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お化け屋敷をリフォーム  作者: 奈瀬朋樹
chapter 6
25/35

24話 決戦

シリアスパート?なのでサクサク進めて終わらせます。

 どいつもこいつも無能な馬鹿ばかりで反吐が出る。


 このテーマパーク従業員として今度こそ成功を収めようと意気込んだが、廃業寸前のお化け屋敷を任され、新施設に作り変えるべきと進言したが了承されず、アルバイトも生意気な奴ばかりで何1つ思い通りにならない。今までもそうだ。古い習慣に縛られて非効率な仕事、親切心で指摘しても注意される理不尽、上は問題を先延ばし、影で悪行三昧の輩は放置と、全てが腐りきった環境を渡り歩き、1つの結論に辿り着いた。


 中からの組織改革は不可能という真理を。


 不正を働く者は悪事を承知の上で行動し、バレても如何にかなるだろうと楽観視、そんな浅はかな心理に正論を説いても無駄であり、反省さえも不可能だ。

 

 だからこそ最初が肝心で、一新するのだ。

 

 全てが真っ白になった場所に私の理想を描き、アルバイトも忠実な駒だけを採用する。そうすれば全てが上手くいき、間違った正論を説いた肩書きだけの無能共も評価を改めるしかない。そしてこの完璧な企画案を見れば皆が納得し、既に準備を始めていると知れば私の有能さに慄くだろう。

 

 ああ、やっと救われる。

 本当に長かった。

 今日が私にとって、最高の転機となるだろう。



   ◇  ◇  ◇



「以上が新施設の企画案です。お化け屋敷を取り壊して新設すれば、売上向上は間違いありません」


 時は金曜夕刻、パーク本館の会議室で数十人の役員が私のプレゼンを静観、聞き入っている。

 もうすぐだ。

 もう少しだけ我慢すれば、全てが思い通りになる。


「根津、これで終わりか?」

「はい、以上です」

「ふむ、皆は根津の案に質問はあるか?」


 玉藻専務の確認に反応はなく、どうやら私の企画書のデキは想像以上らしい。

 専務は40代の女性で有能の部類だから一角の敬意を払っているのに、何故か私を理解してくれない。

 だがそれも今日までだ。

 きっとこの企画に専務も一目置き、私の評価を改めるだろう。


「質問なしか。根津、下がれ」


 そう言われて壇上から降り、自席に戻る。

 駄目だ。まだ笑うな……

もう少しだけ我慢せねば。

 揺るぎ無い勝利を確信したのだが、何故か専務が席を立って会議室の扉を開いた後、


「ではこの企画に異議を唱える者の話を聞こう。入れ」


 この号令に続々と入場してきた数十人が会議室内を取り囲む様に整列。

 よく見ればお化け屋敷のアルバイト共じゃないか!!

 そして先程まで私がいた壇上に制服の子供が立っている。

 確かあいつは、この私に歯向かった学生か?


 どういう事だ?

 一体、何が起こっているのだ?



   ◇   ◇   ◇



「初めまして。私は川葉夕護、お化け屋敷のアルバイトです。取り壊しに異議申立てが有り、その代表として意見させていただきます。では…」

「お待ち頂きたい! 何ですかこれは? 許可も無くこんな事をしていいと…」

「私が許可した。座れ根津」

「……………分かりました」


 玉藻さんの叱咤で主任が黙ったけど、めっちゃ睨み付けてるよ。

 ただでさえ緊張なのに憎悪剥き出しの敵意が刺さりまくりで、そもそも相手は俺の倍近い人生経験がある大人で、本当にやれるのか?

 もう喋らなきゃいけないのに、ビビッて声が出せずにいたら、



「ぶええっっっっっくしゅん!!!」



 近所に数人いるデカいクシャミのおっさんですら驚きそうな轟音に、発信源の明智さんがヘコヘコと頭を下げる。


「すまん坊主、我慢しとったんじゃが、ついな。悪い悪い」


 そうお道化て周りが失笑、場の空気が解れた後に比奈菜が前に出て、


「はいは~い、これが詳細資料で~す。先に配っちゃいますね~」


 予定より早く資料を配布、雫先輩と一緒に配り終えた後、戻る前に比奈菜こっちを見てから、声を出さずに口だけを動かして、



 が・ん・ば・れ



 ったく、明智さんのクシャミは絶対ワザとで、世話焼きな妹にも痛み入る。

 弱気になるな!

