、好きなだけ出していいぞ」


 そうして何となく2人で笑っていた所で、


「ほっほーう、やるねぇ新人君」

 鈴芽ちゃんが上から目線な物言いで、いや実際年上だけど、やっぱり比奈菜の同級生にしか見えない。

 そしてそれは神岸も同様らしく、


「川葉、この人って本当に人妻なの?」

「失敬! 失敬だよ! さっきスマホで我が子見せたじゃん!」

「神岸、気持ちは分かるがマジで人妻だ。けど鈴芽ちゃん、その小さい体で出産大丈夫だったの? お腹破れなかった?」


 と、冗談交じりに聞いてみたら、


「あー、破れたねー。お腹の膨らみに私の皮膚が耐えられずにベリッと妊娠線できちゃったよ。クリームケアで殆ど消えたけど、これがその…」

「いい! 見たくない!! そういう生々しい話は女子だけでやって!!」

「すみません私が悪かったです!! 信じるから浴衣戻して!!」


 また脱ごうとしたので俺と神岸が慌てて制止。

 鈴芽ちゃんは口が裂けてなくても痴女でした。

 そんな感じで盛り上がっているけど、雫先輩が大人しいままだ。

 まぁ人見知りな性格だし、仕方な…。


「じゃあ新人君、私は現役JKと親睦を深めたいから、雫ちゃんよろしくだよだよ」


 そう言って席を移動した鈴芽ちゃんが神岸に密着、それと同時に俺の体を蹴りまくって雫先輩の方に押し出されちゃいました。


「えっと、雫先輩、プレゼン資料作成を手伝ってくれて、ありがとうございました」

「……うん。夕護君もお疲れ様」


「…………………………」

「…………………………」


 気まずい!!

 お化け屋敷の問題を解決すべく『あの朝の出来事は忘れたので雫先輩も忘れて下さい! それよりプレゼン資料の作り方教えて下さい!』と強引に〆て大学のレポート作成ノウハウに頼りまくったのだ。そしてプレゼンが無事終了、棚上げにした問題と向き合わなくちゃいけないんだけど今更というか、どうすりゃいいの?


 あと鈴芽ちゃんだけじゃなく、何で神岸まで死角から蹴ってくるかな?

 不服なら解決方法を教えてくれよ。

 流石にイラッとしたので雫先輩に気付かれぬ様に両腕を後ろに回し、蹴ってくる双方の足の親指を掴んでからグニッと捻り、後ろからギブギブ!と言わんばかりの畳を叩く音を無視していたら、


「……凄いね」


「えっ? 何が?」

「……お化け屋敷の閉鎖。絶対に覆らないと思っていたのに、夕護君が全部ひっくり返しちゃったね」

「いや、ほぼ親父の功績ですけど?」


 この意見に雫先輩がフルフルと首を横に振ってから、



「夕護君が動かなかったら皆ココでお祝いしてないよ? 残念な記憶になる筈だったのに、最高の思い出にしてくれて、ありがとう」



 淀みのない言葉と笑顔で褒められて、ストンと力が抜けてしまった。

 そっか、なら茶番だったとしても誇っていいのかな?

 それにこのまま納得した方がギクシャクせずに済むし、これで問題は全て解消だな。


「坊主、楽しくやっとるか?」

「あらあらお邪魔だったかしら?」


 明智・野土さんが来たので乾杯をした後、今後の話をする事となった。


「今が5月中旬で計画では梅雨頃にリフォーム開始、夏休み前に再スタートですけど、大丈夫ですかね?」

「心配無用じゃ。会議後に坊主の親父と話したが、儂がいた建築会社の顔出しに付き合ってほしいと言われたよ。あと儂にパーク施設全般の点検管理ができないか、大工仲間のネットワークを紹介してほしいと色々お願いされたぞ」