 俺は後ろで整列中の皆を束ねるリーダーで、勝つ為にココに立っている。

 だから不恰好でも堂々とやりきるんだ!!


「再開します。今のお化け屋敷は売上低迷・築30年以上なので確かに取り壊しも1つの選択肢ですが、低迷原因は去年の夏以降イベントなしの放置状態だったからです。使える2階も閉鎖のままで、これでは低迷しない方がおかしいです」

「大人に対してその物言い、失礼とは思わないのか!?

「座れ根津」


 また玉藻さんに(たしな)められ、無言で座る根津主任。

 もうブチキレ寸前って様子だが、こっちにも譲れないものがあるんだ。


「なので我々は2階の使用許可・新イベント開催を提案します。そして新イベントには改装が不可欠ですが、今まで通りの改装では目新しさに乏しく集客力も低い。なので今回の改装は古くなった外装を含めての、大リフォームをさせて下さい!」


 そう力強く宣言、ここからが正念場だ。


「リフォーム詳細はお手元の資料をご確認下さい。一見大掛かりですが期間・見積りは控えめな数字になる様に調整しました。なお…」

「机上の空論です! 素人の皮算用では雪だるま式に増えていくだけ…」

「なおこの数字は元大工の専門家が出したものです。バイト内にそういう人材がいるのを主任は当然ご存じですよね?」


 急な指摘に即反論。

 前のめりに突っかかってくる主任に一切怯まずに応戦する。


「双方とも落ち着け。根津も口出しは後に」


 玉藻さんの注意で休戦。

 熱くなるのは構わないけど、挑発に乗るのは駄目だ。

 自分は伝えるべき事を伝えるだけと再認識してから、あのノートが皆に見える様に高らかに翳す。


「そしてこれが新イベント内容です。このノートには過去の企画・反省と改善点・新ネタ等、30年以上お化け屋敷を支えてきたアルバイト達の記録が全て残されています。今回はこの中から好評だった企画を厳選、再出発に相応しい内容に…」

「おやおや、どんな企画が出るかと思えば、過去の焼き回しですか? そんなコピペ企画で本当に人が来るのですか?」


 うぐっ、痛い所を。

 リフォームに予算をつぎ込む以上、他の出費は抑えるしかない。

 それに2階が使える様になればバイト増員、これで完全新規イベントにしたら現場が混乱する可能性があるので、これしか選択肢がなかったのだ。

 だがこんな弱気事情は暴露できない。

 手元の武器を駆使して突き進まねば。


「確かに過去イベントの流用ですが、3年前までの企画は除外・改良済みなので問題はありません。それにお化け屋敷には30年の歴史があり、イベント復刻で再び足を運んでくれる人もいるでしょう。今も毎日来てくれるリピーター客だっています」

「虚偽は慎みなさい。その様な物好き、存在する訳がないでしょう」

「いえ、常連のぬらじいは実在します」


 この発言で根津主任が余裕全開のしたり顔で嘲笑ってくる。


「でしたら是非お会いしてみたいものですね。その常連客とやらに」


 しまった。

 ついイラッとして不要な物言いしちゃったよ。


 言い掛かりを続けて失言を引き出す。

 ベッタベタな常套句なのに、つられた自分を殴り倒したい気分だ。

 糞親父はヤバくなったら助けてやるとほざいたが、会議に出席すらしてないのにどう助ける気だよ。


「はいはい。学生にしてはよく頑張りました。称賛ものです。なのでもう退いて下さい。これ以上は見苦しいだけですよ」

「まだこちらの話は終わってません。発表を再開します」


 こういう時、味方が傍に居てくれる有り難さが身に染みる。

 さっきもフォローしてくれたし、失敗しても後ろの雫先輩達を見たらすぐ冷静になれて、踏ん張らねばって気持ちになれる。

 1人なら即テンパって、とっくの昔に自滅済みだろう。

 だが再開しようとした所で根津主任が両手を机に叩き付ける。


「いい加減にして下さい! 子供のお飯事に付き合う程、大人は暇じゃないのですよ!! これ以上続けたいのなら、先程申し上げたぬらじいさんとやらを見せて下さい!!」


 ああもう面倒臭い。

 さっき玉藻さんにも口出しは後って注意されたよね? それに怒った時くらいちゃんと相手の顔を見ろ! あとぬらじいは口が滑っただけで、そんなじいいどうでもいいわ!!

 この主任を黙らせる手段はないのかと思った瞬間、また会議室の扉が開いて、



「そのぬらじいとは、私のことか?」



 本当に出現しちゃいましたーーー。

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