「川葉君はもう十分頑張ったから、あとは私達大人に任せなさい」

「分かりました。じゃあリニューアル中は勉強しときますね。折角お化け屋敷を救ったのに赤点でバイト不可になったら超格好悪いですから」


 そう言って皆で笑っていたら、比奈菜が駆け寄ってきて、


「お兄ちゃん、私が初挑戦した大道芸どうだった?」

「すまん。全然見てなかった」

「うおおおおおおおおおおい!! 酷いよお兄ちゃん!!」

「うるせー、見てたら見てたで『折角ハーレム配置したのに女の子放置しちゃ駄目じゃん!』ってツッコミだろうが!」

「いやいやココは女の子を侍らせながら超時空大道芸アイドルになった比奈菜ちゃんを見るのが正解だよ~」


 そんなアホ主張をハイテンションでしてくる比奈菜が強引に迫ってきた時に、


   バジャ


 席に置かれたグラスが倒れてしまい、雫先輩の浴衣にジュースが毀れる。


「ああっ、ごめん雫ちゃん! 何か拭くものを!」


 だが浴衣に着替えたせいで拭くものを持っておらず、雫先輩も同様みたいだ。


「雫先輩、これ使って下さい」


 咄嗟に制服ポケットのハンカチを差し出したけど、黒いハンカチなんて持ってたっけ?

 それに形状がおかしい様な…


「……ありがとう、夕護くん」


 雫先輩がお礼を言ってからハンカチを広げると、



    ぴらっ



 誕生日の翌朝、比奈菜から託された黒いブラジャーが、無事帰還されました。



 うぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!



 突然の爆弾投下に周りは沈黙だけど視線は俺をロックオンしまくりで、もう全方位から凶器を突き付けられたかの様な気分で呼吸さえも儘ならない状況だ。

 それから雫先輩が信じられないという様子で俺を見ながら。


「……い、いくら部屋を探しても見つからなくて、もしかしたら部屋に泥棒が入ったのかもって心配してたけど、……夕護君が犯人だったの?」

「違う!! 誤解です雫先輩!!」


 完っ全に忘れてた!!

 速やかに処理すべきだった危険物を放置してしまい、最悪のタイミングで大爆発。

 更にこのやりとりで漆黒の太平洋ベルト所有者が雫先輩と発覚、主賓待遇が一遍、ゴミを見る様な視線が降り注いてくる。


「後輩く~ん、弁解の余地はあるのかな? かなかな?」

「やっぱ男は巨乳が正義か。川葉にはガッカリだよ」

「坊主、若さ故の過ちは誰にでもあるが、流石にそれは犯罪じゃぞ」

「ムラムラが治まらないなら私のブラあげようか? 大丈夫、おばちゃんがJKだった時に買ったやつだからセーフよ。もうボロボロのくたくただけど」


 鈴芽ちゃんと神岸に迫られ、明智さんからは渋い表情、あと野土さんのご厚意は全力でお断りです。


「お兄ちゃん、何でまだ持ってたの?」

「お化け屋敷の危機で忘れてたんだよ! 親父に相談した後、この日に備える事しか考えてなかったから!!」

「あー……、そっかー」


 この主張に比奈菜が納得して、窮地に立たされた兄の前に立ってくれてから、


「すみません。そのブラジャーは比奈菜が返し忘れて、お兄ちゃんから返してねって預けたものです。お兄ちゃんは悪くないので許してあげて下さい」


 おおっ、お約束を無視した誤解成分のない真っ当な謝罪だ。

 これで無実が証明されると安堵したのだが、


「そっか。優しい妹を持って後輩君は幸せ者だね」

「川葉との付き合いも長いし、そういう事にしておいてあげるよ」

「皆の衆、ココは嬢ちゃんの慈悲を汲んであげてくれ」

「川葉君、帰ったら比奈菜ちゃんにお礼言うのよ」


「うおおおおおおおおおい!! 完っ全に誤解したままで最低の屑兄貴じゃねーか!!!」


 妹にこんな濡れ衣ぶっかけるくらいなら土下座するわ!!!

 だが比奈菜の主張は正しく、ここで謝罪したら支離滅裂になっちゃう訳で、完全に詰んじゃったよ!!!


「……う、うん。夕護君も思春期だし、仕方ないよね?」

「誤解ですって! それにずっとポケットに入れたままで何もしてませんから!!」

「……そうだね。夕護君は腕フェチだから何もないよね?」

「何でそのネタ憶えてるの!? あと雫先輩お願いだから俺の目を見て喋って!! 死にたくなっちゃうから!!」


 そんな弁解も虚しくスルーされてしまい、結局お化け屋敷のリフォームが始まるまでエロ河童と呼ばれ続けました。

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